石川県・能登半島の北に位置する”奥能登”に蔵を構える6つの酒蔵が組み、立ち上げたソーシャルプロジェクト「奥能登酒造学校」。奥能登の酒や食について、東京と現地の双方で学び、体験することができるプログラムです。能登の魅力を伝え、愛着を持ってもらい、そして実際に来てほしいという思いで開催しています。
今回は、奥能登酒蔵学校・第3期の”東京開催”の模様をレポートします。 会場は「方舟アトレヴィ五反田店」。蔵元とともに、能登の酒と食を味わってもらうことで、いっそう奥能登を身近に感じてもらいたいと、飲食店での開催となりました。
秋から冬にかけて能登の名産といえば、 山のきのこ類と海の幸のブリやタコも有名ですが、本日のメインはズバリ、冬の味覚の”香箱蟹”でした。
日本酒には特選・上撰・佳撰などのラベルが貼られているものが昔からありますが、 能登はそのラベルをやめ、「能登の酒」という表記に統一したそうです。基本は普通酒、または本醸造で、まさに地元で愛される、手頃な価格のお酒。しかしそのレベルは高く、地元の食材に合うものばかり。
その中から、カニに合うものを選んで提供されるということで、期待も高まります。
「奥能登酒蔵学校」に参画する6蔵のうち4蔵が参加した本イベント。まずはそれぞれの蔵元へ、蔵のこと、そして自身のお酒のことを伺いました。
・松波酒造/金七聖子さん
能登半島の先端で酒造りを行っており、主力の銘柄は「大江山」。創業は140年。 若女将・金七聖子さんの妹が7年前に能登杜氏の修行をし、蔵人になったそうです。姉妹で蔵を支え、酒造りをしているなんて、とても興味深い蔵ですね。地元で消費される本醸造をメインに造りを行っていますが、日本酒リキュールや焼酎など、幅広い商品も展開をしています。
・白藤酒造店/白藤暁子さん
イベントには杜氏の奥様・白藤暁子さんが来ていましたが、平成18年度の造りよりご主人・喜一さんが杜氏となり、二人三脚で白藤酒造店を支えてきました。日本酒度としては甘口傾向にあり、柔らかく旨みのある、実に美味しいお酒を醸している蔵です。現在は殆どアルコール添加をせず、特定名称酒をメインとして造っていますが、カニに合うお酒は絶対にこれという本醸造を持ってきたそう。 造りも基本的には2人で、忙しい時のみ地元の漁師の方にお手伝いを頼んでいるとか。漁師は力も体力もあり、助かっているとのこと。そういう意味でも、カニに合うお酒というのが気になります。
・日吉酒造店/日吉智さん
能登のメインストリートである朝市通りに面している、製造量100石ちょっとの小さな蔵。「酒屋によく間違われてしまうんですよ」と蔵元の日吉智さんは笑います。代表銘柄の「白駒」は、他の奥能登の酒と比べると、かなり辛口傾向のお酒です。今まで働いていた杜氏が加齢のため引退。蔵元の日吉さんは、今年度から蔵元杜氏として酒造りにも関わっていくそうです。今後も変わらず、地元の食事と合うバランスの良い酒を造っていきたいと、抱負を語ってくださいました。
・櫻田酒造/櫻田博克さん
創業100年、珠洲市に位置する「初桜」がメイン銘柄の櫻田酒造。創業当時にあった酒銘「大慶」を平成元年に復活させ、現在は純米酒が「大慶」となっています。櫻田博克さんは20年以上前から蔵の経営と酒造りの両方に関わってきた、蔵元杜氏の先駆け。蔵の経営もしながら酒造りもするという、前例がない中では苦労も多かったと思います。若い杜氏として注目されていましたが、今ではすっかりベテランの雰囲気です。
乾杯は、早くも新酒で。
さぁ、イベントの開始です。乾杯のお酒は、出来たてほやほやの新酒。酒米に成長が早い品種を使用して2ヶ月で造ったという数馬酒造の「竹葉 しぼりたて生原酒」。蔵元の数馬嘉一郎さんにお子さんが誕生したばかりということもあり、乾杯のお酒に選ばれました。発泡していて若々しい味わいに仕上がっており、乾杯に相応しいお酒でした。
乾杯の後は、蔵元が各テーブルを周り、お酌をしながら参加者に声をかけ、会話をしながら質問にも答えていました 。参加者と蔵元がすぐに打ち解け、なごやかな雰囲気で会が進みます。
食事にも能登の魅力満載!
メニューはとても充実していて、それぞれのお酒と、能登の食材との相性を確かめながら食事を進めることができました。
先付けは、能登鶏のレバーを使ったパテと車麩バゲット。
椀物の能登牡蠣みぞれ汁。
4種の小鉢。
向付けはお刺身。がんど、真鯛、平目。がんどとは、関東で言うわらさ。ぶりの小さいサイズのことです。
加賀蓮を蒸したもの。
そして、メインの香箱蟹。
各蔵がそれぞれ持参した”カニに合うお酒”は、キレのよいタイプや旨みを引き出すタイプなど、それぞれの蔵の特色を持ちあわせていました。
参加者からは、中島酒造店の「かに」が良かったという声があがっていました。「単体で飲むと少しクセがあって飲みにくいんですけど、香箱蟹の身、たまご、ミソと一緒に食べると、とっても美味しかった」と絶賛する人も!
甲羅に注ぐとまた美味しさが引き立つようです。
大根のステーキに能登の鴨を乗せ、フォアグラのソースをかけた贅沢な1品。
最後のシメは、能登の新米を使ったはらこ飯という内容でした。
参加者の「楽しかった!」「美味しかった!」の声
参加者の顔ぶれは実に様々で、能登出身の方からフェイスブックでたまたま知ったという方まで。中には、「金沢へ旅行したときに日本酒が美味しくて。それなら能登のお酒も美味しいのでは?と申し込んでみました」という方も。銘柄は知らなかったけど、やっぱり美味しかったです、と大変満足されたようです。
能登のお酒は東京で扱っている酒販店が少なく、飲める機会があまり多くないため、「こういう会があると嬉しい」と毎回楽しみにしている常連もいるほどでした。
思う存分食べて飲んで奥能登を堪能できた奥能登酒蔵学校、参加者の期待を大きく上回る充実のイベントでした!
蔵元たちも「飲んだ感想やお客様の声が直接聞けるのはうれしい」と、イベントに手応えを感じたようです。
「奥能登酒造学校」の次の企画は、2月に開催される現地・奥能登でのフィールドワーク。酒蔵でお手伝い体験があったり、冬の奥能登の食とお酒をその場で楽しむことが出来たりと、日本酒ファン垂涎のプログラムとなっています。興味のある方は、是非ともご参加ください!
◎ 奥能登酒蔵学校2月フィールドワーク詳細
「冬に行こう!能登の酒蔵!お手伝い体験&荒海の幸」
- 日程:2017年2月18日(土)~19日(日)
- 費用:1泊2日(1泊4食/体験料込)2.2万円
- 定員:20名 ※入金先着順
- 詳細:こちらのfacebookイベントページよりご確認ください
(取材・文/まゆみ)