ロンドンに本校がある世界的に有名なワイン教育機関・WSETが、農林水産省の後援を受け、2016年8月に欧米の主要な日本酒輸出先であるドイツで日本酒コースを開講しました。講師は、酒サムライのアントニー・モス氏と日本酒ディストリビューターの上野ミュラー佳子氏です。
アントニー・モス氏は、全世界約60ヶ国に広がるワイン教育機関・WSETの新規事業担当者。合格者が世界にわずか340人ほどしかいない超難関資格、マスター・オブ・ワインに合格した人物。2014年には酒サムライにも認定され、WSETの日本酒コース設立に携わっています。
上野ミュラー佳子氏は、ドイツ市場の最前線にいる日本酒ディストリビューター。酒サムライのひとりでもあり、2014年3月に「SAKE‐日本のこころが醸す麗薬-」(原題:SAKE‐Elixier der japanischen Seele)を出版されたことでも知られています。
海外で日本酒を普及するにあたり、提供側になる人たちへの教育は重要なカギになります。日本酒の普及活動に勤しむ2人の日本酒コースを受けつつ、お話を伺ってきました。
2日間で40種類をテイスティング!本格的な日本酒コース
日本酒コースには1〜3までレベル別の講座があります。今回はレベル3を取材しました。SSIインターナショナルが認定する国際唎酒師の通信講座は3ヶ月かけてじっくりと学んでいくのに対し、WSETのレベル3は2日間でそのすべてが詰め込まれていました。さらに、今回はまだドイツ語訳がない部分もあり、講義の大半は英語での受講となりました。
基礎知識なしにレベル3を受講するのはかなり難しいと思われます。いつかWSETのレベル3を受講しようと考えている方は、国際唎酒師で勉強する内容は頭に入れておいた方がベターです。
海外在住者の場合、講座に参加しなければ、約40種類という多くの日本酒を一度に試せる機会はなかなかありません。また、アントニー・モス氏や上野ミュラー佳子氏とコースの後にさまざまなお話をすることができるのも有意義な時間です。
日本酒だけではなく、数種類の麹や精米歩合の異なるお米、酒粕なども実物が用意されており、海外でこれほど本格的な日本酒コースが受けられるのは、画期的なことです。
「ラブリーな日本酒をもっと楽しんで」
ドイツで行われる日本酒コースのレベル3は上野ミュラー佳子氏がメイン講師を務め、今後は英語だけでなく、徐々にドイツ語への翻訳も進められていく予定です。今回のコースには希望者が多数いたため、2017年のはじめに再度開催されるそうです。
ロンドンではすでにレベルの異なる3つのコースが開催されていますが、いずれはドイツでも同じように開催されるといいですね。
アントニー・モス氏は「地元・イングランドにもとてもすばらしいエールビールがあるが、もっと飲むべきだと思いつつ、それほど飲まないのが現実。日本でも若い人たちの酒離れが進んでいるようですが、こんなにラブリーな日本酒だからこそ、飲み続けてほしい」と語っていました。
日本酒の海外輸出量は近年上昇傾向にありますが、国内の消費量は落ち込んでいる今日。お酒の飲みすぎはもちろんよくありませんが、せっかく日本人として生まれたのですから、こんなに魅力的な日本酒をいつまでもどこまでも世界に広げていきたいですね。
(文/フロメル麗奈)