イタリア、トスカーナ州に在住のSAKETIMESライター永野薫です。
私の身の回りで起こっているイタリアでの日本酒事情について、みなさんにお伝えできればと思っています。
先回レポートさせていただいた「SAKÉ: IL MISTERO SVELATO~日本酒の秘密が明らかになる!」 にて、カクテル作りの世界でフィレンツェ最高のバーテンダーといわれるルカ・ピッキ氏(Luca Picchi)にお時間をいただき、日本酒についてお話をうかがうことができましたので、その様子をお届けします!
フィレンツェで行われた日本酒イベントフィレンツェ発祥のカクテル「ネグローニ」研究の第一人者であるルカ氏。
出版(Negroni cocktail. Una leggenda italiana, 2015)、海外講演だけでなく、今でもフィレンツェ旧市街の中心地にある老舗カフェRIVOIRE(リヴォワール)でバーテンダーとして活躍されています。(ガイドブックに必ずというほど載っている老舗です!)
日本酒についてはいつからご存知でしたか?
「何度か飲んだことはあったんだよ、温めたものも、冷やしたものも。一般的なことは何年も前から知っていたかな、品質が低いものだったとしてもね。これがおいしい、どういう品質かなんて、説明できる人はいなかったから、本当の意味で日本酒を発見したのは、今日この日(日本酒セミナー)だと言えるね。」
イタリアのバーやレストラン等で日本酒を見つけることは難しかったですか?
「ミラノやローマなど大都市の限られたバーであれば、日本酒をベースにしたカクテルを見つけるのは難しくはなかったと思う。問題は、日本酒の品質をキープするってこと。良い状態で置いておけるのは開栓後せいぜい一週間。カクテルを作るのに一度でそんなにたくさん使うわけではないからね、広く普及させるのは難しかったと思う。そういう意味では、今日見たこのような小さなボトル(300ml)は、適していると思うね。」
お話の端々にお酒とサービスのプロとしての視点で日本酒を見てきたことが伺えました。ブームだからというわけではなく、純粋に特徴と品質とその背景にある文化に興味を持ち日本酒を知っていただけたことを感じ、またそこから誰かに伝わっていく未来を垣間見ることができました。
フィレンツェ有数のバーテンダーを集めたThe SHAKER CLUB(シェイカー・クラブ)の創始者でもあるルカ氏。
近年のバー業界の傾向として、進展が見られるかと伺ったところ、
「まだまだやることはいっぱい。そして終わりはないよ。このバーテンダーの世界に精通して情熱をもった人間が、その専門知識とクオリティを業界に役立てていこうとして集まったのがこのクラブなんだ。ボスや規則などはなく、僕らは定期的に連絡を取り合って今回のようなイベントやセミナーを企画したりしている。バー業界の正しい知識を広めていくためにね。」
彼らの活動の一端に本当の日本酒のことを取り入れてもらえたことは嬉しいですね!
最後に、もう少しイタリアにおける日本酒について伺いました。
既存のカクテルの世界において、日本酒カクテルが普及する可能性はあるでしょうか?
「今日のイベントを経て、可能性があると感じたよ。蔵人ジョヴァンニのかなり奥の深い知識を聞くことができたし、もう一人のジョヴァンニ(※)が高品質の日本酒を輸入し始めた。大事なのは、商業的なことからではなく、本当の品質や特徴を理解して広めることだね。今日は仲間と一緒に日本酒をベースとしたカクテルをそれぞれ考えてきたよ。日本酒はジンやコニャック、ベルモットとは違って、とても精錬されて優雅な、デリケートなものだから、日本酒5~6:他のリキュール等1の割合で作るようにした。日本酒が少しだと意味がない、日本酒を感じないからね。」
「精錬されてデリケートというのは日本の文化のようだよね、全面に出さずに、でも味覚や風味を損なわないように、そして他のリキュールとうまく調和がとれるように。」
近代以降の歴史の中で、和洋折衷、欧米や他の国の文化をたくさん取り入れてきた日本ですが、支柱となる自らの歴史と伝統の素晴らしさを損なうようでは残念ですよね。日本酒だけではなく、ルカさんの言葉から、日本の文化を客観的に観て良いところをアピールできる日本人でありたいと思いました。
※ 詳しくはこちらの記事を御覧ください!→イタリア人蔵人が解説!フィレンツェで行われたバーテンダーが集まる日本酒セミナーレポート
ちなみに、今回ルカさんが用意した日本酒ベースのカクテルは、甘酸っぱく、丸みがあり、純米吟醸のキレのある甘味と風味もしっかりと感じることができる、とてもおいしいものでした。
フィレンツェに来ることがあればぜひ、ルカさんのいるカフェ「リヴォワール」へお越しください!中世にタイムスリップしたような場所で、コーヒーやホットチョコレートやお食事が楽しめますよ。
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