名古屋から高速でおよそ1時間のところにある岐阜県中津川市。朝の連続テレビ小説『半分、青い。』で有名になった恵那市の隣にある、東濃地方の町です。

市内を通るのは、江戸時代に五大街道のひとつとして知られた中山道。その45番目の宿場町・中津川宿として栄えた地域に、古くから続く造り酒屋「はざま酒造」があります。かの有名な「関ヶ原の戦い」の翌年、慶長6年(1601年)から400年にも渡ってお酒を醸してきました。

恵那山を醸造するはざま酒蔵の写真

蔵は最寄り駅の中津川駅から徒歩で行ける場所に位置し、近くには、栗きんとんで有名な「川上屋」があります。

恵那山

※はざま酒造のホームページから引用

代表銘柄「恵那山(えなさん)」の由来は、長野県阿智村と岐阜県中津川市にまたがる、中央アルプス最南端の山です。

時代に合わせて変化する酒蔵

この地で美酒を醸す、はざま酒造の杜氏・岩ヶ谷雄之さんに、酒造りを終えたばかり蔵を案内していただきました。

岩ヶ谷さんは、山口県で人気銘柄「東洋美人」を造る澄川宣史さんに師事し、2015年から、はざま酒造で働いています。

「料理とともにお酒を楽しむという文化をもっと広げたい」という思いから、2016年に純米酒のみを扱う純米蔵に生まれ変わりました。銘柄名にもなっている恵那山からの伏流水を仕込み水に使用し、その清らかな水のような、澄んだお酒を目指しています。

岩ヶ谷さんは、純米蔵へと転換した当時の決断を振り返りながら、「その時に、老朽化が問題になっていた蔵の構造を見直しました。古き良き伝統を残しながらも、蔵人の労働環境や衛生などを考えて、美味しいお酒をずっと造り続けていけるような蔵に生まれ変わりました」と、話してくれました。

蔵の2階には、洗米機や蒸しの工程で使う甑(こしき)など、機材がたくさん並んでいます。

「酒造りに関係する機材は新しいものを取り入れています。中津川市は冬場、氷点下になることが多く、その時期に米を蒸すためには、朝3時からボイラーを動かす必要がありました。しかし、新しい機材を入れてからは蒸し始めが7時30分くらいに。蔵人たちの作業が朝6時くらいからになって、蔵人に優しい蔵になったのではないかと思います」と、岩ヶ谷さん。

かつては、蔵人がほとんど手仕事で酒造りをしていたようですが、手作業ならではの微妙な誤差があると感じ、今では積極的に機械を活用しているとのこと。また、酒造りには力仕事も多いため、働きやすさという観点では、こうした機械に助けられている部分がたくさんあるそうです。

洗米機の写真

こちらは洗米機。国産車1台が軽く買えてしまう価格なんだとか。

麹室の写真

古い土蔵の2階にある麹室を案内していただきました。部屋の温度を上げるのは壁に這わせた電熱線。温度管理にはセンサーを使っているとのことですが、基本的には昔からほとんど変わっていないそうです。

はざま酒造のタンク

発酵タンクは、古くなったものや他蔵から譲り受けたものをリノベーションして使うこともあるようです。一方で、一部の設備投資は惜しみません。

「必要だと判断した機材にはかなり投資していますね。より美味しいお酒を継続的に提供するためには、新技術を導入することもひとつのやり方だと思います。蔵人になりたいという人が少なくなっている今、伝統的なやり方のみでは、担い手がいなくなってしまいますからね。

個人的には、時代に合わせて変えていくことも大事だと思います。造り手の思いを届けるためには、蔵そのものがなくなってしまっては意味がないんです」

日本酒造りの現場でも、より良い仕事をするための働き方改革が求められているのですね。

日本酒ギャラリーを併設

蔵の隣には、日本酒ギャラリー「酒游館」があります。昔の酒造りで使われていた道具などが展示されているほか、日本酒の試飲や販売が行なわれています。

恵那山に使用する伏流水

また、実際の酒造りに使われている仕込み水を飲むこともできますよ。

今回はこの「酒游館」で、はざま酒造の代表銘柄「恵那山」を飲み比べしました。

はざま酒造の代表銘柄「恵那山」4種

  • 「恵那山 純米大吟醸」
    山田錦を100%使用し、精米歩合40%まで磨き上げた純米大吟醸酒。スッキリとした後味で飲みやすく、海外からのお客さんに人気です。
  • 「恵那山 純米吟醸 ひだほまれ」
    岐阜県の酒米・ひだほまれを100%使ったお酒。ほどよい酸味があるため、食事と合わせるのが良さそうです。
  • 「恵那山 純米」
    地元で人気の純米酒。どんな温度帯でも美味しく飲むことができ、食事との相性が抜群とのこと。
  • 「恵那山 純米吟醸」
    山田錦を100%使用し、精米歩合50%まで磨きました。「純米吟醸 ひだほまれ」と、酒米違いの飲み比べをしても楽しいですね。

いずれのお酒も、澄んだ甘味があり、スッキリとした印象です。純米酒は燗にしても美味しいのだとか。

11月には酒蔵ツアーを開催予定!

はざま酒造は、「世界中の人々にも『恵那山』の美味しさを知ってほしい!」という思いで、2018年から、世界的なワインコンテスト「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」のSAKE部門にも出品しています。今回は、純米吟醸部門と純米酒部門のそれぞれで、銀賞を受賞しました。

岐阜県 はざま酒造店 が醸す日本酒「恵那山」の写真

最近では、香港やマカオにも輸出を展開し始め、海外からのお客さんも蔵に来てくれるようになったのだとか。国外でも少しずつ人気が高まっているようです。

11月23日には、酒蔵見学ツアーが予定されています。酒蔵の見学はもちろん、しぼりたてのお酒を試飲できるので、ぜひ足を運んでみてください。

(文/spool)

◎酒蔵概要

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