1月16日、フランス・パリの日本食品店「Workshop ISSE」で、楯の川酒造(山形県)とフランスのロックバンド「PHOENIX」がコラボして誕生した「楯野川 純米大吟醸 PHOENIX Limited Edition」の発表会が行われました。
思いをつなぐ、ファン待望の第2弾
今回のプロジェクトは、2017年6月に発売された「楯野川 純米大吟醸 PHOENIX」から続く第2弾。プロジェクトの発端は、パリでWorkshop ISSEを開き、日本食や日本酒を広める活動をしていた黒田利朗さんが、同年2月に亡くなったことでした。
PHOENIXのクリスチャン・マゼライさんが、Workshop ISSEのある建物に住んでいたことから始まった黒田さんとの親交。クリスチャンさんが、特に「楯野川」を愛飲していたことからコラボレーションが実現しました。第2弾の今回は、ANAが主催するクラウドファンディング「ANA WonderFLY」でプロジェクトを立ち上げ、11月から募集を開始。わずか1週間ほどで、目標金額を達成しました。
プロジェクトを主導したのは、元デザイナーで、現在は楯の川酒造のブランド担当を務める砥上将志さんと、PHOENIXのギタリスト・クリスチャンさん。お酒の味からラベル、商品全体のデザインなどについて意見を交換しながら、完成に至りました。
商品のラベルは、PHOENIXが2017年6月にリリースしたアルバム「Ti AMO」に合わせたデザインです。ヴォーカルのトーマスさんによる手書きなのだとか。ラベルに加えられた手書きの「JUNMAI DAIGINJO」は、砥上さんが提案したアイデアだそうです。
また、お酒を包む青い手ぬぐいは、楯の川酒造がある山形県酒田市の斎藤染工場で、一枚一枚、手仕事で染められたもの。手ぬぐいには、酒造りの工程がイラストでわかりやすく描かれ、右隅には黒田さんのイラストもあります。これは、クリスチャンさんのアイデアです。「ほら、黒田さんはいつも近くにいるんだよ」とクリスチャンさん。
味わいについては、前回が甘口だったため、今回はより食事に合わせやすい辛口にしたそうです。
クリスチャンさんにお酒の味を決めた経緯について伺うと「黒田さんは『日本酒は無駄なものを削ぎ落としたミニマリズムによって造られた、水の理想的な形であるべき』と、常々語っていました。私にとって、日本酒は芸術です。今回の日本酒は、黒田さんがおっしゃっていたものを目指しました」と、話してくれました。
デザインや味などを決定するときは、クリスチャンさんだけでなく、ギターのブランコさんも立ち会っていたそうです。
「今回のような、"黒田さんへのリスペクト"という強いコンセプトがあるプロジェクトでは、物事を決めていくのはそう難しくはありません。それに、デザインはほとんど砥上さんに作ってもらいました。彼のように、情熱をかけてものづくりをする人がいっしょだったからこそ、良いものができたのだと思っています。彼は、打ち合わせのためにメキシコまで来てくれることもありました。40年間生きてきて、このような仕事は前回のプロジェクトを含めて2回だけですが、良いものができてとても満足しています」と、ブランコさん。
ベースのデックさんも、もちろん日本酒ファン。「コンサートの前には、みんなで日本酒を一杯飲んで、自分たちを"高める"んです。日本酒は、詩的なインスピレーションを与えてくれる唯一のお酒です」
新プロジェクト「PHOENIX SAKE COLLECTION」始動
発表会の最後には、楯の川酒造の砥上さんから新しいプロジェクト「PHOENIX SAKE COLLECTION」の発表がありました。
これは、黒田さんへのオマージュを継続しつつ、PHOENIXのメンバーが日本酒を選び、コレクションしていくというプロジェクト。楯の川酒造だけに留まらず、他の酒蔵も対象です。すでに、このアイデアに共感し、PHOENIXがふだんから愛飲している「風の森」(油長酒造/奈良県)がコレクションに加わることが決定しています。
「楯野川 純米大吟醸 PHOENIX Limited Edition」を含めた「PHOENIX SAKE COLLECTION」は、2018年4月末にPHOENIXが来日するタイミングに合わせて日本国内の君嶋屋で発売予定とのこと。また、5月にはパリのWorkshop ISSEでも発売されます。
日本酒の普及に尽力されていた黒田さんの思いは、これからも受け継がれていくことでしょう。
(文:TK/編集:SAKETIMES)
◎商品概要
- 商品名:「楯野川 純米大吟醸 PHOENIX(フェニックス) Limited Edition」
- アルコール度数:14度
- 原料米:庄内産出羽燦々
- 精米歩合:50%
- 取扱店:「横浜君嶋屋」「Workshop ISSE」
- ※プロジェクトの売り上げの一部は、黒田さんがガンで亡くなったことから、医療技術の発展に寄与するため、日本赤十字社に寄付されることになっています。