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オーストラリアで看板娘が奮闘中!日本酒特化で勝負をかける「ライオン・オリエンタル・フーズ」の挑戦

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日本からの旅行先としても人気のオーストラリアは、多文化主義国家として知られており、さまざまな国の人たちが移住し暮らしています。そんな背景が影響してか、街中にはインド料理やタイ料理、ギリシャ料理など、たくさんの国の料理店が立ち並び、「オーストラリア料理といえば?」と地元の人に尋ねると「多様な国の料理を組み合わせたフュージョン料理」という答えが返ってくるほど。

日本料理もその例にもれず、オーストラリアの各都市で大人気。お寿司やラーメンはもちろん、焼き鳥などの居酒屋料理、定食など、日本の味そのものからオーストラリア風にアレンジされたものまで、幅広く展開されています。

そして、それらと共に日本酒人気も年々上昇。2016年の日本酒輸出額で、オーストラリアは第8位となっています。

日本酒をオーストラリアで広めるために、現地ではどのような工夫がされているのでしょうか。

オーストラリアでも屈指の商品点数を誇るアジア食料品店「ライオン・オリエンタル・フーズ」のマネージャー、サンドラさんに、どのような点を考慮してオーストラリアで日本酒を販売しているのか、お話をうかがいました。

品揃えは最大級!30蔵以上の日本酒を販売するアジア食料品店

ライオン・オリエンタル・フーズが店を構えるのは、オーストラリア西海岸の町・パース。パースは「世界で一番美しい街」と称されており、ビルが立ち並ぶ都会の中に広大な敷地の公園があり、自然豊かでとても住みやすそう。

東海岸の大都市であるシドニーやメルボルン、隣の州都であるアデレードへ行くにも飛行機で3~4時間もかかるほど他の主要都市からは離れていますが、周囲にはインド洋の美しい白浜の海岸など、観光スポットが充実しています。

そんなパースの交通拠点・パース駅から徒歩で15分ほどの場所に、アジア食料品店「ライオン・オリエンタル・フーズ」はあります。

2000年にパースで初めて日本食料品を扱うお店としてサンドラさんのご両親がオープン。今では日本食と日本酒に関する月刊誌「パース・エキスプレス」という情報誌も発行し、日本料理レシピなどの情報提供も行っています。

アジア食料品店として抜きん出るために選択した「日本酒特化」

もともとは食料品のみを取り扱っていたというライオン・オリエンタル・フーズ。他のアジア食料品店との差別化を図るために日本酒の取り扱いを始めた、とサンドラさんは話します。

「日本酒は、ビールやワインなどオーストラリアでよく飲まれているアルコール飲料とは、その味わいや飲み方、文化的背景までがまったく異なります。オーストラリア人にとって日本酒はまだ新しく珍しい存在で、今後の伸びに大きなポテンシャルを感じたんです。

周囲のアジア食料品店よりもたくさんの日本酒をそろえ、おもしろい、飲んでみたい、と思ってもらえるような情報も一緒に提供する。そうすることでお客様が当店に足を運んでくれるのでは、と考え日本酒の取り扱いに力を入れ始めました」

サンドラさん自身は、もともと日本酒は好きではなかったそう。"好きだから"ではなく、オーストラリアでの日本酒の広まりに"可能性"を感じてビジネスを開始されたのですね。

成功への工夫

販促提案や企画立案を得意とするサンドラさん。来店されるお客様に日本酒を手にとってもらえるよう、さまざまな工夫をしています。その一部をご紹介しましょう。

購入しないお客様にも心地よい空間を提供

サンドラさんは、お客様が店内を見てまわっている様子を注意深く観察した後、どんな点に興味を持っているかを想像しながら話しかけるそうです。

「まだ日本酒のことを詳しく知らない人が多いオーストラリア。お客様ひとりひとりの興味・関心に寄り添いながら、日本酒について『知ってもらう』ことが、より美味しく飲んでもらうために大切だと考えています。

飲む温度やどんな食事に合うかといった、その商品を楽しむための情報だけではなく、精米歩合や特定名称酒の違いなど、日本酒の知識についても興味を持たれるお客様は多いです」

