佐賀県の日本酒が200種類以上も並ぶ、立飲みスタイルの日本酒バー「國酒文化振興酒場 佐賀」が、東京・大井町にオープンしました。

都内には佐賀県のアンテナショップがないため、佐賀の情報発信地としても注目されているお店です。「國酒文化振興酒場 佐賀」で味わう佐賀の日本酒やお店の魅力と、運営元である國酒文化振興協会の取り組みについてご紹介します。

200種類の日本酒が並ぶ、モダンな雰囲気の店内

JR大井町駅から歩くこと4分。「國酒文化振興酒場 佐賀」は、阪急大井町ガーデンを抜けた静かな住宅街にひっそりと佇んでいます。

「國酒文化振興酒場 佐賀」店長・長郷章子さん

「國酒文化振興酒場 佐賀」店長の長郷章子さん

黒を基調とした壁にアートが飾られた店内は、スタイリッシュでモダンな雰囲気。店長の長郷章子さんを筆頭に女性スタッフが多く、女性でも入りやすいお店です。チャージ代がないので、0次会や2軒目など、ちょい飲みの場としてもぴったり。

冷蔵庫には200種類の日本酒がずらりと並びます。グラス1杯(約半合)で410円とリーズナブルなものから、1杯2,000円ほどするプレミアムな日本酒も。あれこれ飲み比べたい人のためには、きき酒セット(1,000円~1,300円)も用意されています。

なにを頼んだらいいか迷ってしまう人には、「ジャケットセット」がおすすめです。スタッフがセレクトした、おしゃれなラベルの日本酒3種類を飲み比べすることができます。

「國酒文化振興酒場 佐賀」の「ジャケットセット」

ジャケットセット

取材時に選んでもらったのは、「蔵心」などで知られる矢野酒造の「竹園 自然に還ル YANO SHUZO」、「肥前杜氏」を造る大和酒造の「和NAGOMI 純米吟醸」、天吹酒造の「天吹 裏大吟醸 愛山 花酵母仕込み」の3種類。お店のシックな雰囲気にマッチする、秋っぽい配色のラベルです。

「國酒文化振興酒場 佐賀」のブラインドセット

ブラインドセット

また、同じ蔵の日本酒で、酒質が異なる3種類を飲み比べる「ブラインドセット」も楽しめます。今回は、有明海の近く、鹿島市に蔵を構える馬場酒造場「能古見」のセットでした。

ブラインドで提供されて、グラス横のラベルを裏返すと、純米吟醸、特別純米、本醸造などと特定名称が書かれています。

お酒の勉強をしている人はもちろん、友人同士とゲーム感覚で楽しむのもいいですね。スペックで選ばないぶん、思いがけないおいしさに出会えるかもしれません。

「日本酒セーバー」で開けたての風味を保つ

「國酒文化振興酒場 佐賀」の冷蔵ケース

それにしても、200種類ものお酒が並んでいる様子は圧巻です。中には、都内ではあまり流通していない銘柄や、佐賀県内限定流通のお酒も。佐賀県酒造組合や佐賀県にある佐賀酒の専門店「しめなわ」の協力があり、これだけの銘柄がそろえられたのだとか。

「これからは新酒が出回る季節。取り扱う酒蔵さんや銘柄もどんどん増やしていきたいですね」と語るのは、お店を運営する國酒文化振興協会 事務局長の吉田英治さん。

しかし、これだけの種類を、いったいどのように管理しているのでしょうか。その秘密は、入り口付近にある、完全酸化防止の日本酒セーバーにありました。

日本酒専用の冷蔵セイバー

実は、お酒の注文が入るたびに、瓶ごとセーバーに差し込んで注いでいるのです。瓶を逆さまにすることによって、お酒の自重で液体と窒素が入れ替わり、瓶内のお酒が酸化しない仕組みだそう。

日本酒専用の冷蔵セイバー

これは、吉田さんが企画・開発して国際特許を持つ、完全酸化防止ワインセーバー「WHYNOT」を日本酒用に改良したもの。瓶を開栓するときも、窒素が詰まった空間で専用のプラグを取り付けるので、開けたての風味をそのまま保つことが可能です。

