コシヒカリの産地・南魚沼の老舗蔵
「高千代」の醸造元である高千代酒造は、幕末から明治への転換期となる明治元(1868)年に創業。新潟県南部の魚沼盆地に位置し、日本百名山のひとつである巻機山(まきはたやま)の麓に蔵があります。魚沼は新潟県有数の豪雪地帯であり、コシヒカリの産地としても有名ですね。
仕込み水は巻機山から湧き出る名水を使用。超軟水がゆえに、とても柔らかいお酒ができあがるそう。老舗蔵ながら、大量生産には手を付けず、昔ながらの手作業による吟醸造りを行ってきました。主要銘柄は「高千代」や「巻機」などです。
新潟の酒造好適米「一本〆」の原々種を県から移譲
高千代酒造が特にこだわっているのは米。おもに、新潟県が開発した「一本〆」で酒造りを行なってきました。「一本〆」は五百万石を母、豊盃を父に持つ、平成5(1993)年に誕生した酒造好適米。同酒造は平成17(2005)年にこの「一本〆」の原々種を新潟県から移譲されました。
蔵元のホームページでは、「一本〆」の特徴を「玄米の形は中、玄米の大小及び粒重は『五百万石』並の大である。心白の発現は良好で剛度は低く、搗精(とうせい)しやすい。精白米の吸収性、消化性、精米係数は『五百万石』並に優れる」と紹介しています。また、米の風合いが残りやすく、純米造りに向いているとのこと。
同酒造では自社田栽培や契約栽培の「一本〆」しか使っていません。さらに、平成21年には扁平精米が可能な自家精米機を導入。
この米を使い続けた高千代酒造は、平成21, 22酒造年度に「一本〆」では初となる全国新酒鑑評会金賞を2年連続で受賞しました。酒造りに関するすべての工程へ情熱を注いだ結果でしょう。
淡麗辛口の新潟酒と一線を画すシリーズ
「豊醇無盡(ほうじゅんむじん) たかちよ」シリーズは、「一本〆」の旨味を生かして、淡麗辛口の印象が残る新潟酒とは真逆の限りなく豊かな味わいを目指しています。3年前から特約店限定で全国へ発信してきました。
この青ラベルは、おりがらみ生原酒を1回火入れしたもの。おりがらみをそのまま火入れする画期的な手法で、個性的な味わいを引き出しました。香りはグレープフルーツを思わせる柑橘系のフルーティーさがあります。やや辛みを感じたあとに、豊かな旨み、ふくよかな丸みも感じました。
新潟酒としてはたしかにしっかりとした味わい。おりの甘味がバランスを良くしています。後口はおりがらみにしてはスッと消えていき、スムーズな切れ味。寒ブリの刺身やブリ大根の炊き合わせ、ニシン漬け、いぶりがっこなどの漬物系にも合うでしょう。もつ鍋や味噌系の鍋物にも良さそうですね。やや白濁したおりがらみの色が綺麗なので、透明なグラスで飲むと雰囲気も出るでしょう。