福島県の酒処・会津地方の人気蔵
夢心酒造は、福島県屈指の酒処・会津地方のなかでも、特にラーメンで有名な喜多方市で、明治10年(1877年)に創業しました。銘柄は県内中心の「夢心」と県外向けの「奈良萬(ならまん)」です。
「夢心」命名の経緯は、まさに物語。蔵を創業した7代目当主・東海林萬之助氏が、良い酒を造ろうと寝食を削っていたある日、夢枕に朝日稲荷が現れます。銘酒の造り方を教えられ、そのとおりに醸造すると、芳醇な美酒を造ることに成功しました。夢から覚めた萬之助氏は、この朝日稲荷が同県の須賀川市にあることを探し当てます。すると、その日の夢枕に再び現れた朝日稲荷の神が「汝の造る酒に『夢心』と名付くべし」と謹言。そこで、商標を「夢心」にしたという逸話が残っています。
地元の酒米と酵母にこだわる「奈良萬」
「奈良萬」は東海林家のルーツが奈良県にあり、代々当主の名前に『萬』を冠することから命名されました。全国の日本酒ファンに向けたブランドとして登場したのは、平成10年(1998年)のこと。
基本的に、地元農家が育てた低農薬栽培の「五百万石」と「うつくしま夢酵母」を使用して醸すという、地元・会津にこだわった一品です。「うつくしま夢酵母」は、福島県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターが開発した福島県オリジナルの酵母。酢酸イソアミル系のバナナやメロンを思わせる香りが特徴です。
28BY(醸造年度)では、番外品として「十四代」を醸す高木酒造(山形県)が開発した酒造好適米「酒未来」にも挑戦しています。
食事に合わせやすいジューシーな生酒
紹介するの純米生酒は「奈良萬」ブランドのなかでも、通年出荷されている生原酒です。
会津産の五百万石を55%まで精米しています。熟れたメロンを感じさせる心地良い上立ち香で、口に含むとピリッとしたフレッシュなガス感と、フルーティーで若いマスクメロンを思わせる緻密な味わいが感じられます。会津の酒らしく、ふくらみのある甘口タイプですが、しっかりとした酸が全体を引き締めて、バランス良く飲みやすい仕上がりです。この酸が、後口をスパッと切ってくれます。ジューシーでシャープな味わいで、冷やから常温まで楽しめるでしょう。
また、栓を開けてから日を置くごとにどんどん味乗りしてくるのも、このお酒の特徴です。この時期なら、出汁を利かせた料理や、鍋のお供に向いているでしょう。焼鳥や肉料理とも相性が良さそうです。