スーパーやコンビニでもおなじみの「ふなぐち菊水一番しぼり」や「菊水の辛口」、洗練されたデザインの「無冠帝」など、数々のヒット商品を世の中に送り出し、さらには海外進出にも力を入れる菊水酒造。

日本有数の酒処・新潟県にあるこの蔵は、いったいどんな酒蔵なのか?ヒット商品を生み出す秘訣はなんなのか?その理由を確かめるために、その製造現場を訪ねました。

 二王子岳(にのうじだけ)に囲われた雪国の蔵元

新潟駅からローカル線で1時間、新潟県新発田市(しばたし)に到着。駅から車で10分ほどの位置に菊水酒造はあります。周囲を雪山に囲まれた、「これぞ雪国」といった美しい風景が印象的。

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そんな環境からか、さぞ"昔懐かしい酒蔵”なんだろうなぁと思っていたのですが・・・
そこにあったのは、酒蔵というよりは工場のような敷地。さすが世界を股にかける酒蔵!スケールが大きいです。

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この場所で、どんな酒造りが行われているのか・・・
さっそく敷地内をご案内いただきました。

最先端テクノロジーの「製品棟」がすごい!

最初にやってきたのは、菊水酒造の製品棟。2015年5月にリニューアルしたばかりの設備です。ここで、さまざまな製品が瓶詰め・パッケージングされて出荷エリアへと送られます。言わば蔵にとっての動脈です。

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ここが酒蔵の施設?と思ってしまうほどモダンなエントランス。

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2015年のリニューアルにあたって大切したのは"コミュニケーション”。
製品棟のリーダーである生産部マネージャー の青柳博友さんは、今の製品棟についてこんな話をしてくれました。

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「かつての製品棟はパーテーションで仕切られた構造だったので、スタッフ同士のコミュニケーションがほとんどありませんでした。その結果どうしても”機械 対 人”の仕事になってしまい、なかなか生産効率も上がりませんでした。今は人と人が隣り合わせで作業できるので、会話が増え、協力意識が高まりました。おかげで現場は活発になり、パートのスタッフもいきいきと働いてくれています。結果、生産効率を大幅に改善することができました。いくら機械化が進んでも、やはり"その中で働く人”が一番大事なんです」

生産効率を上げるために、スタッフ同士のコミュニケーションを重視した空間設計をしたのですね、驚きです。

工場シズル溢れる作業スペースは圧巻!

製品棟に入るには「エアシャワー」と呼ばれる防塵設備をくぐります。現代的!

kikusui001_06写っているのは取材に同行した弊社代表の生駒

さぁ準備完了!さっそく中に入っていきます。
製品棟の内部はおよそ3,519㎡(1F:1,287㎡、2F:2,232㎡)の広さですが、 入り口からすべてが見渡せる開放的な空間。

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その中の至るところで近代的な装置が動いています。「菊水の辛口」「ふなぐち」などの人気銘柄がつぎつぎと流れて行くさまは圧巻の一言!

工場見学的な魅力がたっぷり!何時間でも見ていられそう。

人気商品の「ふなぐち」もこの通り、あっという間に積み上がっていきます。

単純な作業効率だけでなく、内外の“コミュニケーション”に着眼して一新された菊水酒造の製品棟。従業員同士が会話ができるようになったことでお互いの意思疎通がスムーズになり、結果的に生産効率の向上に還元されています。

また菊水酒造では、契約社員含めた菊水社員の男女比率が約5:5で、製品棟で働くのは主に女性の方です。彼女たちが安全に作業できることもリニューアル時に大切にしたことのひとつだそう。さらには、契約社員にも産休制度を導入しているんですよ!働く人のこともとても大切にしていることがよく分かりますね。

「モノ」をきちんと生産するために、まずは「人」から考える。菊水酒造の哲学が垣間みえました。

すごいのは製品棟だけじゃない!日本酒カルチャーの独自研究も推進

続いてご案内いただいたのは、これまた「なぜこんな施設が酒蔵に!?」という施設。製品棟裏手の雪道をの先にあるモダンな建築物、「日本酒文化研究所」です。

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菊水酒造の法人設立50周年(創業125年)の2006年に、日本酒文化の「研究・開発」「情報発信」「技術の伝承」を目的に設立された施設。自然に囲まれた建物は実にユニークな設計になっていて、地上部分は1Fのみ。あとはすべて地下にあるんです。自然豊かな景観を損ねないための工夫なのだとか。さらに、建築資材も徹底的に環境に配慮されたものだけを使っているそう。徹底的にこだわり抜いた施設です。

日本酒関連の研究資材がズラリ!

