酒匠で料理研究家のまゆみです。

すっかり寒くなり、冬に両足突っ込んでいるこの季節。ゆっくりじっくりお酒が呑みたくなるものですね。そこで今回は、広島の榎酒造(えのきしゅぞう)から呑み飽きない1本を紹介しようと思います。

本日のお酒は「華鳩 特別純米」

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ごく薄い山吹色。香りは実に穏やかで、口に含むと一瞬刺激がありますが、すぐに角が無くなりまろやかで丸みのある口当たりに。穀物の甘味と軽快な酸、わずかに苦味を感じます。旨味が少なく、余韻は短め。良い意味で味の幅が狭いので、食事の最初から最後まで呑み飽きず、どんな料理にも合わせやすいでしょう。

個人的な話になりますが、わたしの父は広島県出身、母は山形県出身で、食文化が違うためあーでもないこーでもないと食についてよく話をしているのです。そこで、広島のお酒に山形の名産を取り入れて、仲良くしてもらおうじゃないかと思った次第で、このレシピを思いつきました。
選んだ食材は菊の花。華と花で華やかに、ということで。
山形では菊の花を料理に取り入れることが多々あり、とくにこの紫菊は山形名物。地元では「もってのほか」と呼んでいます。なぜ「もってのほか」なのかと言うと、天皇の御紋である菊の花を食べるとは”もってのほか”だとか、”もってのほか”おいしいだとか諸説あります。実際のところは母に聞いても知らないの一言でしたけど。
この「もってのほか」、独特の香りとシャキシャキした歯ごたえがとっても美味しい食材です。色味の美しさを活かし、箸で持ちやすい巻物にしてみました。

もってのほかのほうれん草巻き

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<材料>

・ほうれん草 1/2束
・もってのほか(黄色の菊でも可) 50グラム
・酢 少々

<ポン酢の材料>
・柑橘類(レモン、すだち、かぼすなど) 大さじ1
・米酢 大さじ1
・醤油 大さじ2

<作り方>
1.ほうれん草は茹で、水気を絞る。葉と茎に分けて切る。
2.もってのほかは、湯に酢を入れて茹で、水気を絞る。
3.巻き簀にほうれん草の葉を並べ、もってのほかとほうれん草の茎を乗せ、端から巻いていく。
4.一口大に切る。
5.柑橘類、米酢、醤油を混ぜ合わせポン酢を作る。食べる時にポン酢をかける。

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湯に酢を入れるのは、綺麗な紫色にするため。普通の黄色の菊はそれほど気にしなくても良いでしょう。
せっかくなので、ポン酢も手作りで。簡単に合わせるだけのポン酢レシピですが、これがおいしいの。柑橘類によって味わいも変わるし、これからの季節ならみかんを使うのもおすすめです。
ほうれん草の苦味とポン酢の柔らかい酸が「華鳩」と同調し、菊の独特の香りが深みを増してくれます。たまには父とこの肴と酒で晩酌しようかなと思いつつ・・・広島と山形に縁のない方も、ぜひお試しくださいませ。家族や気の合う友人とのんびり呑むに相応しいお酒です。

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