祐徳稲荷神社や有明海の干潟で有名な佐賀県鹿島市は、多良岳山系の清水と良質な米に恵まれた酒どころで、江戸時代から酒造りが盛んでした。そんな鹿島市は、全国に先駆けて、"日本酒を通した地域おこし"に取り組んできた自治体でもあります。今回は、実際に鹿島市を訪ねて、その話を伺ってきました。

新しいスタイルの旅を提供する「鹿島酒蔵ツーリズム」

鹿島市内の酒蔵通り

鹿島市内で製造される酒や、地域の文化・歴史を国内外へ発信し、実際に鹿島へ来てもらうためのあらゆる取り組みを行う「鹿島酒蔵ツーリズム推進協議会」。話をうかがうために「肥前浜宿(ひぜんはましゅく)」というエリアへやってきました。

江戸時代に多良海道の宿場町として栄えた肥前浜宿には、現在も当時の佇まいが残っています。「浜中町八本木宿(はまなかまちはちほんぎしゅく)」という地区は、国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれていて「酒蔵通り」とも呼ばれているそうです。

光武酒造場の外観

鹿島市内で現在も醸造を続けているのは、矢野酒造・光武酒造場・峰松酒造場・富久千代酒造・幸姫酒造・馬場酒造場の6蔵。現在「鹿島酒蔵ツーリズム推進協議会」の会長を務めているのは、光武酒造場の代表を務める光武博之氏です。

「鹿島酒蔵ツーリズム推進協議会」の会長を務めているのが、光武酒造場の代表である光武博之氏。

「『鹿島酒蔵ツーリズム』は、酒蔵だけでなく、地域全体の活性化を目的としています。市内のさまざまな酒蔵を巡って楽しんでいただくことはもちろん、その酒が生まれた土地を散策しながら食・文化・歴史を体感していただく、新しいスタイルの旅を提供しているんです」

「世界一の酒」をきっかけに始まった挑戦

肥前浜宿エリア

もともと、肥前浜宿エリアでは「花と酒(咲け)まつり」という蔵開きのイベントが開催されていました。そこからさらに大きな一歩を踏み出すきっかけとなったのが、市内の富久千代酒造が醸す「鍋島 大吟醸」が、世界的なワインのコンテスト「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」のSAKE部門で、最高の賞である「チャンピオン・サケ」を受賞したことです。

以後、このエリアが「世界一の酒が生まれた町」と呼ばれるようになり、地域を活性化させるための動きが始まりました。

光武酒造場・光武博之氏。

「鹿島酒蔵ツーリズム推進協議会には、鹿島市内の6蔵だけでなく、周辺エリアの酒蔵も参加しています。また、鹿島酒蔵ツーリズムガイドの会、鹿島商工会議所、鹿島市観光協会、鹿島市商工観光課などのさまざまな組織が団結しているんです。日頃から交流が深く、酒蔵同士のつながりも強いので、話し合いはいつもスムーズですよ」と、光武会長。

鹿島市役所からやって来た担当職員の方々も、その団結力に驚かされるのだとか。心をひとつにして、取り組みを進めているんですね。

第6回の参加者は、なんと8万人以上!

「鹿島酒蔵ツーリズム」は2012年に開催され、第6回目となった2017年の開催時には来場者数が8万人を突破した。

第1回の「鹿島酒蔵ツーリズム」は、2012年に開催されました。以降、回を重ねるたびにそのファンを増やし、2017年に開催された第6回の来場者数は、なんと8万人以上。成功の背景には、隣接した市町と連携しながら、鹿島全体で重ねてきた歩みがあります。

鹿島では、それぞれの酒蔵が「鹿島酒蔵ツーリズム」では、酒蔵が同時に蔵開きをするだけでなく、かしま発酵まつり・鹿島おまつり市・祐徳門前春まつり・旭ヶ岡公園桜まつり・花と酒(咲け)まつりなど、街の至る所で多彩なイベントを開催する。

「『鹿島酒蔵ツーリズム』では、それぞれの酒蔵が同時に蔵開きをするだけでなく、エリア内の至るところで多彩なイベントが開催されます。かしま発酵まつり、鹿島おまつり市、祐徳門前春まつり、旭ヶ岡公園桜まつり、花と酒(咲け)まつり......さまざまな名所を巡りながら鹿島の魅力をまるごと体験できるのが大きな特長です。また、2015年からは、隣接する嬉野市とも連携し、嬉野温泉酒蔵まつりの合同開催も始まりました」

祐徳門前春まつりの様子

広く連携することで、さらにたくさんの人たちにイベントの魅力を知っていただくことができ、来場者数が大きく増えたそうです。蔵開きだけでなく、エリア内のいろいろな場所で楽しい体験ができるのはとても魅力的ですね。

「鹿島酒蔵ツーリズム」の根底にあるのは「鹿島の酒蔵と日本酒を守り、鹿島全体の町づくりにつなげていきたい」という思いです。

「各方面へのPRをはじめ、商工観光課のバックアップがあるおかげで、私たち酒蔵は酒造りとおもてなしに専念することができます。九州各地や首都圏を中心に、全国各地でPR活動をしてもらっている間、私たちは良質な酒造りに全力を尽くす。そして、ツーリズム当日は、美味しい酒と真心を込めたおもてなしで、たくさんの方々に喜んでいただく。それぞれの役割を明確にして連携することで、質の向上につながっています」と、力強く語ってくださいました。

酒蔵エリアだけでなく、隣接した市町も含めて盛り上がることができるのは、行政とのしっかりした連携があってこそ。「鹿島酒蔵ツーリズム」が、日本酒を軸にした地域の総合力で成り立っていることを感じました。

今年の開催は、3月24日(土)と25日(日)!

「鹿島酒蔵ツーリズム®」の方々

「鹿島酒蔵ツーリズム」を展開することで、さまざまな波及効果が生まれているそうです。鹿島市内には地元の酒を提供するお店が増え、鹿島の日本酒やその酒粕を活用したスイーツなどの新商品が続々と誕生しています。

光武会長からも、地元の方々に「鹿島=酒どころ」と改めて認識してもらえるようになったという話がありました。地元の方々が、さらに積極的に鹿島の日本酒を飲むようになったのだそう。その土地の酒をその土地の人々が誇りに思い守っていく。素敵なことですね。

今年で第7回となる「鹿島酒蔵ツーリズム」の開催は、3月24日(土)と25日(日)。鹿島の魅力を存分に体感できる2日間、今から待ち遠しいですね。

※「酒蔵ツーリズム」は佐賀県鹿島市の登録商標です。

◎「鹿島酒蔵ツーリズム 2018

  • 日程:2018年3月24日(土)、25日(日)
  • 時間:10:00~17:00
  • 「第4回 嬉野温泉酒蔵まつり」も同時開催

◎問い合わせ先

  • 一般社団法人 鹿島市観光協会
  • TEL:0954-60-5145
  • 鹿島市商工観光課
  • TEL:0954-63-3412

(文/稲田夕佳)

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