「楽しい暮らしの大関」。これは、「ワンカップ大関」などで知られる灘の酒造メーカー・大関が掲げる経営理念です。

社長である長部訓子氏へのインタビューでは、飲み手や造り手、その家族に至るまで、大関のお酒に関わる人の"楽しい暮らし"に寄り添いたいという思いが、経営理念に込められていると語られました。その思いは酒造りや商品開発、研究開発に活かされ、魅力的な商品が人々の暮らしに彩りを与えています。

「α-EG」が多く配合された「キレイのための純米酒」

2019年9月、そのラインナップに新しく加わったのが「キレイのための純米酒」です。コラーゲンの生産量増加に寄与するという美容成分「α-EG(アルファ・エチルグルコシド)が、従来の日本酒よりも多く含まれているといいます。

このα-EGに関連する研究が「日本醸造協会技術賞」を受賞するほど、バイオ研究にも力を入れている大関。この小さなボトルには、どのようなこだわりが詰まっているのでしょうか。

日本酒由来の美容成分「α-EG」

「キレイのための純米酒」のアルコール度数は13%とやや低めで、気分によって選べる「Sweet」と「Dry」の2種類を展開しています。ホームパーティーや就寝前のリラックスタイムなどに取り入れてもらいたいと、女性向けに開発されました。

最大の特徴は、α-EGを通常の約4倍(同社上撰比)も多く含んでいる点です。α-EGとは、日本酒を造る過程で麹によって生成される天然由来成分のこと。以前よりα-EGが持つ美容効果は化粧品業界などを中心に研究されていましたが、その研究をより深めたのが、金沢工業大学の尾関健二教授と大関総合研究所の坊垣隆之所長です。

大関総合研究所 坊垣隆之所長

大関総合研究所 坊垣隆之所長

大関総合研究所は、日本酒醸造全般における事業領域の拡大を目的として1980年に開設。清酒を含めた食品の研究・技術開発や、発酵を基盤としたバイオテクノロジーに関する研究が行われています。製造部が使用する酵母の改良や、商品開発部が新商品を企画した際に酒質を決める役割などを担う、大関の酒造りの要とも言える存在です。

坊垣所長によると、α-EGの研究を始めたのは、日本酒に関係する酵素「α-グルコシダーゼ」を多く作る麹がきっかけだったそう。この麹を活用できないかと日本酒を分析した結果、α-EGが多量に生成されていることがわかったといいます。

「もともと、α-EGは日本酒に特徴的な成分だということは知られていました。さらに調べてみると、既にさまざまな企業が注目して研究を行っていることがわかったんです。特に化粧品に応用されていると知り、我々もα-EGを含有する化粧品素材を開発し、販売を行っていました」

その後、かつて総合研究所に所属していた尾関氏が、金沢工業大学でα-EGの研究を継続しておられ、5年ほど前から坊垣所長と共同で研究を開始。ヒトの真皮の細胞にα-EGを加える実験を行ったところ、細胞の数が増え、それに伴ってコラーゲンの生産量も増えることがわかりました。さらに、皮膚の保湿やハリに関係ある遺伝子の量にも増加が見られたといいます。

「これまで、α-EGに関する様々な研究が行われてきましたが、我々の研究で『α-EGを塗布すると皮膚の角質の水分量が増える』ということを証明しました。さらに、尾関先生が『飲用するとどうなるか』という研究を進めたところ、飲用においてもコラーゲンが増えることを発見したのです」

「α-EG高含有純米酒エキスの飲用試験②」のグラフ

尾関教授の実験結果を踏まえて、総合研究所で改めて実験を実施。被験者を「α-EGを1g含んだ純米酒エキスを毎日摂取」「α-EGを2g含んだ純米酒エキスを毎日摂取」「純米酒からα-EGを取り除いたものを毎日摂取」「飲用なし」の計4パターンに分け、16週間でどのような違いが現れるかを検証しました。

その結果、前者の2名は2週目からコラーゲン密度増加の優位性が見られ、摂取をやめた12週目からは明確に減少するという変化が確認されたのです。

この研究結果を受けて、商品開発部は「キレイのための純米酒」の開発に着手。その後、尾関教授と坊垣所長の一連の研究成果が高く評価され、2019年10月には日本醸造協会より「日本醸造協会技術賞」が授与されました。

「日本醸造協会技術賞」を授与された尾関教授(写真左)と坊垣所長

「日本醸造協会技術賞」を授与された尾関教授(写真左)と坊垣所長

1.6gのα-EGが含まれている「キレイのための純米酒」。α-EGが多く含まれていることを打ち出し、美容を強く意識した商品を開発したのは、大関では初めてなんだとか。

これは、美容維持に役立つことを科学的に証明し、エビデンスがきちんと取れているからこそ実現できたこと。「『飲みたいけど罪悪感がある』という女性にとって、『美容のために飲む』という理由付けになれば」と、坊垣所長は期待を寄せます。

