元禄年間創業の老舗蔵
元禄年間(1688~1704年)に創業といわれる会津酒造は、福島県の中でも栃木県境にほど近い旧田島町に位置します。江戸後期に建造された土蔵は、今も仕込み蔵として活用し、年間を通じて温度差が小さく、長期低温発酵に向いている環境だといいます。生産石高は年間約1000石。創業からの銘柄は「会津」「金紋会津」などです。仕込みに使用するのは100%南会津の地下水。ミネラルが多く含まれまろやかな口当たりの名水で、丸みのある米本来の味わいを引き出しています。
若き蔵元が自らの完成を世に問う
会津酒造は、普通酒や三増酒全盛の時代においても、糖類や酸味料などは一切添加せず真面目な造りをおこない、地元での消費が中心でした。一時期は、福島県の酒蔵をリードする存在でしたが、21世紀に入って気づけば、飛露喜やあぶくま、天明、寫楽、国権など、かつては無名だった蔵がこだわった良酒を醸し全国区となり、同蔵は会津酒復権の流れに乗りきれていませんでした。その状況をみて、蔵元後継者の渡部景大氏が2010年(平成22年)に蔵に戻ると同時に、変革を始めたのです。
約1000石のうち1割の約100石を「山の井」ブランドとしました。コンセプトは、景大氏の使いたいお米を使用し、感性のおもむくままに醸すこと。毎年、自由な発想でお酒を醸し、きれいでやさしい味わいを目指しています。23BYから、新ブランド「山の井」を全国の特約店で販売するようになりました。
やわらかでフルーティーな「山の井」の定番
この「山の井60」は、特定名称をうたってはいませんが、福島県産の五百万石を60%まで磨いた純米酒です。通年販売で「山の井」ブランドの定番商品となっています。
香りはコクのあるライチのような熟れた果実香。口に含むとやわらかく、マスカットのようなさわやかな甘味や酸味が穏やかに広がります。切れがあるというより、五百万石にしてはやわらかく華やかなタイプで、しっとりとした米の旨みと長い余韻を楽しむお酒だと思います。どちらかというと冷やして飲むのが良いかと感じますが、ぬる燗も意外といけます。まずは単体で呑んでみるのがおすすめです。おつまみと合わせるなら、パルミジャーノ・レッジャーノなどハード系タイプのチーズなどに合うでしょう。
ボトルの裏ラベルには「感じるままに飲んで下さい」と書いてあります。若い蔵元が感性のすべてをつぎ込んで醸されたお酒なので、飲み手としても既成概念にとらわれずにこのお酒を楽しみましょう。