「おいしいお酒は加茂錦」で知られる老舗蔵

加茂錦酒造は明治26年(1893年)に創業した老舗蔵。新潟県中北部の「越後の小京都」と呼ばれる加茂市に蔵を構えます。銘柄も「加茂錦」で、加茂市を中心に下越エリアで県民に親しまれているお酒です。小規模な蔵ながら、昭和中期には新潟県の有名蔵のひとつに数えられるまでになりました。「おいしいお酒は加茂錦」という昔ながらの看板が、今も新潟市内などで散見されるようです。同蔵の酒質は、新潟酒として一般的な淡麗辛口とは一線を画す旨口酒。そのため、淡麗辛口酒が大人気となった昭和後期の地酒ブーム期には、低迷した時期もあったようです。

2000年代に入り、大きな転換を試みました。平成20年(2008年)には、製造部門を加茂市の隣にある新潟市秋葉区に移転し、若き蔵人が集り新たな酒造りがスタートしました。創業からの「加茂錦」のロゴマークも、デザイナーに頼み、モダンなマークに一新しました。モットーは「伝統的な酒造りを踏まえながら、いまの食卓やに合う日本酒を醸す」とのこと。伝統と革新を進める酒造りにまい進しています。

彗星のごとく業界に現れた「荷札酒」

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今回紹介する「荷札酒」は、2015酒造年度(27BY)から首都圏や関西など大都市圏に突如として登場しました。24歳の若き蔵元後継者・田中悠一氏が蔵に戻り、伝統の「加茂錦」ブランドとは別に、「荷札酒」を責任醸造しました。荷札酒はすべて、純米大吟醸酒の生酒や生詰め酒。酒米が同じで酵母違い、スペックが同じながらタンク違い、米違いの酒など、さまざまなバージョンを時期を変えて販売しています。郵便物などに付箋する荷札を張り付けるユニークなデザインも印象的で、少ないながら関東や関西の有力酒販店が続々と取り扱いを始めています。

若き蔵元後継者が醸すハイレベルな純米大吟醸酒

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今回呑んだのは荷札酒のベーシックタイプのバージョン3。通常の原料米は山田錦と五百万石なのですが、バージョン3は麹米を山田錦掛米は雄町を使用し、50%まで精米しています。

香りは穏やかなフルーツ香。口に含むと、新潟酒らしいスッキリした爽やかさを感じながらも、山田錦のふくらみ、そして雄町のポッチャリした旨みも感じますが、適度な酸味が、味を出し過ぎずにバランスよく引き締めてくれ、切れ味も上々です。それでも新潟酒としては太いボディを感じるお酒で、越後の海の幸から、洋食まで幅広いおつまみや食事に合いそうです。現在でもハイレベルな酒質ですが、若き蔵元が今後どのようなお酒を生み出していくのか、将来がとても楽しみな蔵と言えるでしょう。

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