日本酒を世界に広めようと活動しているベンチャー酒蔵「WAKAZE」。彼らの提案する「FONIA(フォニア)」シリーズが、2018年5月に発売されました。今回は、同シリーズが掲げているビジョンと、その楽しみ方を紹介します。

世界展開を見据えた「ボタニカルSAKE」

醸造所兼バー「Whim Sake & Tapas」

まったく新しいコンセプトで日本酒を開発・販売している株式会社WAKAZEは2018年7月、同社が製造するお酒と、本社を構える山形県のこだわりある野菜を使ったタパス料理を楽しめる、バーを併設した醸造所「Whim Sake&Tapas」を三軒茶屋にオープンしました。

ワインやクラフトビールについては、日本国内でも、起業家たちがワイナリーやブルワリーを設立する事例が見られるようになってきましたが、日本酒の醸造所は法律上の制約などもあってか、まだまだ身近な位置付けではありません。

WAKAZEが運営する醸造所では、酒税法上の「清酒」を造ることはできませんが、伝統的な日本酒の製法をベースに、柚子や山椒、生姜をはじめとした和の柑橘・ハーブを加えた「ボタニカルSAKE」を造り、併設するバーでの提供や販売を始めています。

将来的には、全世界に向けて、日本酒の美味しさや素晴らしさを伝えていくビジョンを掲げています。

醸造所兼バー「Whim Sake & Tapas」での製麹の様子

海外で日本酒の醸造所を展開する際、日本と同じように原料が手に入るとは限りません。もし入手できたとしても、現地の水や気候など、発酵を取り巻く環境が異なるのは当然のことです。

しかし、適切な副原料を選定し、その配合を見極めることで、現地にフィットする味わいを作り出すことができます。

「FONIA」シリーズの開発では、数多くの副原料を試みたそうですが、最終的に残ったのは和の柑橘・ハーブでした。日本文化のなかで古くから親しまれてきたものが、日本で造られたものと良い相性を示すというのは、当然の結果かもしれません。

海外で醸造をする場合にも、同じことが想定されます。ただ単純に日本のやり方を模倣するのではなく、その地に根付いた柑橘やハーブを使い、現地の舌に合わせてカスタマイズされたお酒のほうが、より広く深く受け入れられることでしょう。

ワインやビールと同じように、日本酒が世界各地で受け入れられてほしい。「FONIA」シリーズには、そんな願いが込められています。

「FONIA」シリーズの味わいとは?

ボタニカルSAKE「WAKAZE FONIA」シリーズ

発酵が進んでいく途中で、山椒や柚子、生姜などのボタニカル原料を加えた「FONIA」シリーズを実際にテイスティングしてみました。

白いボトルの「WAKAZE FONIA SORRA(ソラ)」

白いボトルの「SORRA(ソラ)」は、柚子とレモンを加えたお酒です。また、一般的な日本酒に使われる黄麹ではなく、クエン酸を多く生成する白麹を使っています。

乳酸飲料のような甘い香りのほか、金木犀のような華やかな香りも感じられました。口に含むと、柑橘系の酸味とその皮を思わせる苦味をしっかりと感じます。全体的にとてもシンプルな味わいで、料理にさりげなく添えられる柑橘のようなお酒です。

白いボトルの「WAKAZE FONIA SORRA(ソラ)」

「SORRA」の別バージョンとして、きれいなピンク色をしたスパークリングタイプもあります。

通常のタイプよりもフルーティーな吟醸香が際立ち、グレープフルーツのような印象でした。炭酸の刺激が強く、搾りたてのレモン果汁を思わせる、爽やかでスッキリとした味わいです。

グリーンのボトルの「WAKAZE FONIA TERRA」

グリーンのラベル「TERRA(テラ)」は、生姜と山椒の香りを効かせた一本。自然に存在する微生物の力を使う伝統製法「水酛」で醸されています。

メープルシロップのような香ばしさに、生姜や山椒のハーヴィーな香りが相まって、ゆっくり香るとジンジャーエールのような印象です。味わいは、しっかりとした甘味とハーヴィーな香りが合わさって、はちみつのよう。しかし、後口は意外にもスッキリとしています。

「FONIA」と合わせる、家庭的な料理

強い個性をもった「FONIA」シリーズには、どんな料理が合うのでしょうか。

六本木「久高」の外観

野菜を中心とした家庭的なおばんざいと、日本酒・焼酎をはじめとした和酒を楽しめる、六本木「久高」を訪れました。ここでは「FONIA」はもちろん、WAKAZEの全ラインナップを味わうことができます。

「SORRA」には「小アジとなす揚げ梅肉和え」

「SORRA」には「小アジとなす揚げ梅肉和え」を合わせました。

料理には、梅肉のほか、和のハーブであるミョウガがたっぷりと入っています。軽く素揚げしたナスやピーマン、そして青魚の苦味を、お酒がもつ柑橘系の香りが中和し、甘味と旨味を引き出していました。柑橘の果汁や皮と青魚を合わせるのは、和食で多く見られるペアリング。「SORRA」は、和食の魚料理で大きな力を発揮しそうです。

「TERRA」と「根菜の牛すじ煮込み」

「TERRA」には、和食の定番とも言える「根菜の牛すじ煮込み」を。

みりんや砂糖で甘辛く煮付けられた根菜には、牛すじの脂のコクがしっかりと染み込んでいるため、お酒の甘味がほどよい加減になりました。いっしょに食べると、お酒の香りと相まって、スッキリとした印象に。「TERRA」は甘辛く味付けされた和食との相性が良さそうです。

特徴的な味わいをもつ「FONIA」シリーズ、みなさんはどんな料理を合わせてみますか?

(文/山本清子)

◎取材協力

  • 久高
  • 住所:東京都港区六本木6-8-29
  • 電話:03-3408-5066

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