全量を生酛造り・蔵から採取された協会6号酵母を使用

新政酒造は2015醸造年度(27BY)から全量を天然の乳酸菌を取り入れる「生酛造り」を採用し、酵母はすべて昭和5年(1930年)に同蔵から採取された「協会6号酵母」を使用しています。また、一升瓶を廃止し、全商品すべてが4合瓶の瓶詰めとなっています。

貴醸酒は、一般的になじみがなく、値段もそれなりにしますが、本商品は貴醸酒の中でも比較的手に入りやすいはずです。

酒を酒で仕込む、贅沢な貴醸酒

まず、貴醸酒とは何かを説明しておきます。日本酒の仕込みは「三段仕込み」が基本であることは日本酒好きな方ならご存知かもしれません。日本酒は酒米・水を合わせて発酵した「醪」を搾ることにより造られます。この醪を作る段階で麹米と蒸米を複数回に分けて加えていく作業は、順に初添え(はつぞえ)、仲添え(なかぞえ)、留添え(とめぞえ)と言われています。最後の留添えは通常、蒸米、麹米、仕込み水を加えますが、貴醸酒はこの留添えで、仕込み水の代わりに日本酒を加えて造られるお酒です。

仕込み水ではなく、アルコール成分のある日本酒を投入するので、糖を分解する前にアルコール度数が高くなり、酵母の働きが弱くなり発酵力が弱まります。そのため糖化の働きが発酵より強くなり、とろりとした甘口の酒が仕上がります。

実は日本酒業界が貴醸酒を誕生させたのは1973年(昭和48年)と歴史は浅いほうです。その翌年、いち早く商品化したのは「華鳩」で知られている広島県の榎酒造でした。しかし、日本酒で酒を仕込む醸造法は平安時代の古典「延喜式(927年)」に記されている造りと同じものだそうで、日本酒の歴史を紡ぎ続けた先人の知恵は素晴らしいものがあります。

ほかの貴醸酒とは一線を画す新政らしい味わい

さて、新政の「陽乃鳥(ひのとり)」です。通常、貴醸酒はかなり熟成させてから出荷されます。20年以上熟成され、紹興酒のような飴色のものもありますが、新政の貴醸酒は、大体1年弱の熟成で出荷されるため、ほかの貴醸酒とは一線を画した味わいです。

今季の陽乃鳥はボトルの裏ラベルに記載されている通り、貴醸酒としては異例の切れ味を感じました。貴醸酒らしい濃醇な甘味も感じるのですが、フルーティーな酸、そして適度なフレッシュさすら感じます。トロピカルフルーツのような印象ながら、新政らしさも残した貴醸酒であり、幅広い層に好まれるタイプでしょう。

やはり、食前、食後酒という呑み方となると思いますが、チョコレートにも合いますし、ベリー系の甘酸っぱいスイーツやフルーツにも合います。北海道のロイズのチョコレートチップスと合わせたところ、非常に良い相性でした。新政らしい、お洒落なボトルと相まって、パーティー酒としてクリスマスやお正月などにも最適です。

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