前回は、ショートショート「海酒」の著者である田丸雅智(たまる・まさとも)さんに「『海酒』が出来た経緯やお酒との関わり」についてお伺いしました

後編となる今回は、「田丸作品と日本酒の関わり」や、「これからの創作に対する意気込み」についてお伝えします。

田丸さんの「日本酒のイメージ」、そして「日本酒」と「海」の共通点

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筆者(以下 筆):田丸さんにとって「日本酒」のイメージはどんなものですか?また、「日本酒」「海」との共通点はあると思いますか?

田丸(以下 田):「日本酒」清くて洗練されたイメージがあります。清水のようなせせらぎが思い浮かびますね。「日本酒」と「海」の共通点も、やはり「水」

海は深く、日本酒は醸造して丁寧に作られるものなので、この二つに共通する「水」は奥深さや複雑さを含んでいるように感じます。

「海酒」インスパイアカクテルについて

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筆:本日は「海酒」にインスパイアされたカクテルが「SAKE HALL HIBIYA BAR」から提供されますよね。どんなカクテルになると予想していますか?

田:カクテルの詳細については僕にも全く知らされていないんです。海の香りや潮っぽさはソルトで表現するのか、色はどんな感じだろうかと。故郷の三津(みつ)の海がどんな風に表現されるのか、気になりますね。

これからの創作に対する意気込み

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筆:今後の作品において「酒」をテーマ、あるいはキーアイテムに使う可能性はありますか?

田:あると思います。実は……今朝書いた作品に「奉公酒」という酒が出てくるんです。「紹興酒(しょうこうしゅ)」にかけて「奉公酒(ほうこうしゅ)」なんですけど。

筆:奉公酒……丁稚奉公の「ほうこう」ですか?それはユニークですね(笑)

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筆:今日のイベントのラストには田丸さんご自身で「海酒」を漬け、1年後に飲む予定との事ですね。1年後、自家製「海酒」を飲む頃には作品も変わっていると思いますか?

田:1年後は未知数ですが……変わっていきたいですね。2015年は4冊以上の出版が決まってますし、常にチャレンジしていきたい。

筆:今回田丸さんの作品を読んで、ショートショートには大きな可能性があると感じました。

田:それは嬉しいですね。

筆:作品ごとに世界感がありそれぞれに味わいが違って。まるでたくさんの日本酒を利き比べしてるみたいでした。

田:僕はショートショートの巨匠、星新一さんの孫弟子と言われています。巨匠の残したエッセンスを土台として、自分自身にしか書けないよう作品を創っていきたいですね。

「ショートショート」と「日本酒」の意外な共通項

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筆:昨今では日本酒の世界でも、酒にまつわる固定概念を壊し新たな可能性を模索していこう方々の取り組みが目立ちます。田丸さんのこれからの創作に対する姿勢にも共通するものが感じられますね。

田:そういう方達とは話が合いそうです。一緒に飲んだら盛り上がれそうですね(笑)例えば日本酒カクテルは、一部の方からは偏見や反発を抱かれて大変なことも多いと思います。

僕も、昔ながらのショートショートファンの一部の方からは「こんなのショートショートじゃない」と言われてしまうこともあるんです。でもそれはそれとして受け止め、自分の道を真摯に突き詰めていきたい。

筆:日本酒の世界とショートショートの世界の意外な共通点がみつかりましたね。どちらも固定概念が根強く残っているというか……

田:そうですね。ショートショートの世界では、読者の固定概念が強いかもしれません。いい意味で読み手側を裏切って、固定概念を壊すような作品を創っていきたいですね。

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ショートショートはまだ認知度が浅く「単に短い小説でしょ?」「長編には劣るよね」などと思っている人も多いようです。

一方、日本酒にも「どれも同じ味」「べたべたして悪酔いする」というような偏見があったり、「日本酒はこう飲むもの」という固定概念が根強く残っています。

しかし日本酒カクテル専門店「SAKE HALL HIBIYA BAR」×ショートショート「海酒」という今回のイベントをきっかけに、どちらもさまざまな味わいが楽しめる可能性を感じることができました。

日本酒のお供に、田丸さんのショートショート「海酒」はいかがでしょうか?

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協力

株式会社 出版芸術社
「SAKE HALL HIBIYA BAR」
田丸雅智個人サイト「海のかけら」
株式会社 環境開発計画

 

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