フランスで開催された日本酒コンテスト「Kura Master 2018」の入賞酒を味わえるプレミアム試飲会が、7月下旬に東京の「日本の酒情報館」で行われました。
「Kura Master」は、"フランス人によるフランス人のためのフランスの地で行うコンテスト"というコンセプトのもと、ワインと同じように、料理との組み合わせという観点で日本酒を審査するのが特徴。2017年にスタートし、今年が2回目の開催です。
審査員はフランスを代表する五ツ星ホテルのトップソムリエや、ミシュランで星を獲得しているレストランの関係者、ホテル・料理学校の関係者、ワインジャーナリストなど、現地のプロフェッショナルを中心に構成されています。
審査のポイントは、フランス料理との相性
試飲の前に、本コンテストの運営委員会で代表を務める宮川圭一郎さんから、5月にパリで行われた審査会についての報告がありました。今年の舞台は、なんと「パリ水族館」。クラゲが舞う幻想的な雰囲気のなかで、審査が行われたそうです。
今年の出品酒には、どのような傾向があったのでしょうか。
「昨年、審査員の方々から、日本酒の審査が初めてで難しかったという意見をいただきました。古酒やスパークリング日本酒など、いろいろなものが出品されて頭が混乱してしまったようです。そこで、今年は部門を3つに分けました。
今年は『フランス料理と合わせてどのように感じるか』という点に審査員の意識が向けられていたと思います。酒質については、トラディショナルなお酒よりも、純米酒だけど吟醸酒のような、吟醸酒だけど純米酒のような、バランスの良いものが高く評価されていました。味も香りも全体的に穏やかだったと思います」(宮川さん)
上位入賞酒が勢ぞろいの試飲会
そしていよいよ、試飲会がスタート。今年の入賞酒から、上位12点をじっくりと味わうことができました。
当日提供された銘柄はこちらです。
純米大吟醸酒&純米吟醸酒部門
- 「羽根屋 純米吟醸 富の香」(富美菊酒造株式会社/富山県)
- 「勝山 純米吟醸 献」(仙台伊澤家勝山酒造株式会社/宮城県)
- 「青雲 純米大吟醸」(合資会社後藤酒造場/三重県)
- 「白鷺の城 純米大吟醸 戦国のアルカディア -黒田官兵衛-」 (田中酒造場/兵庫県)
- 「雑賀 純米大吟醸 山田錦」(株式会社九重雜賀/和歌山県)
純米酒部門
- 「七本鎗 純米 渡船」(冨田酒造有限会社/滋賀県)
- 「ちえびじん 純米酒」(有限会社中野酒造/大分県)
- 「仁勇 純米酒」(鍋店株式会社/千葉県)
- 「杉錦 山廃純米 天保十三年」(杉井酒造/静岡県)
- 「富久長 白麹純米酒 海風土」(株式会社今田酒造本店/広島県)
にごり酒部門
- 「美少年 にごり酒」(株式会社美少年/熊本県)
- 「八鹿 にごり酒」(八鹿酒造株式会社/大分県)
フランス人によるコンテストだからか、用意されたおつまみは、明るいオレンジ色と濃厚な旨味が特徴のミモレットと、クセが少なく旨味の凝縮されたコンテという2種類のチーズでした。
日本酒を飲み比べながら、配られたシートに味や香りの特徴をメモしている人がちらほら。参加者の方々に、今回の試飲会で気になったお酒について聞いてみました。
The Sakevangelistsとして、日本酒を盛り上げていくために活動しているJD Greyさんと田中真樹さん。現在、日本の酒蔵で酒造りの修行をしているGreyさんは「羽根屋」、田中さんは「青雲」が好きとのことでした。
イベントのために滋賀県からやってきたという村山達郎さん。日本酒コンシェルジュとして活動する村山さんは「白鷲の城」が印象に残ったとのこと。「口に含んだときに『おっ!』と思いました。あまり味わったことのない、変わった味のお酒ですね」
お酒の印象をていねいにメモしていた、sakeambassadorの大濱彩花さんがおすすめするのは「八鹿 にごり酒」。「食前酒としても食後酒としても、太鼓判を押して日本酒女子に振る舞いたい一品。フレンチのデザートと合わせていただきたいですね」と話していました。
覚えておきたいキーワード「うにたまごくっさいからよ」
試飲会の最後に、日本酒に食材や料理を合わせるときの考え方について、宮川さんがポイントを伝授してくれました。
キーワードは「う・に・たまご・く・さい・から・よ」。ワインにとっては不得意ですが、日本酒は上手く寄り添ってくれる食材や味わいの頭文字を組み合わせたものだそう。
- 「う」:旨味。出汁を使った料理など。
- 「に」:苦味。アスパラガスやキクイモなど、苦味のある野菜は日本酒によく合います。
- 「たまご」:卵。鶏卵や魚卵をワインと合わせると、食材のクセを強めてしまうのだそう。
- 「く」:燻製。落ちた脂による煙でいぶされる炭焼きや、旨味が凝縮した干物は日本酒の得意ジャンル。
- 「さ(い)」:酸味。ワインには強い酸味があるため、酸味同士を組み合わせるのは意外と難しいのだとか。
- 「から」:辛味。刺激の強いわさびやしょうが、山椒、クミンなどのスパイスも日本酒は受け止めてくれるのです。
- 「よ」:ヨード香。貝類や海藻類の香りは、ワインとの相性があまり良くありません。
以上7つのポイントが重なれば重なるほど日本酒との相性が良くなるそうで、宮川さんはこのキーワードをフランス人のソムリエたちに伝えているのだそう。「これらを押さえておけば、一流のソムリエとも話ができますよ」とのことでした。
食の中心地・フランスが大いに注目している日本酒。フランス人が選んだ日本酒とはどのような味わいなのか、「Kura Master」の受賞酒を見つけた際は、ぜひ試してみてください。
(文:TK/編集:SAKETIMES)