近年、ナショナルブランドと呼ばれる大手メーカーの日本酒とはことなる個性を持つ”地酒”への注目度が高まっています。各地域で個性豊かな地酒が醸され、地酒専門居酒屋なども増えています。

“地酒ブーム”の発端は、1980年代の高度経済成長期の終焉に遡ります。
日本酒はもともと地元の酒蔵が地元に酒を卸すという地域密着型の商業でした。しかし経済成長期にさしかかると、日本の娯楽を支える嗜好品として日本酒の消費量が急激に増え、販売拡大を目指した酒蔵が地元を飛び出し全国規模の営業活動をはじめたのです。そして、日本酒のナショナルブランドが台頭してきました。

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しかし、高度成長期が終わり世の中が落ち着くと、地方でまだ日の目をみない良い酒を発見しようという"地酒ブーム”がわき起こったのです。ゆえに、昔ながらの酒造りを続ける地方の酒蔵が注目され、地域によって異なる日本酒の個性に焦点が当てられるようになりました。

地酒って何だ?地元素材にこだわる千代菊

地酒とは?と質問されると、なんと答えるでしょうか。実は、地酒の定義はとても曖昧。「ある一定地域にしか出荷されない日本酒」という意見もあれば、「一定地域限定の原料で造られる日本酒」という意見もあり、実は厳密には定まっていないのが現状です。地元の米は使わず、日本酒に適した米を他県から取り寄せる酒蔵も珍しくありませんし、流通の発達により、ある限定地域にのみ日本酒を提供するという考え方が減ってきています。

地酒という考え方は、酒蔵それぞれ。

そんな中で、岐阜県羽島市にある千代菊株式会社は、創業時より"地元に根ざす地酒”へのこだわりを貫いてきた酒蔵のひとつです。

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千代菊株式会社は、1738年より日本酒造りが始まった、278年の歴史を持つ酒蔵です。

千代菊が位置する羽島市は、木曽川と長良川に挟まれた場所。昔から豊かな水と田園が広がる酒造りに最適な土地で、初代から地元の水と米を中心に使用してきました。現在も変わらず、千代菊の酒造用水は地下128mから汲み上げる清流長良川の伏流水と岐阜県産の米を用いて日本酒を造っています。千代菊は、278年変わることなく、羽島でしか造ることのない地酒を生み出し続けているのです。

“平凡の銘酒”千代菊

千代菊の代表銘柄は、ずばり『千代菊』。200年以上続く銘柄で、古くから地元に暮らす人々に愛されてきました。

目指すのは、 “平凡の銘酒”です。ここで言う“平凡”とは、日常に千代菊があり、変わらず飽きることのない味を保ちながら、いつの世代にも飲み親しんでもらう、という意味。普段はありがたさを感じないけど、一人暮らししてから実家で食べるとほっとする母親の手料理。つまりおふくろの味のような、仰々しくないし派手さもないけど、どこか落ち着く味でいたい。そんな思いで、千代菊は"平凡”を追い求め続けています。

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とはいえ、無難な酒造りばかりをしているわけではありません。有機栽培米を使ったアイガモ農法の実施、普通酒でありながら六本木の飲食店での提供、酒蔵でのミュージシャンによるライブなど、様々な活動を意欲的に行っています。

高いスペックのお酒が重宝され、東京などの大都市で消費される傾向ある昨今において、ひたむきに千代菊が追い続ける”真の地酒”とは何なのか、 “平凡の銘酒”に込められた想いは何なのか・・・。SAKETIMESでは、岐阜・羽島とともに育った名酒蔵、千代菊株式会社を追いかけていきます。

次回は、千代菊の歴史と、地元に根づく酒造りを続ける会長・坂倉吉則さんの想いに迫ります。乞うご期待ください!

(取材・文/石根ゆりえ)

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