日本酒保存用の冷蔵庫「SAKE CELLAR」

店の奥には、マイナス5度でお酒を管理できる日本酒保存用の冷蔵庫も。中田英寿さんがプロデュースした「SAKE CELLAR」です。

酒質の変化が速い生酒などは、酸化を防ぐだけでなく温度管理も重要。多くの種類の日本酒を開封しても、できるだけ最適な状態で飲んでもらうための環境が整えられていました。

佐賀のソウルフード 「ぎょろっけ」で1杯

お酒に合わせたおつまみにも、佐賀らしさが表れています。

佐賀人のソウルフード「ぎょろっけ」

おすすめは「ぎょろっけ」(200円)。「魚ろっけ」や「ミンチ天」と呼ばれるこの料理は、魚のすり身をパン粉で揚げたコロッケです。

カリッと揚がった衣に、モチモチとした食感がたまりません。ほかにも「有明海のおいしい海苔」(250円)や「鯛ちくわ」(500円)など、日本酒に合わせやすそうな佐賀の名物がそろっていました。

「お店の近くに住んでいる人がよく来てくれますが、けっこう佐賀出身の人が多いんですよ。聞いてみたところ、品川駅からは新幹線で、羽田からは飛行機で帰れるので、アクセスの良さが理由のようです」と、國酒文化振興協会 理事の上島亨さん。

佐賀をPRするアイドルが主役のアニメ「ゾンビランドサガ」のグッズ

佐賀をPRするアイドルが主役のアニメ「ゾンビランドサガ」のグッズ

また、佐賀をPRするアイドルが主役のアニメ「ゾンビランドサガ」の番組ファンが、アニメをきっかけとして佐賀に興味を持ち、来店するのだそう。情報交換のノートやアニメグッズが置いてあるなど、「佐賀」をキーワードにさまざまな人が訪れているようです。

「國酒」を世界に伝えるために

「國酒文化振興酒場 佐賀」を企画運営するのは、2019年に設立されたばかりの國酒文化振興協会。同協会は、各都道府県の日本酒を国内や世界の人に知ってもらうことを目的として、都道府県単位で店舗を作り、日本酒の魅力を伝えています。

その第1号、佐賀県のお店としてオープンしたのが、「國酒文化振興酒場 佐賀」です。國酒文化振興協会の創立者である吉田さんに、会が発足したきっかけを伺いました。

「國酒文化振興酒場 佐賀」の店内

「ワインセーバー『WHYNOT』に関わって約20年。人生の後半に差しかかる年齢になって、國酒である日本酒を世界に伝える仕事がしたいと考えたんです。『WHYNOT』を日本酒に活用することで、品質を保ったおいしい日本酒を海外の人に紹介できると思い、なにかできないかといろんな方にお声がけしました」

そうして、上島さんをはじめ、多くの方とつながり、同じ志をもった4人で國酒文化振興協会を発足。蔵同士の連携がよく、地酒のPRに力を入れているところに共感し、最初の店舗は佐賀にすると決めたのだとか。

今後は、お店で飲んで気に入った日本酒をリスト化し、自分の「日本酒カタログ」を作れるようなアプリの開発など、さまざまなアイデアの実現に向けて動き出しているそうです。

地域のPRには欠かせない要素である地酒。「國酒文化振興酒場 佐賀」は、佐賀の情報発信基地として、日本酒をきっかけに佐賀の魅力を知る一歩目にもなるお店です。大井町の近くを訪れた方は、ぜひ足を運んでみてくださいね。

(取材・文/橋村望)

◎店舗情報

  • 店舗名:國酒文化振興酒場 佐賀
  • 住所:東京都品川区大井1丁目25-3 シティハイツ大井町 1F
    (JR大井町駅から徒歩3分、東急大井町線大井町駅から徒歩4分)
  • 電話番号:03-6451-8098
  • 営業時間:[火~金]17:00~23:30(L.O. 23:00)/[土日祝]15:00~22:30(L.O. 22:00)
  • 定休日:月曜日
  • 公式Instagramはこちら

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