歴史的な建物が多く残る福島県会津若松市。市内にはいくつもの酒蔵があります。今回は、レトロな町並みの七日町で「会津中将」を醸す、鶴乃江酒造を訪れました。
創業200年超!7代続く会津若松の老舗蔵
七日町大通りに面した鶴乃江酒造の建物は、大正末期に建てられた木造建築。入口には、これまでの華々しい受賞歴が一目でわかる看板がいくつも並んでいました。
蔵を案内してくれたのは、7代目の当主・林平八郎さん。会津藩御用達の頭取を務めた永宝屋一族から、寛政6年(1794年)に林分家として創業した鶴乃江酒造では、酒蔵の当主が代々「平八郎」を襲名するのがならわしです。会津の気候風土に合わせた昔ながらの製法を守り続けて、200年を超える歴史があります。
蔵の中は、大正時代の建物だけでなく、昭和になって建て増しをした部分まで、趣のある雰囲気です。見学の途中、作業中の従業員たちが、礼儀正しくあいさつをしてくれたのが印象的でした。
会津の風土で醸す酒、娘と母で醸す酒
造っているのは、主要銘柄「会津中将」のほか、長女のゆりさんが母といっしょに醸した「ゆり」や、一度は製造中止という憂き目をみながらも、ファンの強い要望で復活した「永寶屋(えいほうや)」。どれも、昔ながらの製法でていねいに造られた、食中酒にぴったりな一品です。
「若い人にも飲んでもらいたいので、軽快で甘味があって、香りの良い酒を造っていきたい」と語るのは、杜氏の坂井義正さん。
会津若松市から技能功労者として表彰されたこともある坂井さんは、手造りの製法を守りつつ、その技術を若い世代へ引き継ぐべく、酒造りに取り組んでいます。数々の賞を受賞していることや、調和のとれた酒質であることを考えると、それなりに大きな酒蔵なのではないかと想像していたため、そのアットホームな雰囲気に驚かされました。
見学を終えてから、店頭でさまざまなラインアップを試飲。日本酒のほかにも、甘酒や蔵オリジナルの酒器、親戚が撮ったという写真で構成された本など、おみやげも充実していました。
鶴乃江酒造の酒は、会津の風土と蔵人の思いが一体となって生まれたものだと実感することができました。
(取材・文/子星)