そんな日本酒文化研究所、いったいどんな場所なのでしょうか?研究開発部・統括マネージャーの宮尾俊輔さんが案内してくれました。

1Fは試飲スペースになっており、菊水酒造の各銘柄をいただけました。この日は外国からのお客様も来ていたんですよ!

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試飲スペースにうしろ髪を惹かれつつ、地下のフロアへ。

日本酒文化研究所はさまざまな機能をもった施設ですが、中でも大きな役割を担っているのは、その名の通り“日本酒文化の研究・開発”です。その推進のために、膨大な量の専門書が揃う「図書コーナー」と、酒文化に関する「資料展示コーナー」があります。

図書コーナーには、酒・食に関する文献が大量に保管されています。ここまでたくさんの文献資料をどうして“ひとつの酒蔵”が保有しているのか、宮尾さんにたずねてみました。

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「日文研の目的は”貴重な文献の収集”ではないんです。あくまでその先にある提案が目的。新旧さまざまな角度から日本酒文化を研究することで、今の社会にとって面白く・魅力的な日本酒体験を発見し、何よりもお客様に楽しんでいただく"コト”を提案したいと考えています。」

なるほど、単なる文化財収集ではなく、あくまで研究・発信のための場所なのですね。

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さらに、奥にある資料展示コーナーがまたすごい。例えば江戸時代に使われていた酒器など、文化的に貴重なものが揃っていますが、これらもただのコレクションではありません。多くの日本酒文化資財を揃えることで、そこからお客様に提案できる”新しい発見”を探求しています。

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日本酒文化研究所の名にふさわしい、菊水酒造の本気が伺えます。

日本酒文化研究所はまだまだ見どころたっぷり!

日本酒文化研究所は、資料や文化財の収集・展示だけをしているわけではありません。“お酒そのもの”に関する設備もあるんですよ。

ひとつは瓶貯蔵庫。一般には販売されていない、貴重な熟成酒が眠る倉庫です。

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ここでは各年代に造られた日本酒を、少量ずつ毎年保管しています。いつの日か来たる商品化のために、日夜研究を重ねているんですね。

さらに、日本酒文化研究所には「節五郎蔵」と名付けられた”酒蔵”まで併設されているんですよ!

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合理化された製造設備をもつ菊水酒造ですが、酒造りの"技”の継承にも力を注いでいて、それがここ節五郎蔵で培われています。出品酒など少量・手仕込みが向いている銘柄については、今でもこの蔵で醸造しているんですよ!なお、酒造りの様子は次回詳しくお伝えしますのでお楽しみに!

研究から文化継承、人材育成、さらには酒造りまで、日本酒文化のすべてを詰め込んだ日本酒文化研究所。現在一般公開はされていませんが、図書・展示品を持参してお酒のイベントを開催しているとのこと!ぜひとも参加してみたいものです。

従業員の制服は世界的デザイナーKEITA MARUYAMAがデザイン!

ここまで、酒蔵とは思えないオドロキにあふれた「製品棟」と「日本酒文化研究所」をご紹介してきましたが、まだまだあります菊水酒造のスゴいところ!

2015年に従業員の制服を一新したのですが、それをデザインしたのは世界的ファッションデザイナーのKEITA MARUYAMAなんです!

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法人設立60周年を迎えて製造設備を刷新した節目に、社員同士も気持ちを新たに一丸となっていこうという想いのもと、かねてよりラベルやオリジナルピンバッチの制作などで親交のあったKEITA MARUYAMA氏に制服のデザインを依頼。「伝統の中で時代感を楽しむ」をコンセプトに、着用する社員の想いを取り入れながら出来上がったそうです。

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酒蔵・製品棟スタッフの制服。センス溢れるデザインはもちろん、機能性にもすぐれています。

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つづいて内勤スタッフ(女性)の制服。清潔感がありつつ、垢抜けていてモダンな雰囲気です!

どうです、素敵な制服でしょう?従業員からも好評だそうですよ!
SAKETIMES編集部でもさまざまな酒蔵を訪れていますが、ここまで「働く人」のことを考えている酒蔵は見たことがありません。

菊水酒造のこと、「ちょっと普通の酒蔵じゃないな」と思っていただけたでしょうか?
次回はそんな”菊水酒蔵の酒造り”をたっぷりご紹介します、お楽しみに!

(取材・文/SAKETIMES編集部)

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