こんにちは。SAKETIMESライターの沼田まどかです。
今回は、今一番話題にのぼることが多いあの有名な「獺祭」の蔵をご紹介します。

山口の山奥にそびえ立つ高層ビルが旭酒造

JR 岩国線のワンマンカーに揺られて徳山駅から周防高森駅まで約40分。

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そこから、山奥の一本道を車でさらに20分ほど走ると、12階建ての高層ビルがドーンと現れます。視覚的にはかなり、いや、相当ショッキング。

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この立派な建物が、国内外の日本酒人気をぐいぐい牽引している「獺祭」の新しい蔵です。今年6月にめでたく稼働を始めたばかりで、そこらじゅうピッカピカ。最大五万石(1升瓶換算で500万本)の製造能力を備えているそうですが、昨今の獺祭人気を考えると、すぐに間に合わなくなりそうです。

この日は、ニューヨーク帰りの桜井副社長に新蔵の中をご案内いただきました。

まずはエアシャワーで身体のホコリを落とし、蔵の中へ。エレベーターで洗米や蒸米といった原料処理を行うフロアに向かい、酒母室を経て仕込み部屋へと順を追って見学させてもらいました。作業の進行と共に下の階へ移動していく構造で、素人の目から見ても非常に合理的です。

毎日”純米大吟醸”を造り続ける蔵人たちの仕事ぶり

蔵の中はどこもひんやりとしており、ふわりと吟醸の香りが漂っています(熟す前のメロンの香りをご想像ください)。

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その中で、唯一汗をかく場所が麹室です。室の中は眼鏡もカメラのレンズも曇るほど、湿度たっぷり。今回は夕方に蔵を訪ねたのですが、運よく麹を切り返す場面に居合わせることができました。Tシャツ姿で汗びっしょりの蔵人たちを見ているだけで、非常に体力を使う作業であることが分かります。

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ここ数年の獺祭人気には目を見張るものがありますが、蔵人たちの仕事ぶりは、いたって堅実です。冬季醸造の酒蔵が多数を占める中、旭酒造では四季醸造を採用。酒造りにおいては、純米大吟醸の仕込みが最も難易度が高いとされています。こちらの蔵人たちは1年中ひたすら純米大吟醸を造り続けているわけで、歳は若くても腕を磨く機会は他の酒蔵よりもはるかに多いといえます。最良と言われるお米を磨き、最高に美味しいお酒を造るという発想を持つ蔵元は、人材育成に対する考え方も極めてシンプルで、なるほどなあと感心しきり。体力に自信があり、蔵人になってみたい方はぜひ旭酒造の門を叩いてみてください。

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獺祭人気を支えるのは、酒造りに対するブレない姿勢

桜井副社長のお話を伺っていると、蔵の運営において無駄と思われる作業は、できるだけ機械化もしくは単純化される一方で、人の温もりを残すべきポイントはきちんと押さえている印象を受けました。旭酒造ならではの洗練されたスタイルが酒質にうまく表れているので、国内外からの多くの支持を得られているように思います。

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今となっては、山奥の「小さな」酒蔵ではありませんが、芯はブレずに日々進化し続ける獺祭に、今後も要注目です。

 

蔵元情報
旭酒造株式会社
〒742-0422 山口県岩国市周東町獺越2167-4
TEL(0827)86-0120
FAX(0827)86-0071
URL https://www.asahishuzo.ne.jp/
蔵見学可能。事前に要予約。

 

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