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酒蔵に行くなら春がおすすめ! 現役蔵人が教える、酒蔵見学をトコトン楽しむポイント

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酒蔵見学、行ったことありますか?

私は学生時代、酒蔵を訪れては、お酒に関するいろいろを学び、楽しんでいました。今は仕事や旅行で、多い年では10蔵ほど回ります。

酒蔵見学に行くならば、春がおすすめです。

冬は仕込みが忙しく、蔵人も少しピリピリしているかもしれません。ただし実際の仕込み作業が見たいならば、冬にしか稼働していない蔵もあるため、行ってみるのもアリでしょう。

一方で、夏は酒造りを行っていない蔵も多く、せいぜい火入れをしたお酒が貯蔵してあるくらいです。季節雇用の蔵人もいないので、瓶詰めや出荷の様子が見られる程度でしょう。

その点、春は造りが終盤、もしくは終わったばかりで、作業をしている人も多くいます。甑倒しの後でも、醪はまだ残っていることが多く、搾りの作業が残っている場合も。

蔵に来たら、搾りたてを飲みたいものですよね。つまり、狙う季節は春なのです。本当の "搾りたて" が楽しめるかもしれませんよ。

まずは蔵見学の可否をチェック!

酒蔵は大小さまざま。広く一般に公開している酒蔵は決して多くありません。

まずは酒蔵のホームページを確認しましょう。見当たらない場合は、各県の酒造組合のページをチェック。県内の蔵が紹介されている中に、見学の可否や営業時間が書いてあったりします。また、酒造組合が関わるさまざまなイベント情報も入手できますよ。

土日休・要予約の酒蔵もあるので、電話やメールなどで日程を相談しましょう。蔵で白衣や長靴などを用意する都合もあるので、人数などの細かい情報も伝えてもらえるとスムーズです。

蔵に入ると、たいていの場合は靴を履き替えます。長靴やスリッパを用意してもらったり、あるいはシューズカバーの着用を求められたり。髪の毛などの落下に注意するため、白衣と帽子を配られることもあります。指示に従って着用しましょう。あとはしっかり手を洗って、アルコール殺菌。いざ、蔵の中へ!

きれいな見学通路のある酒蔵、台車がひっきりなしに通る酒蔵、文化財級の歴史を誇る酒蔵、ピカピカな壁の酒蔵。さまざまな賞状が展示されていたり、美術館が併設してあったり、蔵人への指示が書いてあったり、有名人のサインがあったり、地域伝統のこけしがあったり、ひとことに"酒蔵"といっても、その様相は蔵ごとに千差万別!

蔵人がついてくれる場合「ここは創業何年で...この蔵はかつて...」と説明が始まるでしょう。創業が江戸時代という蔵もたくさんあるので、一般的な会社に比べると驚きかもしれません。「今年で創業150年くらいですね」と、さらっと言われることも多々あると思いますよ。

忙しい時間でなければ、蔵人は掃除をしたり、試桶やホースを持ってブラブラしたりしています。蔵によっては写真撮影もOKなので、許可を取った上で、作業の様子も撮ってみましょう。

企業スパイになった気分で、どんどん質問しよう!

さて、案内してくれるのはどんな人でしょうか。

杜氏、蔵人、技術者、事務の方、営業の方...もしくは社長かもしれません。ラベルやホームページだけではわからないこともきっちり説明してくれるうえ、答えられる範囲であれば、きっとどんな質問にも答えてくれますよ。ぜひ、ガンガン質問してください。

冗談交じりで解説してくれる気さくな人もいれば、口下手な職人もいます。それでも、お酒に対する情熱は確かなもの。しっかり耳を傾けると、おもしろい話がたくさん聞けますよ。

さて、どんな質問がおもしろいでしょう?いくつか例をあげてみます。

「今年の米はどうでした?」

酒蔵は原料である米をとても大事にしています。品種も産地もいろいろ。目指す酒質に合わせて、きっちり栽培管理された米を使うこともあります。酒造りに向いている米は山田錦だけではないんですよ。私の蔵では、ざっと数えて13種類の米を使っています。品種が同じでも造りたいお酒に合わせて、産地や精米歩合を変えるので、使い分けがたいへんですね。

しかも、米の出来は収穫年によって大きく異なることも。栽培中の降雨量や平均気温が変化すると、米自体の硬さも変化し、これが酒造りに大きな影響を与えます。酒造りを担う蔵人はかなり気にしているはずですよ。

「水は硬いですか?」

酒蔵は水が豊かで美味しい地域にあることが多いようです。かつては水車の力を使って精米をしていたり、酒や米の運搬を水運に頼っていたりしました。現代でも仕込みや洗米、洗い物などの工程で水を大量に使うので、水は米と同じくらいに重要です。水質を決める硬度や地層についても、蔵の人はきっと把握しているはずでしょう。より良い水を求めて、遠方から採水しているところもあるくらいです。可能であれば、飲ませてもらえるかもしれません。