「未来に貢献できるような研究をしていきたい」

今回の検証結果や受賞を受けて、今後もα-EGを使用した商品開発は続けていきたいと話す坊垣所長。

さらに、「日本酒にはまだ解明されていない機能もある。そういったものを掘り起こして見つけていきたい」と、新たな挑戦にも意欲を見せています。

将来について語る坊垣さん

「『楽しい暮らしの大関』という言葉のとおり、お客様にはお酒を飲んで楽しんでもらいたい。特にバイオサイエンスグループでは、皆さんの健康に役立てられるような研究も日々行っています。自分の研究で人々が健康になって、安心や安全を得られるというのはうれしいですね」

未知なる存在を自らの研究で発見・解明するというロマンに、研究者としてのやりがいを感じるのだそう。社会に貢献できる成果を出し、未来を担う次世代に研究をつなげていくことも総合研究所のリーダーとしての目標です。

「今は世界的にナチュラル志向が強まり、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されています。我々も、10年後や20年後の未来に貢献できるようなことをやっていきたいですね。総合研究所のメンバーには若い人材も増えてきました。技術が途切れてしまわないよう、我々の世代が未来への種を撒いて、次の世代の人たちが収穫していけるように研究を続けていきたいと思っています」

「キレイ」と「満足感」を両立させた一本

α-EGの研究成果をより魅力的に打ち出すため、どのように商品に落とし込んでいったのでしょうか。「キレイのための純米酒」の商品開発を担当した、溝渕彩乃さんにお話を伺いました。

大関商品開発部商品開発グループの溝渕彩乃さん

商品開発部商品開発グループの溝渕彩乃さん

今回は初めから「女性向け」というコンセプトは固まっていたため、「どうしたら女性が手に取りやすいか」を考え、容器のデザインや大きさ、パッケージデザインなどを選定したといいます。

「日本酒を飲んだことがない方だと、そもそも手に取ってもらえないと思ったので、ターゲットは『お酒を飲むことが好きで、そのなかに日本酒も選択肢として入っている女性』としました。日常的にお酒を楽しむなかで、『今日は体にいいものを飲もうかな』というときに選んでもらえる商品にしたいなと思ったんです」

商品名については、「α-EGの研究成果がきちんと伝わるような名前」を考え、女性からの意見を募ったのだそう。さまざまな候補のなか、「『キレイ』という言葉が入っていると興味を引く」との意見を反映したそうです。最初は1種類のみの展開を考えていましたが、こちらも女性のことを考えて「Sweet」と「Dry」の2種類に増やしたといいます。

「毎日の美容維持に役立てていただきたいので、できるだけ飽きずに楽しめる商品を目指しました。そう考えると、その日の気分や料理に合わせて選べる方がいいと思い、種類を増やしたんです。どちらかといえば、個人的には『Sweet』の味わいが好きですね。女性向けだからといって甘すぎず、日本酒を飲む方がイメージするような味わいに仕上がっています」

大関商品開発部商品開発グループの溝渕彩乃さん

女性向けの商品としては、アルコール度数を低めに抑えている商品も多いなか、13%という絶妙な度数も商品の特徴です。

「日本酒で一般的な15%ぐらいの度数だと、次の日を気にして飲むのをためらってしまうかもしれません。週末や休みの日だけでなく、できれば毎日飲んでほしいし、日本酒らしい満足感も味わってほしい。そういった思いから、13%という度数に決まりました」

料理との相性だと、「Sweet」はクリーミーなものやまろやかな味わいのものに合うそうで、「今の時期なら豆乳鍋などにぴったりだと思います」とのこと。「Dry」はキレのある辛口で、和食や魚料理などに幅広くマッチすると話してくれました。

女性目線で"楽しい暮らし"に寄り添う

溝渕さん自身もα-EGの実験に協力しているのだそう。今後は「キレイのための純米酒」のさらなる飲用シーンの提案、α-EGを使用したさまざまな商品を展開していきたいと語り、「楽しい暮らしの大関」の実現を目指しています。

「日本酒を飲む女性が増えているので、それをもっと後押しできるような、お酒を手に取りやすい環境を創るお手伝いがしたいんです。α-EGは体にうれしい成分なので、飲んでいるときも楽しいし、明日からの自分にも効果があると思うとうれしい。これからも女性目線を活かしながら、お客様に『嬉しい・楽しい』と思っていただけるものを作っていきたいです」

商品を持つ大関商品開発部商品開発グループの溝渕彩乃さん

溝渕さんによると、大関は以前から女性を意識した商品開発に取り組んでいましたが、長部訓子さんが社長に就任したことで、さらにその意識の高まりを感じるようになったといいます。

もちろん、日本酒を楽しむのに男女の垣根はありません。しかし、同社の看板商品である「ワンカップ大関」は男性向けというイメージが根強いなか、その対極にあるような商品として、「キレイのための純米酒」がこれから存在感を放っていくことでしょう。

現在、「キレイのための純米酒」は大関オンラインショップなどで販売中。美味しく楽しみながら、大関の研究の一端に触れることができるお酒です。ぜひ、手に取ってみてはいかがでしょうか。

(取材・文/芳賀直美)

sponsored by 大関株式会社

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