2015年1月に長野県北部の蔵元の後継者5人が結成した、若手酒蔵ユニット「59醸(ゴクジョウ)」の2年目のお酒が完成し、そのお披露目会がありました。長野駅のすぐそばにある南千歳公園で開催された本イベント。チケットを購入すると、“59醸酒”を含めた5蔵のお酒が飲み放題。出店でおいしい酒肴を購入し、のんびりまったりした時間を過しました。
酒蔵ユニット「59醸(ゴクジョウ)」の活動とは?
若き蔵元・5人全員が昭和59年度生まれということから命名されたユニット「59醸」は、「われわれのお酒を、いろいろな話題造りを通して広くアピールしていこう。まずは共通のテーマを決め、極上(ゴクジョウ)のお酒を目指して競い合おう」と活動を始めました。
5蔵の跡取り息子・・・角口酒造店(飯山市)、西飯田酒造店(長野市)、東飯田酒造店(長野市)、丸世酒造店(中野市)、沓掛酒造(上田市)
昨年は、「酒米は美山錦・精米歩合59%」とルールを決めて各5蔵がお酒を醸しました。そして2年目の今季は、美山錦と並んで長野の多くの酒蔵が使っている酒米「ひとごこち」を使った59%精米の純米吟醸酒に挑みました。
今季の59醸のコンセプトは「リラックス」。ひとごこちは、ふくよかな味わいになりやすいと言われており、切れの良さが特徴の美山錦とは真逆のタイプです。どのように「リラックス」を表現するのか・・・蔵ごとに秘策を練り、美酒を醸しました。できあがったお酒の感想を、各メンバーにうかがいました。
丸世酒造店5代目「自分の造ったものを売りたい」
丸世酒造店(勢正宗)
まずは丸世酒造店の5代目、関晋司さんです。
関さんは昭和59年10月21日生まれ。大学では畜産学を学び、東京で営業職でしたが、「自分の造ったものを売りたい」という思いが募って家業を継いでいます。
「リラックスというと、ゆっくりとかまったりとかいうイメージと同じですよね。うちの甘口のタイプはそれに当てはまります。ただ、甘いだけはでなくて、締めるところはしっかり締めたい。甘味はあるけど、後味がすっきりしたお酒にしたい。それをうちの伝統的な4段仕込みを生かして造ろうと思いました。結果は、あともう少し辛い方がもっとよかったなとは思いますが、ほぼ狙い通りでした。自己採点では80点ぐらいですね」
音楽教師を目指していた沓掛酒造18代目
沓掛酒造(福無量)
2番手は沓掛酒造の18代目、沓掛正敏さんです。
沓掛さんは昭和59年11月13日生まれ。高校卒業後、音楽の教師を目指して音大に進学。
家業は弟さんが継いでいたので、戻る必要はなかったのですが、業界の不振を耳にするにつれ、自らも関与しなければと帰蔵。弟さんが造りを担当し、沓掛さんは経営面をみています。造りはこの59醸のお酒だけ、責任者となります。
「今回のイベントのように屋外でリラックスしながら飲む酒をイメージしました。そこで上立ち香よりも口に含んだ時の香りを大事にして、やさしい味わいのお酒を造ることにしました。僕が使った協会10号酵母というのは酸が出にくいタイプですが、うちの蔵の酒は酸が出やすい傾向にあって、果たしてどちらになるのか興味深かったです。結果としては、結構酸も出ましたね。もう少し香りが華やかだったらもっとよかったと思うので、自己採点は75点です」
「酒造りにのめりこみ気づいたら後継者」東飯田酒造店6代目
東飯田酒造店(本老の松)
3番手は東飯田酒造店の6代目、飯田淳さんです。
飯田さんは昭和59年11月24日生まれ。元々家業を継ぐ気はなかったそうですが、繁忙期に頼まれて手伝っているうちに、だんだんと酒造りにのめりこんで、気づくと後継者になっていたそうです。
「1年目に比べてテーマが決まったのが早かったので、じっくりと構想を練ることができました。僕はこのユニットの酒造りはいろいろなことに挑戦するつもりでおり、今回もリラックスにつながるお酒をあれこれと考え、酸味を抑えた旨味の深い味わいを表現しようと考えました。ところが、麹造りがいまひとつ思うようにいかず、酒母造りには随分と苦労しました。でも、仕込んだ後の醪の経過は期待以上に順調でした。自己採点は厳しめに50点から70点の間です。ただし、今回の造りも来年の糧になりました」
