世界中には、ワイン、ビール、ウイスキー、焼酎、ブランデーなど、さまざまなお酒がありますが、日本酒は酒類のなかで「醸造酒(じょうぞうしゅ)」というジャンルに分類されます。

この醸造酒とは、どのようなお酒なのでしょうか?

酵母の力でアルコールをつくる「醸造酒」

そもそもお酒とは、アルコールを含む飲料のこと。お酒は、その製造方法によって「醸造酒」「蒸留酒」「混成酒」に分類されます。

醸造酒と蒸留酒は、原料をアルコール発酵させて造ります。アルコール発酵とは、原料に含まれる糖分を酵母が食べて分解し、炭酸ガスとアルコールを生成する仕組みのことです。

醸造酒の代表例は、ワイン、ビール、そして日本酒。ワインの原料はぶどう、ビールの原料は麦芽、日本酒の原料は米ですが、アルコール発酵が進みやすいように、原料を事前に液状(醪)にするのは共通しています。

醸造酒のアルコール度数は比較的低めで、高くても20度くらい。これは原料の糖分がすべてアルコールに変わってしまえば発酵が止まるためです。実際には、想定している味わいになったら発酵を意図的に止めることがほとんどです。

蒸留酒は、醸造酒を蒸留したものです。原料を醪にするまでの工程は醸造酒と同じですが、醪を搾ってあとに蒸留をして、気化させたアルコールを冷やして再び液体にするので、基本的にアルコール度数が高くなります。

蒸留酒の代表例は、ブランデー、ウイスキー、焼酎。ワインを蒸留したのがブランデー、ビールを蒸留したのがウイスキー。日本酒を蒸留したのが米焼酎という関係です。

混成酒は、醸造酒や蒸留酒を原料に、果実や薬草、ハーブ、香辛料などの成分を配合した酒のこと。代表的なものにリキュールや梅酒、みりんがあります。

同じ「醸造酒」でも造り方はいろいろ

ワインもビールも日本酒と同じ醸造酒ですが、その製法は少しずつ異なります。

ワインの原料のぶどうにはもともと糖分が含まれているので、ぶどうを粉砕してジュースにすれば、アルコール発酵を進めることができます。この場合、使用するタンクは1つです。

ビールの原料となる麦芽にはでんぷんは含まれていますが、糖分はありません。そこで、麦芽に含まれる酵素の力を利用してでんぷんを糖化し、そこにホップと水を加えて麦汁をつくります。そして、その麦汁に酵母を加えてアルコール発酵を進めます。ビールづくりには麦芽を糖化させるためのタンクと、麦汁を発酵させるためのタンクの2つが必要です。

そして日本酒の場合、原料となる米には麦芽と同じくでんぷんは含まれますが、糖分はありません。米には麦芽のように糖化を進める酵素がないため、代わりに麹菌を利用してでんぷんの糖化を進めます。さらに酵母を加えて、でんぷんの糖化とアルコール発酵を同時に進めます。そのため、日本酒の仕込みに必要なタンクは1つだけです。

この糖化と発酵を同時に進める日本酒の発酵形式を「並行複発酵(へいこうふくはっこう)」と呼びます。これは醸造酒のなかでも複雑な発酵形式です。

ワインとビールと日本酒。醸造酒というジャンルは同じですが、それぞれの製法を知っておくことで、日本酒の製法の複雑さをより理解することができるでしょう。

(文/SAKETIMES編集部)

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