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年末年始に読みたい!お酒が飲みたくなる3冊 ~ エッセイ編 ~

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本格的に寒くなり、お燗の美味しい季節になりましたね。アツアツのおでん、湯豆腐……外が寒いからこそ冬は、家や酒場で酒と肴を合わせる愉しみが増えるというもの。

文学作品の中にも、そんな愉しみがよく感じられるものがあります。前回筆者は、「読書の秋に読みたい!お酒が飲みたくなる3冊 ~ 女流作家編 ~」で、文学作品をご紹介しました。今回は、エッセイ作品から3冊、オススメしたいと思います。

フィクションとはまた違う、作家の素顔やお酒への愛が詰まったものを集めました。お気に入りの一杯をご用意して、お酒を飲みながら読み進めてくださいね。

全国の酒と肴が登場!吉田健一『酒肴酒』

はじめにご紹介するのは、吉田健一の『酒肴酒』です。筆者の吉田健一氏は、当時外交官だった父・吉田茂元首相とともに、ロンドン、パリ、天津などを渡りあるき、10代の頃から多くの文化に触れて育っています。『酒肴酒』では、彼が出会った、日本および世界各国のご馳走と、それに対する筆者の美学が強く描写されています。

たとえば、表題と同じ「酒、肴、酒」という章では、酒と肴の組み合わせについて、日本の各地方の特産品を例に挙げています。

―琵琶湖の鮒鮨、福井の生雲丹、金沢の蕪鮨、広島の広島菜、岩国のうるかと、思い出し始めると幾らでも頭に浮んで来る。それ故に逆に、別に酒の肴と考えられている訳ではなくてうまいものならば酒の肴になるので前に神戸であの辺の銘酒と一緒に出された明石鯛の刺身の味が忘れられない。しかしそんなことをいえば、要するに、御馳走は何でも酒の肴になるのであって……―

と、日本全国の肴とその地の銘酒の組み合わせの美味さを語っています。この後もまだ全国の肴が挙げられるのですが、最後はこんな印象的な言葉で結ばれています。

―勿論、日本酒の話で、日本酒というのが何にでも合うようなのはその作り方にそれだけの工夫がしてあるのに違いない。―

まさに、と言いたくなる締めくくりです。幼い頃から海外の味に親しんでいたからこそ、日本の彩り豊かな酒と肴の美味しさを、強く感じることができるのでしょう。『酒肴酒』は、「日本酒って、いいなあ」と改めて思える1冊です。

酒好きなら共感間違いなし!池波正太郎『食卓の情景』

次にご紹介するのは、池波正太郎の『食卓の情景』という作品です。時代小説・歴史小説作家として名高い池波正太郎氏は、『鬼平犯科帳』シリーズ『剣客商売』シリーズなど、数多くの名作を輩出しています。

そんな池波正太郎氏は、作家であると同時に美食家としても知られており、作品に登場する酒肴への鮮やかな表現は、日本酒好きのみならず、全てのお酒好きの喉を鳴らしてやみません。

「一日とて酒をのまぬ日はない。」と語られているこのエッセイ。文章は簡潔で読みやすく、東京をはじめ、日本全国・四季折々の味わったものについて、実に美しく、そして親しみ深く描かれています。たとえば年越しの過ごし方については、このように書かれてます。

―年越し蕎麦を買って帰宅し、また酒をのんで、炬燵で、うたた寝をやる。これが、なんともいえずによい。一年中、はたらきつづけて、年越しの、この夜だけは何も彼も忘れて、とろとろねむるのがよい。(中略)買ってきた蕎麦を、酒を振ってほぐし、食べる。それから、また、ねむる。―

権威ある作家ながら、思わず共感せずにはいられないこの描写。筆者の人柄のあたたかさが満ちたエッセイです。1年中、働きつづけるモチベーションについても、

―小説を書いていると、酒が何よりたのしみでもあるし、自分の健康は酒によって、維持されているようにおもえる。―

と語っています。お酒好きが頷いて読んでしまう、ぬくもり溢れる作品です。

いろいろな作家の「酒」への思いが読める 吉行淳之介『酒中日記』

最後にご紹介するのは、『酒中日記』という作品。もともとは雑誌『小説現代』の連載コーナーだった『酒中日記』は、作家・吉行淳之介が編集し、開高健、遠藤周作、五木寛之、星新一、筒井康隆、山田詠美など、たくさんの作家の「酒」にまつわる話を、日記形式でまとめたものとなっています。

この作品のいいところは、作家ごとに「酒」への思いがそれぞれ込められていること。上戸も下戸も、酒肴や銘柄にこだわる作家から安い酒でもいいから飲みたいという作家まで、非常に多彩な「酒」への視点を読むことができます。

普段自分が愛読している作家のページから読むもよし、通して読んだら、作中に出てくる酒肴をつくるもよし、共感できた作家の本へ手を伸ばすもよし。お酒を飲むことについても、読書についても楽しみを広げてくれる1冊です。

共感できる1冊を、ぜひ晩酌のおともに

今回ご紹介した3冊は、いずれも作家の人柄を知り、お酒への愛を知る事のできる作品です。ぜひ年末年始のお供として、お酒を片手に読んでみてくださいね。

参考文献

『酒肴酒』吉田健一 /2006年/光文社文庫
『食卓の情景』池波正太郎/1980年/新潮文庫
『酒中日記』吉行淳之介 /2005年/中公文庫

※いずれも文庫版を引用

(文/梅山紗季)

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梅山紗季

大学で文学を専攻しています。イベントやライブのレポートを書いていたため、日本酒×文学をはじめ、映画、音楽、落語、美術など文化的な要素と日本酒を見る記事を発信したいと思ってます。次の一杯をさらに美味しくする、読む方に寄り添う記事を目指しています。よろしくお願いします!