伝統を感じさせる昔ながらのデザインや、ポップなイラストが描かれたものなど、個性あふれる日本酒のラベル。そんな"日本酒の顔"ともいえるラベルには、銘柄名から原料、酒蔵の思いまで、多くの情報がつまっています。

ラベルの情報を読み取れると、そのお酒の特徴や酒蔵の思いを深く理解することができ、より豊かな日本酒体験が味わえることでしょう。そこで今回は、今日から使える日本酒のラベルの読み方をお伝えします。

表示義務のある項目

酒類の品目

日本酒は「米・米麹・水を原料として発酵させて、こしたお酒」です。実は「アルコール度数22%未満」「日本国内で造られたもの」という定義まで法律で定められているんです。見た目は焼酎に似ているけれど、造り方や飲み方においてはワインのほうが近い存在。中には、ビールと同じくらい低いアルコール度数の日本酒も存在しています。

日本酒の定義は酒税法にて定められており、法律上では「清酒」と呼ばれています。

  • 米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの
  • 米、米こうじ及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの

※「その他政令で定める物品」には、醸造アルコールや糖類、酸味料、アミノ酸塩などが含まれています。

このどちらかを満たした上で、「アルコール度数が22度未満」に当てはまるものを「清酒」と定義しています。

条件を満たしていれば、ラベルには「清酒」あるいは「日本酒」と、どちらか好きな方を記載することが可能です。しかし、「日本酒」は日本産米を原料として国内で造られた「清酒」に対してのみ与えられている名称のため、海外で造られたものは「日本酒」と表示することはできません。

一方で、日本酒と同じ製法でも副原料を使っているお酒や、日本酒と違って「上槽」という液体と酒粕を分ける工程がないどぶろくは「その他の醸造酒」に、果汁エキスなどを加えた場合は「リキュール」に分類されます。

原材料名

日本酒の基本的な原料は「米」「米こうじ」「水」ですが、「水」はラベルへの表示義務がありません。

酒造りに使用する米は、ふだん私たちが口にしている「食用米(飯米)」を使うこともありますが、酒造りに適した「酒造好適米」を使うことがほとんどです。山田錦五百万石美山錦などの品種が有名ですね。

ラベルには品種まで記載する義務はありません。しかし、米の品種は蔵のこだわりが表れる部分でもあるため、品種が記載されている日本酒も増えています。

また、「醸造アルコール」「酸味料」「糖類」を加えた場合は、「米」「米こうじ」と同じくラベルへの表示義務があります。

精米歩合

精米歩合の解説

後述する特定名称酒である場合、白米のその玄米に対する重量の割合である精米歩合を表示する必要があります。「米を削って残った部分の割合」を表す数値です。

米の表面にはタンパク質や脂質といった酒の雑味につながる成分があり、米を削るとこれらを減少させることができます。そのため、米を削ると雑味が少なくなって香り高い、いわゆる"きれいなお酒"になりやすい傾向があります。

しかし、精米歩合が低ければ酒質がよくなるかと言われれば、そうとも限りません。香りは立ちやすくなりますが、米のうまみがなくなってしまうこともあります。

日本酒の味わいは精米歩合だけでは決まらず、原料や製法などあらゆることが作用して決まるため、「精米歩合が低ければ低いほどおいしい」とは限らないのです。

アルコール分

アルコール度数と呼ばれるものです。酒税法の定義により、清酒は1%以上22%未満と定められていますが、16%前後が一般的な度数です。

ビールは5%程度、ワインは13%程度と、ほかの醸造酒に比べて日本酒はアルコール度数が高いので、飲みすぎには注意が必要です。

内容量

主に四合瓶(720ml)と一升瓶(1.8L)が流通しています。

日本酒の量を表す単位でよく使われる「一合」は「180ml」、「一升」は「1800ml(10合)」を表しています。

製造時期

日本酒を瓶詰めした年月が記載されています。製造してからタンクで熟成させたお酒でも、瓶詰めした日が製造時期となるため、この表示だけで新酒かどうかは判断できません。

上記のほかに、以下の項目にも表示義務があります。

  • 製造者の名称及び製造場所在地
  • 未成年者飲酒防止の注意
  • 保存又は飲用上の注意事項
  • 原産国名
  • 外国産清酒を使用したものの表示

任意で記載する項目

特定名称

特定名称酒の違いをイラストで分かりやすく解説!純米酒とは?大吟醸とは?

特定名称酒は、主に「醸造アルコールを使用しているか」「原料の米をどのくらい削っているか」によって、「純米酒」「特別純米酒」「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」「本醸造酒」「特別本醸造酒」「吟醸酒」「大吟醸酒」の8種類に分類されます。

それ以外の日本酒は「普通酒」と呼ばれ、流通している日本酒の約7割を「普通酒」が占めています。

酒の特徴を示す語句

原酒」「生酒」「生貯蔵酒」「無濾過」「生酛」「山廃」「樽酒」「貴醸酒」「熟成古酒」など、特徴のある製法で造られた日本酒には記載されていることがあります。

成分表記

表示義務のあるアルコール度数のほかに、「酵母」「日本酒度」「アミノ酸度」「酸度」が記載されていることがあります。それぞれの意味を知ることで、味わいの傾向をつかむことができます。

情報の宝庫であるラベル。日本酒を選ぶときの材料になることはもちろん、その一本をさらに深く知るための情報源でもあります。

ラベルに書いてある項目が理解できると、もっと日本酒が好きになるはず。次に日本酒を飲む際には、ぜひラベルもチェックしてみてくださいね。

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