今回のテーマは「超音波日本酒」。
超音波を当てるとお酒が美味しくなるという話がありますが、それは本当なんでしょうか? もし本当なら、どのように美味しくなるのでしょうか?
先日、サイエンスジャーナリストの川口友万さん主催「科学実験酒場」にて、超音波を当てた日本酒をいただいてきました。その味わいとメカニズムをレポートします。
お通しの「大豆肉」と「人造いくら」
実験内容:カップ酒に超音波を当てる
用意した日本酒は、宝酒造の「松竹梅 天」。値段は200mlで150円程度。いわゆるカップ酒です。
このカップ酒を2つに分け、1つはそのまま、もう1つは超音波を当ててから飲みます。
お酒に超音波を当てる装置は、何と眼鏡洗浄機。カップ酒を瓶ごと入れて、計20分程度超音波を当て続けます。日本酒の味はどのように変化するのでしょうか?
実験結果:味が驚くほど変わった!
左が超音波処理済みのカップ酒、右が何も処理を施していないカップ酒です。見た目には全く変化がありません。
香りにもほぼ違いはなし。ブラインドで嗅ぎ分けるのは難しそうです。
さて、肝心の味の方はどうでしょうか? 結果から言うと、味わいはかなり異なります。香りと違い、ブラインドでも十分に判断可能なレベルの差です。超音波を当てていない方からティスティングしたのですが、当てたものの方がアルコールの分離感がなく、味全体が熟れてまとまっていました。感覚的には、味が格段にまろやかになります。イベントでも、ほとんどの方が驚かれていたほど、その違いは一目瞭然でした。
主催の川口友万さん曰く、このまろやかな味は、酒の中の水分とアルコールがより緊密に混ざり合うことによってできるのだそうです。これは熟成のメカニズムと一緒ですが、超音波で高速で振動させることで、その変化を短時間に起こすことができます。アルコール添加のお酒だったために、今回はその差が顕著に出たというわけです(なお、ワインの新酒「ボジョレーヌーボー」でも近い結果が得られました)。
超音波が熟成酒の常識を覆す!?
日本酒に限らず、ボジョレーヌーボーなどの若いお酒ほど、超音波は効果があるそうです。新酒ならではのフレッシュな味わいを楽しみたい場合には向きませんが、短時間で熟成を進められる技術は、私たちの飲むお酒の世界に一石を投じてくれるのは間違いないでしょう。
実際に用いていることを公言している酒造の数は多くないですが、佐渡・北雪酒造の「超熟酒」など、超音波で酒質を変化させる技術は実用化されています。 寝かせる年数が長いほど価格が高いのがお酒の常識でしたが、熟成酒の深みある味わいを気軽に楽しめる日も近いのかもしれません。
(永木三月)
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