「普通酒」とは、吟醸酒や純米酒、本醸造酒などの「特定名称酒」として分類されない日本酒のことです。「普通酒」という名前はあくまでも通称なので、店頭に並んでいる日本酒を見ても「普通酒」という表示のあるものは基本的にありません。
「普通酒」を理解するために、まずは「特定名称酒」について学んでいきましょう。
8種類に分類される特定名称酒
原料や造り方などの違いによって分類された日本酒を「特定名称酒」と呼びます。
特定名称酒は、精米歩合の違いや醸造アルコール添加の有無などによって、8種類に分類されています。
- 本醸造酒
- 純米酒
- 特別本醸造酒
- 特別純米酒
- 吟醸酒
- 純米吟醸酒
- 大吟醸酒
- 純米大吟醸酒
簡単な表にまとめてみましょう。
精米歩合や醸造アルコール添加の有無以外にも「農産物検査法によって、3等以上に格付けされた米を原料に使っていること」「添加する醸造アルコールの量が、使用する白米の総重量の10%以下であること」「麹米の使用割合が15%以上であること」などの基準があります。
ただ、簡単に言ってしまえば、ラベルのどこかに「吟醸」「純米」「本醸造」の文字を見つけたら、それは特定名称酒です。酒米をたくさん磨いたり、仕込みに時間をかけたり......特定名称酒は、"より手間と時間をかけて造られたお酒"とも言えるかもしれません。
普通酒は、"毎日を楽しむための酒"
特定名称酒以外の日本酒である「普通酒」は、手間ひまのかかっていないお酒なのでしょうか?
実際、そんなことはありません。特定名称酒は、あくまでも造り方を基準に分類されたもの。普通酒として扱われる日本酒のなかにも、美味しいものはたくさんあります。
たとえば、八海醸造株式会社の「清酒 八海山」。普通酒として販売されていますが、精米歩合は60%。吟醸酒と同等ですね。酒質の向上に取り組み続ける八海醸造では、吟醸酒クラスの酒を普通酒と名乗ることで、蔵全体のレベルを上げているのです。
旭酒造株式会社の「獺祭 等外」も普通酒に分類されています。その理由は、通常、くず米として処分される等級の低い米を使って醸した日本酒だから。等外米は粒がふぞろいで、日本酒の原料には向かないといわれていますが、旭酒造は契約農家が育てた酒米を無駄にしたくないという思いで商品化しました。等外米ですが、酒米の王様とも呼ばれる山田錦を100%使っています。
スーパーマーケットやコンビニに並ぶパック酒やカップ酒は、そのほとんどが普通酒です。価格が手頃で、取り扱いも簡単なパック酒は、毎日の晩酌や家飲みにぴったり。テーブルワインのようなお酒ともいえるでしょう。パック酒のなかには「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2017」で最高金賞を受賞した、菊正宗酒造株式会社の「しぼりたてギンパック」に代表される、冷やして美味しい、香り豊かなタイプもありますよ。
このように、普通酒のなかにも、美味しく飲んでもらうための工夫が詰まった銘柄が数多くあります。特定名称酒のなかでは見つけられなかった、自分の好みにあった普通酒があるかもしれません。スーパーマーケットやコンビニの店頭で、旅先で訪れた地元の酒販店で、自分好みの普通酒を見つけるのも日本酒の楽しみ方のひとつですね。
(文/SAKETIMES編集部)