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オーストラリア唯一の酒蔵サン・マサムネを訪問!──簡単には真似できない設備と知見でオーストラリアにSAKEを根付かせる

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グレートバリアリーフやエアーズロックなど、観光地としても人気のオーストラリア。実はこの国では、20年も前から清酒が造られています。主要都市のシドニーから車で約1時間。ペンリスという、世界遺産で有名なブルーマウンテンの麓に「豪酒 Go-Shu(ごうしゅ)」を醸すオーストラリア唯一の酒蔵サン・マサムネがあります。

代表取締役社長を務めるアラン・ノーブルさんに、オーストラリアで清酒を根付かせるための試みや、酒造りへの想いをおうかがいしました。

オーストラリアでの酒造りがはじまるまで

自然豊かな川沿いの遊歩道沿い。「リン、リン」と、ベルバードという鳥の珍しい鳴き声が聞こえています。ブルーマウンテンがつくり出す自然豊かな水のあるこの土地に、「豪酒 Go-Shu」という清酒の看板を掲げた酒蔵「サン・マサムネ」があります。

清酒の直売や酒蔵見学も行っているビジター・センターを併設しており、オーストラリア人はもちろん、日本からも見学に訪れる人が多いとのこと。ビデオで酒造りの行程をご説明いただいた後、アランさんに蔵の中を案内していただきました。

サン・マサムネは、1988年からの試験醸造を経て、1996年に一般発売を開始しました。2003年より代表取締役社長に就任したアランさんは、試験醸造の時から、アドバイザーとして蔵に関わってきました。

サン・マサムネでは、「白雪」を製造する1550年創業の老舗酒蔵・小西酒造(兵庫県)から技術提供を受け、今ではその酒造りの伝統手法をオーストラリア人を含む現地採用者だけで実現させています。

「ビジネスを継続させるには、素材、味、技術面、すべてにおいて、現地化が求められます。それは、清酒をオーストラリアに根付かせる、という意味もありますが、何よりも費用対効果を考えると必要不可欠なのです」と語るアランさん。造りの工程すべてを機械化し、オーストラリアの労働環境に合うよう工夫しているそうです。

容易には真似できないほどの投資・設備・経験

精米機を見せていただきました。

「導入費、維持費ともに莫大な投資が必要となるため、日本ですら導入している酒蔵は少ないと思います。実は2, 3日前から一部が故障してしまっていて、問題箇所の写真を日本のメーカーに送り、修理方法を教えてもらっているところです。これも、オーストラリアで醸造しているからこそ発生する苦労ですね」と、アランさんは惜しげもなく、蔵の設備や工夫、苦慮している点について話してくれました。

「他では容易に真似できないほど、オーストラリアでの酒造りには、投資と経験が必要です」と自信に満ちた表情で蔵の内部を案内してくれます。

製麹は酒造りにおいて最も重要な工程のひとつですが、これも機械化しています。日本では、時に夜を徹して作業が行われますが、ここではセッティングだけをしておけば、夜のうちに機械が働いてくれます。17時には終業するオーストラリア人の労働環境に合わせるために、機械化は必要不可欠だったのです。

自動圧搾機は、日本でもよく使われているヤブタ式を導入しています。醪を搾った後にできる酒粕は健康や肌にも良いといわれており、酒を搾った翌朝には、地元の主婦たちがこの酒粕を求めに訪れるそうです。

「砂糖の代わりとして料理に使ったり、チーズと合わせて食べてもおいしいと、お客様にレシピを教えていただきました」と、アランさんよりも酒粕の活用に詳しいオーストラリア人もいらっしゃるようでした。

ワインで有名なオーストラリア。貯蔵タンクは唯一のオーストラリア産で、品質の良いワイン用を使用しています。最大で500,000リットルを貯蔵することができ、市場動向を見ながら1年中醸造しているとのこと。他の機械はすべて日本から取り寄せ、ここで組み立てたそうです。

原料はすべてオーストラリア産!広大な土地を活かして米を栽培

水は、ブルーマウンテンの自然豊かな水源を使用しています。水質は軟水で、柔らかい味の酒に仕上がります。

原料米は、アマルーという品種の酒米を使用しており、蔵から車で5~6時間ほど離れた場所で造られているそうです。

しかし、水資源の少ない乾燥したオーストラリアの土地では、米づくりも容易ではありません。また、自然を大切にするオーストラリアでは、ダムや灌漑設備の建設はなかなか認められません。そこで、効率的に土地に栄養を与えるため、輪作を行っているそうです。

米を収穫した後は、冬穀物、豆類、家畜の4作を順にまわして生産し、同じ土地で米が作られるようになるには3~4年が必要になります。広大な土地があるからこそ可能なこのオーストラリアの作法は、持続可能で、品質管理・トレーサビリティーも重視している、世界に誇れる方法ですね。

オーストラリアと日本の酒は何が違う?

「オーストラリアのレストランで提供されている日本食が、オーストラリア人の口に合うよう改良されているように、酒もまったく同じではありません」とアランさんは言います。

人種や文化・風土・気候によって、それぞれ好まれる味は変わり、飲まれ方にまで違いがあるようです。

「オーストラリアでの清酒の楽しみ方は、大きく2タイプに分けられます。ひとつ、日本酒に造詣があり、強いこだわりを持って楽しむ方法。もう一方は、開栓してから2~3か月をかけて、少しずつ楽しむ方法。一般的には後者が主ですね。日本で造られる、特に大吟醸などの高級なお酒は、開栓後の品質変化が早く進みます。私たちの『Go-Shu』では、大吟醸や生原酒でも、お客様に長くお楽しみいただけるよう工夫しています」

大吟醸や生酒でも、開封後、長くゆっくり楽しめるとは驚きですね。

バーベキューにもぴったり。低アルコールの飲みやすいお酒

ビギナーの方には「Go-Shu・純米」をおすすめしているそうです。最初の飲み口は軽くフルーティーで、ほんの少しの苦みを感じた後、スッキリとした辛口が後味に残ります。どんな食事ともよく合いますが、特にバーベキューといっしょに楽しむのがおすすめだそう。日本を含め、アメリカ、ヨーロッパにも輸出しているとのこと。

「Go-shu・大吟醸」も日本酒初心者の方にピッタリです。通常は16%ほどが一般的なアルコール度数を13.5%にまで抑え、お酒をあまり飲まれたことのない方、苦手な方でも飲みやすく感じると思います。とても滑らかで爽やかな口当たりで、バランスの取れた深みも感じられるお酒です。

「Tunami」という食前酒としても最適なスパークリングカクテルも造っています。ライチやマスカットのような香りと爽やかな味で、アルコール度数は4%と軽く、飲みやすいお酒です。

「私たちは、すべてのオーストラリア人に、日常的に酒を楽しんでいただくことを目指して酒造りをしています。賞を目指したり、市場シェアを拡大することよりも、飲みやすくリーズナブルな酒をつくり、オーストラリア人に『毎日飲む酒』として楽しんでもらいたいです」と、アランさん。

夢の実現に向け、アランさんにはしっかりとした道筋が見えているように感じられました。地元に愛されている酒蔵「サン・マサムネ」。近年、日本酒の海外輸出量が伸びてきていますが、サン・マサムネ酒蔵の取り組みは、日本酒がグローバルに展開していくにあたって、ひとつのヒントになるのではないでしょうか。

(取材・文/古川理恵)

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