国内屈指の渓谷美を誇る西沢渓谷をはじめ、豊かな自然に囲まれた山梨県山梨市。ぶどうや桃などのフルーツだけでなく、市内に点在する温泉を求めて多くの人が集まる、人気の観光地です。
そんな山梨市に、唯一残っている酒蔵「養老酒造」。県内でもっとも小さい酒蔵としても知られています。今回は、養老酒造が営む「蔵元ごはん&カフェ 酒蔵 櫂(かい)」を訪れました。
築200年の古民家を改装した店内
「酒蔵 櫂」がオープンしたのは18年前のこと。日本酒の消費量が落ち込み、厳しい経営が続いていたなか「苦しい今だからこそ!」という思いでこのお店を立ち上げたのだそう。
築200年の古民家を利用しているため、店内には趣がありました。1階はお酒の販売コーナーで、カフェは2階。もともと資材置き場として使われていた2階は広く、落ち着きのある大人の空間になっています。
お店を切り盛りするのは蔵元の奥様、窪田尚子さん。オープン当初は、このお店のお客さんだったというのですから驚きです。
当時は夜のみの営業で、メニューも今とは異なっていたのだとか。8年前から尚子さんがランチとカフェを担当し始めたことをきっかけに、養老酒造のお酒を使った料理のお店として注目されました。
ひと手間加えた料理の数々に舌鼓
一番の人気メニューは「蔵元ごはんセット(1,750円・税込)」です。
ひと夏寝かせた酒粕で作る鮭の粕漬けと、箸で切れるほど柔らかく煮込んだ豚の角煮。根菜をふんだんに使った粕汁に雑穀ごはんが揃った定食メニューです。
ひと夏寝かせた酒粕。
根強い人気を誇る、鮭の粕漬け。
セットに付くデザートは、養老酒造の「櫂」を使い、香り高くさっぱりとした味わいに仕上げた酒のアイスです。
こちらは平日限定の「こだわりきまぐれランチ(1,500円・税込)」。柔らかいローストビーフに、日本酒を使ったバターソースがよく合います。
夏に食べておきたいのは、9月までの限定メニュー「水ゼリー(400円・税込)」。養老酒造で仕込み水として使われている笛吹川の伏流水を使った一品です。フレッシュでみずみずしく、男性にもおすすめだそう。
生原酒にこだわる酒造り
いよいよ、お待ちかねの日本酒。一番人気のある「利き酒セット(500円・税込)」を注文しました。
養老酒造は生原酒に力を入れているため、5種類のうち3つが生原酒。しっかりとした味の生原酒は、冷やして飲むのがおすすめだそう。
人気のある「櫂」は、ひと回り大きいおちょこで提供されるのもうれしいですね。5種類のお酒を前に、どれからいただこうかとついつい笑顔がこぼれてしまいます。
「櫂」は辛口で力強い味わいが特徴。しかし「これが一番飲みやすい」と言われることも少なくないのだとか。
名入れのおちょこは売店で購入することもできますよ。
「地元のみなさんが集まれる場所にしたい」
最後に「このお店が目指していることは何ですか?」と尋ねてみました。
「地元のみなさんに愛される場所でありたいです。地域のお祭りや行事にも積極的に参加し、みなさんといっしょに地元を盛り上げていきたいですね。ゆくゆくはこの地域が活気にあふれ、多くの人たちでにぎわいをみせる憩いの場になってほしいと願っています」
山梨県で一番小さな酒蔵が営む、地元に根ざした「蔵元ごはん&カフェ 酒蔵 櫂」は、魅力がたっぷりと詰まったお店でした。
◎店舗情報
- 住所:山梨県山梨市北567
- 電話:0553-22-4047
- 営業時間:ランチ・カフェ 11:30~16:00、ディナー 18:00~22:00(要予約・コース料理)
- 定休日:月曜日(祝日の場合翌日定休)
(文/堀内麻美)