こんにちは、日本酒指導師範&酒伝道師の空太郎です。
本日は茨城県の酒蔵有志が酒造技術のさらなる向上のために取り組んでいる活動をご紹介します。
グループの名前は「IBARAKI造酒司(いばらき・みきのつかさ)」です。

茨城地酒の品質向上と活性化を目指す共同醸造

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仕掛け人(コーディネーター)は茨城県工業技術センター食品バイオ部門の武田文宣主任研究員(上画像:下の段右から4番目)です。
県内の酒蔵の技術指導をしている武田さんと県内の蔵元(蔵人)が「茨城の地酒の品質向上と活性化を目指そう」と有志に声をかけて、平成25年に結成されました。
当初は勉強会が目的でしたが、「お互いが持つ酒造技術を見せ合って、レベルを上げるには共同醸造がいい」ということになりました。
ただし、どこの蔵でやるのかの調整の手間もあって、武田さんの本拠地である工業技術センターで造ることになりました。

グループに加わっているのは13蔵16人です。
そのなかには人気地酒「来福」を醸している来福酒造の蔵元社長の藤村俊文さんや杜氏の佐藤明さんもいます。
「実力蔵がいまさら技術研鑽の必要はあるのですか」と空太郎が問うと、藤村さんは、
酒屋萬流(さかやばんりゅう)という言葉があるように、酒蔵はそれぞれ独自のノウハウを持っているんですよ。だから、他の蔵の造りというのは何年たってもとっても参考になります」と話されていました。
ほかのメンバーの方々に伺っても同様でした。
造酒司は律令制時代に酒や酢などの醸造物をつかさどった役所のことを言い、
茨城県工業技術センターの清酒製造技術研究棟の呼称が「造酒司(みきつかさ)」となっていることから、グループの名前にしたそうです。

全国でも珍しい仕込み水のブレンド

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今回の造りの一番の特徴は、お酒を造る仕込み水を各蔵から運んでブレンドして使っていることです。
茨城県のほとんどの水系の水を混合させて、これぞ茨城の地酒という企画にしたんです」と武田さん。
最近は全国各地に酒蔵ユニットによる共同醸造がありますが、仕込み水混合というのは寡聞にして存じ上げません。
初めての試みではないかと思います。
仕込みは2本たてて、お米はともに茨城県産のひたち錦と美山錦
酵母は茨城県酵母と日本醸造協会の酵母のブレンドで、純米酒を造りました。
そして、麹造り・酒母・添え仕込み・仲仕込み・留め仕込みをメンバーが分担して実施。
上槽(搾り)と瓶詰めは全員でやったそうです。
7月上旬に搾り終えて、瓶詰めをしています。

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出来栄えについて武田さん(画像:右)は、
「いまどき売れそうな純米吟醸を造ろうと皆と話し合ってやりましたが、僕の描いていた酒質よりは香りがやや抑え目で、一方で甘味はやや多めになりました」と話しています。

ユニークなラベルデザインと五味のバランスの良さが特徴

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工業技術センターが持っている酒造免許は試験醸造用で、販売することはできません。
通常の試験醸造であれば、造ったお酒はメンバーが試飲をして、あとは廃棄してしまうそうです。
しかし、それではもったいないし、もっと多くの人にお酒の感想を聞きたい、ということで、
去る10月に浅草の花やしきで茨城県酒造組合が催した茨城地酒まつりにてお土産(サンプル品)として無料で配りました。
配るのであれば、ラベルも必要ということで出来上がったのが、
仕込みタンクを撹拌(かくはん)するときに使う櫂(かい)を縦に7本並べたユニークなデザインです。
会場でも試飲できましたが、来場者には大変好評でした。
空太郎もいただきましたが、五味のバランスが良く、味わいがあるものの、呑んだ後のすきっとした爽快感が残る美酒でした。

メンバーの一人の結城酒造の浦里美智子蔵元杜氏は、
工業技術センターは私の酒造りの原点の地。今回は麹造りを担当させてもらって、とてもいい経験になった。
来年もセンターで共同醸造をします。グループの活動がさらに盛んになるといいなと思っています」と話していました。
試験醸造のサンプル配布もいいですが、今後は是非、皆さんで共同醸造に挑んで、商品として販売してほしいと思います。
彼らの活動を通して、茨城の地酒のイメージが上がるといいですね。
応援しています。

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※IBARAKI造酒司に参加されている皆様。(敬称略、いただいた名簿順)
結城酒造(浦里美智子)、剛烈富永酒造店(鈴木勝則)、府中誉(中島勲)、西岡本店(西岡勇一郎)、武勇(深谷篤志)、
磯蔵酒造(石川博之、大内健)、吉久保酒造(鈴木忠幸)、明利酒類(藤枝健一)、宏和商工(長岡慎治)、森島酒造(森嶋正一郎)、
来福酒造(藤村俊文、佐藤明、加納良祐)、浦里酒造店(早坂義裕)、岡部(岡部彰博)

 

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