日本酒のラベルに書かれた「無濾過(むろか)」の文字。「無濾過」とはどのようなお酒のことを指すのでしょうか。言葉を知ることで日本酒の楽しみ方がさらに広がります。
「無濾過」は、しぼりたての味わい
醪(もろみ)を搾ったばかりの日本酒は、少し黄色がかった色合いで澱(おり)も多少残っています。一般的な酒造りの工程では、搾りのあとに、この澱を取り除くために活性炭や濾過フィルターなどを使って「濾過」作業を行います。
この濾過作業を行うことで、雑味の成分や微細な粒子を取り除き、透明度が高く、全体的に均整のとれたすっきりとした味わいのお酒に仕上がります。「無濾過」とは、この濾過作業を行なっていないお酒のことを指します。
無濾過のお酒は、搾りたての味わい。酒がもつ本来の旨味や個性などが残り、 飲み応えのある風味に仕上がります。米の旨みが濃厚に感じられ、ずっしりとした味わいになる傾向があります。
偶然が生んだ炭を使った濾過の技術
濾過には、粉末状の活性炭を入れて濾過機を通す方法や、活性炭を使わずに珪藻土やフィルターなどの濾過機を通す方法などがあります。
炭を使った「濾過」の手法のきっかけけは、伊丹発祥の豪商・鴻池家で酒屋の主人に対して行なわれた労働者の報復だとする説が有力です。
日頃の扱いに鬱憤(うっぷん)が溜まった雇われ者が、商品価値を落とす目的で清酒のなかに灰を投げ入れたところ、意に反して、酒の味が見違えるほど良くなったそうです。酒蔵の職人たちは、予期しないことが起きてもそれを逆手にとり、酒造りの技術を向上させてきました。
すっきりとした味わいを楽しみたいときには、濾過されているお酒、ずっしりとしたパンチのきいた味わいを楽しみたいときには、無濾過のお酒と、その日の気分に合わせて選んでみてはいかがでしょうか。
(文/SAKETIMES編集部)