こんにちは!SAKETIMESライターの三浦環です。

日本酒は基本的に米・米麹(こうじ)と水を原料に造られています。そこに酵母や様々な技術などが加わり、その一つ一つに個性を持った日本酒が生まれます。

今回はお米に焦点を当てて、農家さんや酒蔵の方にお話を伺いました。

皆さんは酒米(さかまい)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これはお酒造りに使用するお米を指します。厳正に言うと酒造好適米のことで日本酒を造るのには優れたお米、醸造用玄米として農林水産省に規定されている品種のことです(参照:http://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/kokuji/k0001439.html)。しかし、その価格の高価さや生産量の問題もあり、酒造好適米を使用しているお酒は高価なお酒だというのが一般的です。

規定の他の品種(一般米)でも酒造りに適した品種もあり、酒造りに使われているお米もあります。また食用の飯米を使ったお酒などを新たな取り組みとして行なっている酒蔵さんもあります。
酒米という言葉はそのお酒の原料のお米という使い方で話される場合もありますし、酒造好適米以外でもお酒造りに適した有名な品種のお米も存在することもあり、全てが酒造好適米を厳正に指し示して使用している、というよりも柔軟に受け取る言葉であると私は認識しています。

 

酒造好適米の代表例

なんといっても山田錦です。日本酒に親しみのない方でも聞いたことがある方はいらっしゃるのではないでしょうか?
この山田錦の他にも、美山錦・五百万石・雄町などが有名な品種です。その他にも各都道府県の農業試験場などで酒米は研究開発されています。私の出身県でもある秋田県では秋田酒こまち(食用のあきたこまちとは違うお米)、吟の精、美郷錦などの酒造好適米があります。

 

酒造に適した品種の代表例

皆さんは夏子の酒という漫画はご存知でしょうか?その漫画でも焦点となったお米、亀の尾は酒造好適米ではなく一般米であるものの、酒造に適したお米ということで現在色々な酒蔵で酒造りに使用されています。他の品種ではふくひびき、日本晴などもあります。

 

農家さんに聞く「酒米造り」とは

今年の米の出来は良かった!などお米の出来に関しての言葉は聞きますね。お米の出来とはどういったものなのでしょう?
今回、秋田県大潟村で酒米を作られている鈴木秀則さんにお話を伺いました。

鈴木さんにとっていい出来だと感じるお米はどんなお米ですか?と聞いたところ、一番は美味しいお酒ができるお米です。そしてお酒を造る手間にばらつきが出ないお米ですとおっしゃられました。毎年毎年、お米を作る環境は変化します。それに伴いお米自体の変化もあります。その中でいかに安定したお米を作るかということは、お酒造りもお米の状態に合わせて醸す(かもす)わけですから、その手法を安定して行うことができるということにも繋がるのです。

具体的にどんなお米がいい酒米でしょうか?との質問には、品質の特性が出て、できるだけ丸くて、心白(しんぱく)の小さいお米だというお答えでした。心白があるというのは酒米の特徴でもあります。心白はお米の中心部で白く不透明に見える部分です。ここの部分のでんぷん粒の隙間があることにより空洞が生じています。この空洞に麹菌が入り込むのです。

逆に良くない酒米とは?と聞いたところ、割れやすく玄米の時に既に割れていたりするものも良くないとのことでした。個人により違いますが、鈴木さんの感覚によると硬くもろいという感じ方なのだそうです。

鈴木さんは亀の尾、美郷錦など色々なお米を作っておられますが、今回、ふくひびきというお米を新しく手がけておられます(このお米は一般米に分類されますがお酒造りには適した品種です)。そのお米を使い、お酒を醸している酒蔵さんにもお話を伺いました。

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秋田県横手市にある阿桜酒造(参照:http://www.azakura.co.jp/)さんでは鈴木さんの作る亀の尾や美郷錦などを今までも使ってお酒を造られておられますが、今期(平成26醸造年度)の造りでこのふくひびきでも何種類かのお酒を造られるそうです。
新しいお米を使うことの理由や目指したこと、難しさなどをお聞きしました。

「米(酒米)不足の中、毎年増石(生産量を増やして)しており、その対応手段として、一般米での醸造を特定名称酒においても拡大する事としました。
生産農家さんの米造りの技術の高さもあり、導入自体には不安はありませんでしたが、緊張した造りになったのは言うまでもありません。
実際に、お酒が商品化され、皆様からの評価を頂き、ホッと胸をなで下ろしているところです。」とのことでした。

初めてのお米でのお酒造りというのは、毎年の気を張り詰めて行うお酒造りの中でも、特に気を遣う造りになるのが感じられます。お酒造りというのは、酒蔵さんだけではなく農家さんとの連携もとても大切なのですね。

農家さんの挑戦、酒蔵さんの挑戦、色々なことを思い浮かべながらお酒を味わってみませんか?

 

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