「獺祭(だっさい)」の世界観をデザインで表現してほしい。「獺祭」の蔵元である旭酒造が、このような趣旨で初めて開催した「DASSAI DESIGN AWARD 2018」の結果が発表されました。
初回となる今回のアワードには402点もの作品が寄せられ、最終選考に進んだものは15点。その中から最高賞のほかに、優秀賞5点が選ばれました。
獺祭の最高級酒「純米大吟醸 磨き二割三分」の化粧箱にデザインされる最高賞は、獺(かわうそ)をモチーフにして提案した岡島凱さんたちが受賞しました。その授賞式のようすをお伝えします。
「獺祭の世界観を表現してほしい」
DASSAI DESIGN AWARDの趣旨について、旭酒造の桜井博志会長は次のように話しています。
「私たちは、お酒の瓶やパッケージに強いこだわりを持っています。その反面、どうしてもデザインは固定化されたものになりがちです。しかし、それでは味気ないような気がしまして。
お酒は人生を豊かにする存在であってほしいので、パッケージも視覚的に楽しんでいただけるようなデザインにしたい。そう考えた時に、若いクリエーターの力を借りて、獺祭の世界観を表現してもらおうと、今回の企画に至ったのです」
「獺祭」の品格と新奇性を同居させたデザイン
最高賞に輝いた作品について、岡島さんたちは次のように話しています。
「獺祭という面白味のある場面を想定しました。これをできるだけシンプルにしたいと考え、獺が好きな鯉を背中に乗せて表現しました。そして、『純米大吟醸 磨き二割三分』を表現する紫の紐で、両者を結びました。
日本の象徴である鯉を背負った獺は、遠く世界を見渡しています。その背景には、『旭酒造』を表現する朝日が輝いています。日本を感じさせながらも、世界を相手に勝負する姿勢を表現しました。
また、イラストが面をまたぐレイアウトにし、正面は獺祭の品格を大切にするため、シンプルな部分のみを表現しました。側面と背面にはカラーの部分を配置し、各面での印象を変えることで、品格と新奇性の両立を目指しました」
審査員からは、「遊び心があり、若い人からご年配まで幅広く親しまれそうな、メッセージ性の高いデザイン」や「普段の獺祭とは異なる、ハレのデザイン。華やかで、期間限定デザインとしてふさわしい」などの声が挙がりました。
「成人してから、初めて飲んだ日本酒が獺祭でした。日本酒とはこんなに美味しいものなのか、と感動したことを覚えています。今回のアワードを妹が見つけてきた時は運命を感じ、すぐに応募することを決めました。
妹の高校時代の同級生である金澤さんにも声をかけ、3人で新しいデザインに挑戦しました。制作した中で、獺が鯉を背負うデザインは3人が一番気に入ったもの。当初はモノクロだったのですが、デザインのオリジナリティを強調するために配色を行いました。
細部の修正では、『桜井会長の思いをもっと汲まなければ評価されない』という妹の指摘を踏まえ、デザインを完成させました。私たちが最高賞をいただけるとは夢のようです」と、喜びを噛みしめる岡島さん。
岡島さんたちが制作したデザインは「純米大吟醸 磨き二割三分」の化粧箱5万本に印刷され、国内はもとより海外にも出荷されていくとのこと。普段とは異なる顔を持つ獺祭は、さらに味わい深いものとなりそうです。
(取材・文/空太郎)