わたしが勤めている秋田県の酒蔵は、山・川に囲まれた自然が豊かな場所になります。

しかし、川といっても、アユやニジマスが放流されていてたくさん魚が釣れるような大きな川ではなく、田んぼに水を引くためにあるような小さな川です。酒の仕込水も同じ水脈からこんこんと湧いています。

今回は、この蔵の裏手の川が舞台! 酒造りや難しい研究から離れて、休日の楽しみのひとつ・雑魚釣りをして酒のアテを作りましょう。

 仕込み水の水脈にもなっている川で魚釣り!

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蔵から車で数分、川釣りができそうなポイントへ。

いつも狙う雑魚はアブラハヤウグイです。他にもオイカワやカジカ、ヌマエビの仲間、ザリガニ、大きなマゴイもいます。
「え、ウグイ食べるの!?」という言う方もいるかと思いますが、あとでおいしい食べ方をご紹介しますのでしばしお待ちください。

さっそく、釣りをしましょう。
用意するのは竹竿簡素な仕掛けくらいなもので、500円程度で揃います。エサは釣具屋でブドウ虫なんかを買っても良いのですが、畦にはバッタやミミズがいますし、川の石をひっくり返すと、ヒルやカワムシがいっぱい!これを付けて釣りましょう。気持ち悪い? いえいえ、クロカワムシ(ヒゲナガカワトビケラの幼虫)は長野県で「ざざむし」として食べられていますし、あとで内臓は取るから気にしません。虫が苦手な人は魚肉ソーセージを付けても釣れますよ。

川や海を見て、「わーおさかなだー!」という“おさかな”の具体的な名前は意外と知らないもの。そんなとき、同定する(生物の分類上の種名を調べる)ことから学びは始まります。
釣った魚を図鑑やWebで調べてみると、似た魚でも模様や口の形などが違います。また同じ魚でも雌雄や季節によって形態は違っていて、たとえばウグイは繁殖期に婚姻色が出ます。そうなると食性も違ったり棲家も違ったりします。

お酒を醸す時の酵母も、マルトース資化性(麦芽糖を酵母が食べてアルコールを出すかどうか)の有無で発酵に使えるかどうかの判断ができます。乳酸菌群も糖質の資化性や形も菌ごとに異なります。生物学的な分類です。

「そもそもハヤとウグイは同じ魚じゃないの?」という意見もありますが、アブラハヤとウグイは異なります。ただ、ウグイもアブラハヤも総称して「ハヤ」と呼ぶ地域もあるそうです。方言という視点から考えると、人文学系の分類もできそうです。

ちょっと学問っぽくなってしまいましたが、日本酒や肴にこだわるならば、その裏側にある“生態”にまで思いを馳せてみるのも面白いのではないでしょうか。

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魚のいそうな渕で構えたり、流れのあるところで大物を狙ったり・・・。餌を変え、仕掛けを工夫して数時間、アブラハヤとウグイが合わせて30匹釣れました。今晩はこれで晩酌のお供を作りましょう!

本日のメニュー:アブラハヤの天婦羅とウグイの煮つけ

まずは下処理です。ウロコを取り、お腹を開いて内臓は取ります。内臓が川魚独特の苦みの原因なので、しっかり取って洗っておくことが大切です。

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下処理が終わったらアブラハヤとウグイを分けて、調理開始です。

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◎アブラハヤの天婦羅

アブラハヤはウグイよりもサイズが小さく、ウロコがあまり目立たない魚です。これは天婦羅にしましょう。

<材料>
・アブラハヤ
・市販の天婦羅粉
・サラダ油

<作り方>
1. 天婦羅粉を水で溶き、下処理したハヤをこれに通す
2.  180℃ほどの油で揚げる
3.  揚げる音がカラカラした音になったらキッチンペーパーで余分な油を取って盛りつける

◎ウグイの煮つけ

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サイズの大きいウグイは煮つけでいただきたましょう!

<材料>
・ウグイ
・酒
・みりん
・ショウガ ※チューブでもよい
・砂糖
・醤油

<作り方>
1. 下処理済みのウグイを用意。隠し包丁を入れるとなお良い。ショウガをスライスしておく
2. 水、醤油、酒、砂糖(てんさい糖が良い)、みりん、ショウガを混ぜ、フライパンに入れる
3. ウグイを入れ、沸騰する頃にアルミホイルで落としぶたをし、弱火で煮る
4. 身が柔らかくなったのを菜箸で確認してできあがり

天婦羅も煮つけも日本酒と相性ばっちり!

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天婦羅も煮つけも日本酒にばっちり合います! 天婦羅は香り高い吟醸酒と合わせても、薬味を利かせたタレで食べるならコクのあるタイプと合わせてもOK。煮つけなら生酛や山廃の出番です。精米歩合が高めのしっかりした酒が良いでしょう。

「鵜が喰うような雑魚」だからウグイというようですが、このようなかんたん調理で非常においしくいただけます。

釣り場の渕にはヨモギアサツキも自生していますので、ヨモギは若い芽を天婦羅に、アサツキは小ネギのように煮つけにかけて食べるとこれまた美味。ただし、アサツキは有毒のスイセンやイヌサフランに似ているので、くれぐれも誤食に注意! それと、山に入るときはクマに気をつけてくださいね。

(文/リンゴの魔術師)

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