生ハムやチーズと、燗酒。そんな大胆ともいえる発想のペアリングを、しっとりと落ち着いた雰囲気で楽しめる素敵な店が、南大塚にある「29ロティ」です。
山手線大塚駅の南口から、住宅街をまっすぐ歩くこと10分。「29ロティ」は古い家をリノベーションした店で、まわりの景色に溶け込むように、ひっそりと静かに佇んでいます。灯りに照らされた杉玉が、店の目印です。
店内に入ると、カウンターに備えられた、生ハムをカットする大きな機械が目に飛び込んできました。
客席はカウンター5席と、4人掛けのテーブルがひとつ。こぢんまりした雰囲気ですが、カウンターのテーブルには奥行きがあるため、閉塞感はありません。
隠れ家のような雰囲気で、ひとりでもカップルでも楽しめる空間になっていました。
こだわりは、食事を引き立てる燗酒
日本酒は、燗酒に向いたラインアップを中心に、約20種類が常時そろえられています。
夏でもおすすめするほど、燗酒にこだわりをもっているのだそう。「お酒単体で楽しむよりも、食事といっしょに美味しくいただいてほしい」という思いから、料理に合わせやすいタイプを中心に提供しているとのことでした。
日本酒のほかに、ワインやカクテルも充実しているため、日本酒があまり得意でない人でも、いっしょに楽しい時間を過ごせることでしょう。
いざ実食!生ハムと燗酒の絶妙なペアリング
常備されている8種類前後の生ハムから、3種類を盛り合わせにしていただきました。お客さんの目の前で、ていねいにカットしてくれます。
今回の盛り合わせは「プロシュット・ディ・パルマ24か月熟成(写真奥)」「フェンネルシード入りのサラミ(写真右手前)」「グアンチャーレ(写真左手前)」の3種類。
「プロシュット・ディ・パルマ」は、脂の甘味がもっとも強く感じられ、大きな赤身の部分にも旨味がありました。「サラミ」は、ほどよくスパイシーな味わいと華やかな香りがとても爽やかで、いつまでも食べ続けていられそう。「グアンチャーレ」は、一般的に"豚トロ"と呼ばれる部位で、甘味のある脂と、とろけるようなくちどけが最高でした。スパイシーな味付けのため、お酒との相性は抜群です。
合わせる日本酒は、福岡県の株式会社杜の蔵から「独楽蔵」の純米吟醸酒。もちろん、燗にしていただきました。
生ハムと燗酒をいっしょに食べると、生ハムの脂が日本酒の熱でほどよくとろけるのと同時に、甘味と旨味がじわりと溶け込み、よりいっそうのコクを感じることができます。香りを落ち着かせて酸味を立たせるような、絶妙な燗のつけ方で、生ハムの香りを邪魔することなく旨味が強調されていました。
「29ロティ」の魅力は生ハムのみにあらず
生ハムだけでなく、チーズの種類が豊富なのも「29ロティ」の特徴です。白カビやウォッシュなどのソフトタイプを中心に、常時8種前後がそろっています。
こちらも、本日のおすすめを3種類、盛り合わせにしていただきました。
左から順に「フォルマッジオ・ピノ・ロゼ」(イタリア製ハードチーズ・牛乳製)「無名の青かびシェーブルチーズ」(イタリア製ブルーチーズ・山羊乳製)「ブリー・グランマルニエ」(フランス製白カビチーズ・牛乳製)の3種類です。
「フォルマッジオ・ピノ・ロゼ」は、ワインで洗ってから熟成した一品。爽やかなフルーティーさとナッツの香ばしさが入り混じった、おもしろい香りがします。スモーキーな熟成酒との相性が良さそうです。「青かびシェーブルチーズ」は、山羊乳からつくられたチーズですが、香りにクセはありません。むしろ、青かびの香りが、シェーブルチーズ特有の酸を含んだ香りにのって、爽やかな印象でした。「ブリー・グランマルニエ」は白カビチーズ。しかし、白カビ特有の香りはほとんどなく、爽やかな果実香に包まれていました。
こちらのチーズには、奈良県・久保本家酒造から「生酛のどぶ」の燗酒を合わせました。すっきりと飲みやすいお酒ですが、燗をつけることによって、炊きたての米を思わせる香りがさらに強調されます。特徴的なフレーバーのチーズを活かしきるという意味では、良いペアリングでした。
生ハム・チーズ以外にも、酒肴が充実!
生ハムやチーズ以外にも、3種類のおつまみを少しずつ楽しめる「小つまみ」のセットや、ジビエを使った個性的な南アジア料理など、たくさんの酒肴がそろっています。何度来ても、料理に飽きることはないでしょう。
こだわりの生ハム・チーズと燗酒のペアリングを前に、お客さんの幸せそうな笑顔が常に絶えない「29ロティ」。いちど訪れたら、きっと「また来たい」と思わせてくれるでしょう。
◎ 店舗情報
- 店名:「29ロティ」
- 住所:〒170ー0005 東京都豊島区南大塚1-23-8-101
- TEL:03ー6902ー1294
- 営業時間:18:00〜23:00
- 定休日:水曜日
(文/山本 清子)