こんにちは、SAKETIMES、生駒です。
6/9付の報道にて、財務省は日本酒とは「国産米や国内の水を使って国内でつくられた清酒」と定義づける方針を発表しました。
それだけ聞くと「そうなんだ・・・まあ日本のお酒だもんね。」と思う方もいるかもしれませんが、
この決定、実は日本酒事業を営んでいる方々にとって大きな影響を及ぼす可能性があります。
国産日本酒というブランドを守るためには必要なことと言う方もいますし、
広く日本酒を浸透させるには、表記に枠を作らないほうが良いのでは、と言う方もいます。
意見は様々ですが、今回は、その日本酒の定義とそれに関わる影響についてお話します。
1)アルコール添加酒はどうなる?
日本酒には大きく分けて、純米酒タイプのお酒と、醸造アルコールを添加したアルコール添加酒タイプに分けることが出来ます。
(純米VSアル添酒といった議論も稀に起こりますが、そもそも別カテゴリーなので優劣の議論はまた別の機会に)
この醸造アルコールの原料にはブラジルや東南アジアのサトウキビが使われています。
今回の定義付けによって、海外産の原料を使った醸造アルコールを使っているアルコール添加酒のお酒は日本酒とは名乗れなくなってしまうのではないか?という意見も見受けられました。
しかし、今回の決定は「国産米や国内の水を使って国内でつくられた清酒」とありますので、
そこに醸造アルコールへの言及はありません。なので引き続き日本酒として扱われるのだろうと思います。
もしもアルコール添加のお酒を日本酒とは認めることが出来なくなった場合は、
酒税の大多数をアルコール添加酒である普通酒で賄っていた国税庁や、日本酒の消費を普通酒販売で牽引してきた大手メーカーの立場もありますから、
与える影響は計り知れません。
もちろん、酒税法上の「清酒」と、表記における定義付けされた「日本酒」はまた別ということも忘れてはいけません。
2)海外産の日本酒はどうなる?
現在アメリカで消費されている日本酒の八割はアメリカ産と言われています。
今回の決定で海外産の日本酒は「日本酒」表記は認められない、ということになりますから、
海外の日本酒ファンの中には「自分が今まで飲んでた日本酒は日本酒と認められないの??」となってしまう方もいるかもしれません。
ワインが世界各国で生産され、世界に浸透したように、
日本酒が海外において消費されていくためには、海外産の日本酒の存在も欠かすことが出来ないと思いますが、
これまで海外産の日本酒と名乗っていた酒が「SAKE」や「JAPANESE SAKE」と名乗っていくことになるのか、
この点については現段階の報道では伺い知ることは出来ません。
SAKETIMESでは以前、
海外でも造れるの!?海外産の日本酒特集
カナダ産日本酒『Yu悠』【前編】- カナダならではのこだわりとは?
といった海外産日本酒の特集も行っており、蔵との親交もあるため、海外産日本酒がどういったカテゴリになるかは引き続き注目していきます。
3)今回の決定の狙いは?
ここまでは疑問点について述べてきましたが、今回の決定、狙いは何なのでしょうか?
やはりいちばん大きな狙いは、「海外で多く消費されている海外産日本酒やその他の酒との差別化」でしょう。
世界各地で日本酒ブームが起こっていると言われていますが、
まだまだ海外では日本酒の理解は低いと言われています。
とある酒蔵の社長さんは「海外には日本酒のことを、透明で・アルコール度数の高い・米から造られた酒だと解釈している人がいる。この場合米焼酎も日本酒ということになってしまい、日本酒を理解してもらうことは難しい。」と仰っていました。
ブームの一方で、正しい日本酒の定義付けがないと文化として成長しづらい部分もあり、
同時に盛り上がってきている海外産の日本酒との差別化も計れず、日本酒というブランドをより強いものにするため、今回の決定に至ったのではないでしょうか。
あくまでも今回の決定はきっかけとして、海外産の日本酒、アルコール添加系の日本酒、国産の純米系日本酒それぞれの魅力を理解してもらい、
それぞれの特性が活きる形で、広い意味での清酒が世界中で親しまれていけるような活動が今後重要になってくるでしょう。
続報はこちら。
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