魚を3枚おろしなどにした後に残る「あら(頭、中骨、尾などの部分)」は、骨付きでよい出汁がでる魚好きにとってはたまらない部位。下ごしらえをていねいに行えば、手間をかけた分だけおいしくなること請け合いです。
今回は「鯛のあら」を使って、日本料理の技法を使った本格的なおつまみを作ります。
日本料理の技法「霜降り」でワンランク上の味わいに
「鯛のあら」は、魚屋やスーパーの鮮魚売り場などで売られているものを使います。
【材料】2人分
- 鯛のあら:1匹分
- 煮汁:酒100mLと水200mLを合わせておく
- たれ:醤油大さじ2、みりん大さじ2、砂糖大さじ1を溶いておく
- 生姜:ひとかけ(薄切り)
【作り方】
鯛のあらに残ったうろこを、包丁やうろこ取りで取り除きます。うろこが残っていると口当たりが台無しになるので、ていねいに、しっかりと。
鯛のあらをボウルに移し、お湯をかけます。
これは日本料理の技法で「霜降り」と呼ばれるもの。主に魚の臭みの原因となる脂や血合い、ぬめりなどを落とすために行います。沸騰したてでは皮がはげたりするので、少し冷ましたお湯を使います。
身の表面がうっすら白くなれば完了です。水で冷まし、身についたうろこや血合いは手で取り除きましょう。
浅めの鍋、またはフライパンに材料を重ならないように並べ、生姜を添えて煮汁を注ぎます。
煮汁の量は食材の半分の高さまで浸る程度。落とし蓋をすることで沸騰した煮汁が材料にからみ火が通ります。もし煮汁が足りなければ、追加してください。
中火にかけ、沸騰したら、浮いてきたアクを取り除きます。
沸騰が続く程度に火加減を少し弱め、落し蓋をして煮込みます。落し蓋がなければ、アルミホイルで隙間がないように覆ってください。
7~8分ほど煮込んだら、たれを加えて、さらに煮詰めます。
途中、たれをあらに回しかけながら煮込みます。これがおいしく仕上げるコツです。
煮汁が煮詰まり、少しとろっとしてきたら完成です。盛り付けたら、白髪ネギや針生姜、木の芽などをお好みでのせてください。
甘辛味のたれが「まんさくの花」の旨味を引き立てる
鯛の目の周りや頬などは、病みつきの味。「そこが魚の一番おいしいところだ」と、あら炊きを好む人はよく言います。
まさに同感ですが、その味わいを引き立てているのは、魚から溶け出した旨味が凝縮した「たれ」にあるとも思います。ですから、鯛のあら炊きに合う日本酒を選ぶなら、たれとの相性が決め手になるでしょう。
秋田県・日の丸醸造が、精米歩合と酵母を同じにしながら、酒米の違いを飲み比べて楽しむ「まんさくの花巡米シリーズ」の1本。これは秋田オリジナルの酒米「秋田酒こまち」で醸したものです。
グラスに鼻を近づけると、りんごを思わせる果実香。さわやかな甘さが漂います。
ですが、口に含むと、香りは思いのほかおだやか。刹那さらりと感じる甘味を覆うように、酒の旨味がすっと広がりました。
あら炊きとともに味わえば、たれの余韻と相まって酒の旨味が冴えます。続けて、あら炊きをつまんでみれば、今度はたれの旨味がより冴えて感じる。主役になったり、控えに回ったりと、変幻自在に自分の役どころを演じつつ、酒と肴の関係をふくよかにしてくれる、何とも器用な酒のようです。
ぬる燗も試してみました。
すると、酒はふっくらと旨味を増していき、あら炊きのおいしさを引き立てます。鯛の肉質ある部分やゼラチン質の部分など各々の旨味をより深く、あら炊きの醍醐味を伝えてくれました。
(文:KOTA/編集:SAKETIMES)
※ 本記事にて紹介している料理はアルコールを含んでいるため、20歳未満の方や妊娠中の方、車を運転する方などはお控えください。