こんにちは、SAKETIMESの生駒です。
先日リリースしました、「日本酒」表示は純国産のみに限定 財務省の決定で起こる影響を考えるという記事、
多くの方に閲覧していただき、大きな反響を呼びました。
今回はその続報です。
6/12に国税庁酒税課が発表した資料と取材を基に、
前回の記事で書いた疑問点やその狙いについて書こうと思います。
1)アル添酒は「日本酒表記」OK
前回の記事で、米と水が国産限定ならば
海外の原料を使っている醸造アルコールを添加したアル添酒は日本酒表記が可能なのか?
ということを書きました。
今回確認をとったところ、アル添酒は純米酒と変わらず日本酒の表記は問題ない、とのことです。
2)そもそも「国産の水」指定はなかった
大手メディアが初回報道で記していた、
日本酒の表記は「国産米や国内の水を使って国内でつくられた清酒」のみに限定するという内容は一部誤りがありました。
正しくは「国産米を原料とし、かつ、日本国内で製造された清酒」です。
水についての指定はありません。(極端な話ですが)クリスタルガイザーやボルビックで日本酒を造っても、
それが国産米を使っていて日本国内で造られていればそれは「日本酒」表記OKということですね。
まあ現実的に考えて、そんなコストを使って酒を造るところはないでしょう。
3)清酒という大きな区分の中に、「日本酒」と「SAKE」が存在する
ここまでくると「清酒と日本酒は何が違うの?ていうかSAKEはどんな扱い?」ってなりますよね。
ここを一度整理しましょう。
今回の区分けとしては、まず清酒というカテゴリーが存在し、
その中に「日本酒」と「それ以外の清酒」という異なる区分があります。
「日本酒」と表記できるのは先に述べた「国産米や国内の水を使って国内でつくられた清酒」ということです。
海外産の清酒は、清酒ではありますが「日本酒」という表記はできません。
一方で海外における認知は「清酒」「日本酒」よりも圧倒的に「SAKE」ですよね。
この場合、「日本酒」は「Japanese SAKE」となり、海外産の清酒は「SAKE」になります。
4)狙いは「世界における日本酒のブランド確立とその向上」
上述したように、海外産の清酒はこれまで通り「SAKE」ということには変わりありません。
今回の決定は海外産の清酒へネガティブな印象を与えるというよりは、「日本酒」「Japanese SAKE」のブランド価値の確立と向上を目的としたものということです。
海外では、地理的表示制度が普及しています。
これはボルドー(ワイン)、パルマ(ハム)のように、特定の産地に特徴的な原料や製法で作られた商品だけが、その産地名(地域ブランド)を独占的に名乗ることの出来る制度です。
日本酒の世界的な需要が高まる中、大きな成功と普及のためには、世界の成功例のように地理的表示の活用が有効であるものの、
国内ではそのメリットと活用効果の理解が浸透しておらず、今回の取り決めにより、それの活用促進も考えているようです。
つまり国レベルの「地理的表示」を導入しよう!ということですね。
5)まとめ
発想の根本としては国産ブランドの確立がありますが、この他にも
国外で造られた清酒のごくごく一部に、粗悪な清酒があり、それを日本酒だと思って飲んだ人が
「日本酒は聴くほど魅力的じゃないな・・・」と思われてしまうことを防ぐという狙いもあるようです。
日本酒が世界で認められ始めているからこそ、そういった弊害も起こってくるわけですから、
それを防ぐという意味でも今回の決定には大きな価値があります。
ただ、その結果海外産の「SAKE」が培ってきた努力を毀損することがあってはなりません。
国産の日本酒と一言に言っても、千差万別、それぞれの個性があるわけですから、それと同様に、
海外産のSAKEも、無数に存在する魅力的な清酒なんだ!ということを忘れずに、価値向上に努めていかなくてはなりませんね。
SAKETIMESも海外版の準備を加速させないといけないなと感じた次第です。
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