無濾過生原酒の“スッピン”で勝負

明治10年(1877年)、岩国藩の御用商人だった八百屋甚兵衛の養子・八百屋新三郎が分家独立し、八百新酒造を創業しました。当時は清酒と醤油を醸造しており、新三郎氏と妻の名前「キク」から命名された「新菊」が主要銘柄でした。昭和25年に八百新商店として株式会社化します。昭和61年(1986年)に地元を中心とするブランド「錦乃誉」が誕生します。

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現在全国的な人気となったブランド「雁木」が生まれたのは平成12年(2000年)。現蔵元五代目の小林久茂氏が蔵元杜氏に就任してからです。前任の原田杜氏の下でノウハウを築き上げていた五代目は、雁木はシンプルに、「純米酒・無濾過」をコンセプトにしました。醸造アルコールを使わずに米という素材の味をそのまま引き出すこと。活性炭素濾過をせずとも、搾りあがった清酒が二次加工を必要としない完成度にあることをモットーにしています。

まさに何も加工しないスッピンの酒で、初年度はタンク1本のみの醸造でした。一升瓶換算で600本という小仕込みから始まった雁木ですが、特約店限定ながら少しずつ人気を高め、現在、蔵の生産のほとんどが「雁木」を占めるほどになっています。今や東洋美人などと並び、山口を代表する銘柄のひとつと言えるでしょう。

火入れ酒で『雁木』の新しい定番に

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「雁木 純米ひとつ火」は、山口県産の山田錦を60%まで磨いている純米酒。雁木といえば、「槽出あらばしり」など、インパクトのある無濾過生原酒が代表的な一品です。対して「ひとつ火」は、生原酒を加水してアルコール度数を下げて呑みやすくし、瓶詰め後に火入れして酒質を安定させた生貯蔵酒です。生原酒に続く、雁木の定番として通年商品となり人気上昇中です。

香りは穏やかな穀物香。口にふくむと、雁木の特徴である凝縮された米の旨みや味わい、コクが口いっぱいに広がりますが、生原酒と比べると口の中では暴れ回らずに非常に柔らかな口当たりです。最後までフルボディの太い味わいを保ったまま、後口は余韻を残しながらスッと消えていきます。生原酒と比べやさしい味わいなので、呑み飽きもしないでしょう。

ぬる燗にするとバランスが良くなり、蒸かした米のような含み香と旨みがより膨らみ、真価を発揮する印象です。熟成させても面白そうです。ハードタイプのチーズや肉料理、脂っこいおつまみと相性が良いでしょう。

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