東京農業大学で花酵母を研究した西飯田酒造店9代目
西飯田酒造店(積善)
4番手は西飯田酒造店の9代目、飯田一基さんです。
飯田さんは昭和60年4月1日生まれ。東京農業大学で花酵母を研究し、卒業後は花酵母で有名な茨城県の来福酒造で修業。
その後、蔵に戻って多彩な種類の花酵母を使ったお酒を造っています。
「うちの蔵の場合は花酵母ありきなので、リラックスをイメージする花酵母はどれかな、と考えました。そこで目をつけたのが2,3年前から登場した椿の花酵母でした。椿といえば椿油ですので、アロマセラピーをイメージして酒を造ることに。ただし、椿の花酵母は発酵力がやや弱いと言われていて、それを初めて使うので、気を遣いました。いつもの酒造りよりも温度を低めに管理して、有機酸をたくさん生成させることでアロマっぽい純米吟醸を目指し、頑張りました。初挑戦にしてはうまくいったのではないかと思います」
多くの企画を展開する角口酒造店の6代目
角口酒造店(北光正宗)
しんがりは角口酒造店の6代目、村松裕也さん。
昭和59年7月31日生まれです。村松さんは杜氏に就任以来、蔵のお酒の質を大幅に向上させるとともに、ラベルのデザインを一新させ、多くの商品企画も展開しています。
「リラックスがテーマだからといって安易に甘い酒を造るというのは僕の主義には合わないので、『ど辛い酒』でリラックスという提案ができるよう、思い切り辛口の酒を造ってやろうじゃないか、と考えました。
超辛口に造るということは甘さがまったくないということなので、それだけでは味の幅がなくなります。そこで一般には雑味(アミノ酸)と呼ばれる味が旨味の広がりになるように、新しい麹造りを試してみました。結果としてうちの蔵らしい味のある超辛口酒にできあがったと思います」
“五者五様”の個性豊かな味わいを堪能!
ボトルのデザインは、1年目が黒を基調にしたシックなものでしたが、今回はパステル調のカラフルなラベルで「リラックス」を的確に表現していました。
それぞれが甘味や旨味、酸味や辛さなどに特徴があって、“五者五様”の個性豊かな味わいで、出店の酒肴とともに、おおいに堪能できました。
酒蔵ユニット「59醸」は活動期間を10年に区切っています。「10年間、5人でお互いを刺激し合って各蔵の酒質も売上げもあげて、解散する時には各自が蔵の堂々たる大黒柱になっていることを目指しています」と村松さん。
2016年5月21日(土)には銀座NAGANOにおいても59醸の試飲会があるので、興味のある方はぜひ、足を運んでみてください。若き蔵元たちの活躍を応援しましょう。
(文/空太郎)
◎イベント概要
「59醸酒 2016年リリースイベント」
日程:2016年5月21日(土)
59醸酒 お披露目会(プログラム1)
時間 11:00~14:00
料金 5,000円(59醸酒飲み放題+お料理付き)
定員 32名(先着申込順)
59醸酒 試飲会
第1部(プログラム2) 15:00~16:30
第2部(プログラム3) 17:30~19:00
料金 各1,000円(59醸酒5銘柄の試飲+料理プレート付)
定員 各70名(先着申込順/事前予約者優先)
スタンディングバースタイルで、59醸酒をご提供します。
さらに各蔵のお薦め酒(200円~)もご用意しています。
※プログラム2と3は事前予約者優先となります。
当日参加の方は混雑時にお待ちいただく場合がありますので、予めご了承ください。
会場:銀座NAGANO しあわせ信州シェアスペース(東京都中央区銀座5丁目6-5 NOCOビル 1F・2F・4F)
お問い合わせ:銀座NAGANO TEL 03-6274-6015
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