「麹に触っていたら、手がきれいになるんですか?」

日本酒の成分を配合した化粧品が増えてきたせいか、最近よく聞かれることです。実際のところはどうなのでしょう?ぜひ、麹室の現場で働いている人や杜氏さんに聞いてみてください。

他にも、「米は県内産がメインですか?」「玄関の杉玉は誰が作っているんですか?」「酒粕はいっぱい出ますか?」「夏は何しているんですか?」「本当に納豆を食べないんですか?」など、せっかく酒蔵に来たんですから、普段は聞けないことをどんどん質問してみましょう!ラベルやホームページだけではわからないことがたくさんありますよ。

石、俵...よく使われる単位を覚えておこう!

蔵人に酒造りの説明をしてもらってもいまいちわからない、実感が湧かないこともたくさん出てくるでしょう。そんなときのために、基本的な用語を頭に入れておくと、説明がよりわかりやすくなるかもしれません。

「石(こく)」という単位をよく耳にしますね。1石は、約180リットル。つまり、一升瓶で100本、一斗缶で10個の量。「今年は3000石造っています」となると、「ほう、つまり一升瓶30万本ですね」となるわけです。

一般家庭の風呂にお湯をいっぱい入れて、およそ180リットルくらいと言われています。ですので「3000石造っています」と言われたら「うちの風呂3000杯分か」と考えるといいかもしれません。これなら実感が湧きますよね。

ちなみに、この3000石は重さに換算すると540キロリットル。なんと25mプールの水量と同じくらいなんです!3000石のイメージが湧いてきましたか?

「俵(ひょう)」は米の単位。1俵が60キロですね。昔は男女問わず担げる重さだったとか。現代人にとってはどうでしょうか。

日本人の年間平均米消費量は1俵を下回っているという話も聞きました。紙の米袋はおよそ30キロですから、それが2個分。みなさんは年間どれくらいの米を食べているでしょうか?

仕込みのサイズはトンやキロで表す場合がほとんどです。「1500キロ仕込みですよ」と説明されたら、紙の米袋50個分、25俵の白米を使っているということですね。"白米"は精米後の米を指すので、玄米に換算すると、その数字に精米歩合をかけたものになります。1500キロ仕込みで精米歩合50%とすると、玄米換算で3トンの米を使っているという計算です。

さらに、これが田んぼ何枚からとれるのかな?と深めていくと、田んぼ1枚(1反歩=10a)から、およそ9俵の米が収穫できると考えて、区画整理された田んぼで約5.5枚分。なんと1660坪!ちなみに、ここから造られるお酒は、原酒の一升瓶換算で1800本くらいでしょう。

蔵見学で気を付けること。納豆は厳禁!

蔵の内部にはかなり危険な場所もあります。仕込み作業中はホースが床に伸びていたり、水で濡れていたりするところもあるので、気を付けましょう。天井や梁が低いところもあるかもしれません。

タンクから良い香りがしますが、覗き込みすぎると二酸化炭素でむせたり、モノを落としたり、最悪の場合は自分が落ちたりしますので要注意。

あと、できたら当日の朝は納豆を食べて来ないでくださいね。強制ではありませんが、実際、見学者からと思われる納豆菌汚染もあったと耳にしたことがあります。

お土産も忘れずに!

蔵見学終了後には"きき酒"ができる蔵もあります。

その日搾ったばかりのお酒や、蔵限定のお酒、出品用のお酒を提供してくれる場合もあるので、飲みすぎない程度に楽しんでください。ドライバーや未成年の方は飲めませんが、蔵によってはノンアルコールの甘酒を用意してくれるところもありますよ。

お酒の他、酒粕や蔵の周辺で収穫した野菜・米を売っているところもあります。最近では、大きな物販コーナーが併設されていたり、カフェがあったり、見学者向けの設備に力を入れている蔵も増えてきました。

蔵によっては、酒販店よりもお酒が安く買えることもあります。また蔵に販売所がないときは、近所の小売店を紹介してもらえるはずです。そこに行けばその酒蔵のお酒が並んでいるでしょう。「さっき蔵見学行ってきたんですよ」なんて話をしてみると、店主さんも何かオススメを持ってきてくれるはずです。

すっかり春めいてきました。ちょっとした旅行のつもりで、酒蔵見学に行ってみませんか?

(文/リンゴの魔術師)

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リンゴの魔術師

札幌生まれ、弘前大学人文学部に入学するも農学生命科学部を卒業。今は秋田で杜氏を目指し修行中。夏は技師、冬は麹室助手をやっています。造りを通して見た日本酒というものを書いてゆきたいと思います。お酒って、飲んでも考えてもおもしろいですよね。趣味はお絵かき、リンゴ彫刻、鉄道、雑魚釣り、花いじり、猫いじりなどなど。