サンドラさんは、「お酒が売れなくてもいい」とすら思っているそうです。その日は購入に至らなくても、自身の興味に即した情報が得られ、心地よい空間だったのなら必ずまた来店してくれる。そうやってライオン・オリエンタル・フーズは日本酒の売上を伸ばし、知名度を高めてきたのだそう。

さらに、接客が終わるとお客様にフィードバックを貰っているとのこと。日本酒の品揃えや説明はどうだったか、リラックスできたか、改善すべき点はないか。それらを次の機会に活かすことで、サンドラさん自身もお店も成長してきたのですね。

オーストラリアでは、店員と顧客の距離が近く、飲食店や衣料品店に足を踏み入れると自然と店員との間に会話が発生します。その雰囲気がお客様にとっていかに心地よく、来店したこと自体が良い経験になったかどうかでお店も評価されます。

リピーターが多いというライオン・オリエンタル・フーズでは、「お客様の気持ちを理解し、日本酒を好きになってもらえるような経験を提供したい」というサンドラさんの想いが、しっかりとお客様に伝わっているのですね。

お客様の好みにあわせたお酒の提案

もともと味覚にあまり自信がなかったというサンドラさん。お店に立つようになった当初は、自身での試飲はせずにお客様に商品を紹介していたのだそう。しかしある日、「このお酒はワインに似ていますね」とお客様から同意を求められ、まったく返答することができなかったのだとか。

「それまでは、仕入れ元から提供されたテイスティングノートをもとに商品を紹介していました。しかし、ノートにはワインとの比較がまったく書かれていなかったんです。オーストラリアではワインが人気です。ワインと比較したり、オーストラリア人がイメージできる味の提案を自らしなければ、と気づきました」

テイスティングスキルを身につけようと決意したサンドラさんは、独学で学び始めます。

たくさんの酒を試飲していく中で、味覚は人それぞれなのだと気づいたサンドラさん。なぜこの人は美味しいと思い、別の人は美味しくないと思うのか。周囲の人間にも一緒に試飲してもらい、味覚の違いを突き詰めて分析していくことで、自分と他人が感じる味覚の違いの差を覚えていったのだそうです。

今では、2~3本のお酒を試飲したお客様の感想や表情から、好みに合った酒を提案できるようになったといいます。

ライオン・オリエンタル・フーズで日本酒を手にしたお客様の笑顔から、その満足度の高さがうかがえますね。

テイスティングイベントで得るお客様の本音

ライオン・オリエンタル・フーズでは、お客様からの要望を受け、日本酒のテイスティングイベントをこれまでに4回開催したそうです。

「『一品』の吉久保酒造、『澤姫』の井上清吉商店といった酒蔵や、はせがわ酒店との共同で開催しました。蔵元が前に立って酒の説明をし、私はお客様の横に立ち、彼らの感想を聞きながらフォローしました。

『これはこんな酒だ、こういう味だ』と提供する側から案内するだけでなく、まず先にお客様が感じていることを横で寄り添って聞くことで、素直な感想や知りたいと思っていることなど、お客様の本音を理解することができるのです」

各イベントには30人以上が参加。用意したお酒は全て完売したそうです。オーストラリア人は、試飲イベントでその味を気に入ると、気軽に酒を購入してくれるのだそう。以前からの日本酒ファンのみならず、通りがかりの参加者も多かったイベントは大盛況で、既に次の開催まで決まっているのだとか。

複数の蔵元と密にコミュニケーションを取り、パースの街に日本酒を広めているサンドラさん。次のイベントでも、日本酒を手にとったお客様の笑顔が楽しみですね。

日本酒を広める秘訣は「お客様を理解すること」

「日本に来ることが夢だった」と語るサンドラさん。今回の取材は、念願の日本初訪問の際に行いました。京都や大阪などオーストラリア人に人気の観光地はもちろん、日本の歴史や、新幹線、飲食店、街中の様子など、日本人が日々どういう生活をしているのかといったストーリーを知りたがるお客様に、自分の経験をもって伝えられるようになったのが嬉しい、と話していました。

「お客様がどう感じているかを想像し、知りたいことは何かを考え、お客様を理解すること。その上で、分かりやすく伝える」これが、ライオン・オリエンタル・フーズがパースの地元の方々に受け入れられている理由なのでしょう。

(取材・文/古川理恵)

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