日本酒のラベルに「〇〇受賞」「△△入賞」という記載があるのを見たことはありませんか。その表記のもとになる日本酒の品評会やコンテストは、日本国内はもちろん、近年、世界各国で開催されています。

今回は、日本酒の主要な品評会・コンテストの特徴を紹介します。

100年以上の歴史をもつ「全国新酒鑑評会」

数ある品評会・コンテストのなかで、もっとも長い歴史をもっているのが「全国新酒鑑評会」。第1回の開催は、なんと1911年(明治44)年。100年以上の歴史をもっています。独立行政法人である酒類総合研究所と日本酒造組合中央会の共催で、毎年4〜5月に行われています。

2018年は850点の出品があり、そのうち421点が入賞。さらにそのなかで、232点が金賞を受賞しました。

"工業製品としての日本酒の醸造技術"を競う場ともいわれるため、金賞を獲得した酒蔵は製造技術が高いといえるでしょう。もっとも権威のある品評会のひとつで、吟醸酒の発展に大きな影響を与えてきました。この鑑評会で優秀な成績を収めた酒蔵から、優良な酵母が採集され、「きょうかい酵母」として全国に頒布されることもありました。

市販酒のみが対象「SAKE COMPETITION」

市販酒のみを対象にしている「SAKE COMPETITION」は、国内最多の出品数を誇っています。主催しているのは、SAKE COMPETITION実行委員会。元・サッカー日本代表の中田英寿氏が、実行委員長を務めています。毎年5〜6月に行われます。

「純米酒部門」「純米吟醸部門」「純米大吟醸部門」「吟醸部門」「Super Premium部門」「ラベルデザイン部門」「(発泡清酒)スパークリング部門」の7部門に加えて、2018年からは「海外出品酒部門」が新設されました。

2018年の出品数は1772点。それぞれの部門で、1~10位までの順位が付けられる形式になっています。

「SAKE COMPETITION 2017」授賞式の様子

香りと外観の魅力を競う「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」

日本酒の魅力である「香り」と「見る楽しさ」をもっとも感じさせてくれるのはワイングラスであるという理念のもと、2011年から毎年開催されているのが「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」。ワイングラスでおいしい日本酒アワード実行委員会が主催しています。

2018年は、全国263の酒造会社から901点が出品され、282点が入賞。そのうち、金賞が236点、最高金賞が46点という結果になりました。

ワイングラスでおいしい日本酒アワード2018審査会の様子

あたためて美味しい!「全国燗酒コンテスト」

「ぬる燗部門」「熱燗部門」など、燗酒に特化した品評会として開催されているのが「全国燗酒コンテスト」。スローフードジャパン・酒文化研究所が主催する当コンテストは、2009年から行われています。入賞酒のお披露目会も開催されており、入賞酒を燗酒と冷酒で飲み比べすることができるようです。

2017年の出品は779点で、うち190点が金賞、38点が最高金賞に選ばれました。

純米酒に特化した「純米酒大賞」

「純米」「特別純米」「純米吟醸」「純米大吟醸」の4部門からなる、純米酒規格の日本酒に特化したアワードが「純米酒大賞」。2009年から毎年11〜12月に、純米酒大賞制定委員会が主催しています。運営は、株式会社フルネットが行っています。

2017年の出品数は204点。そのうち、45点が金賞、4点が最高金賞に選ばれました。さらに、最高栄誉として、1点のみがグランプリの称号を与えられます。

世界的な影響力をもつ「IWC(インターナショナル·ワイン·チャレンジ)」

世界でもっとも大きな影響力をもつといわれるワインのコンテスト、それが「インターナショナル·ワイン·チャレンジ(IWC)」です。毎年4月に、イギリス・ロンドンで開催されます。第1回はワインインターナショナルマガジンの企画として、1984年に開催されました。

2007年に「SAKE部門」が新設されて以来、受賞酒は、外国人の口にも合う日本酒として国内外で注目され、IWCは日本酒の海外進出における重要なイベントとして、その価値を高めてきました。

2018年のSAKE部門には、国内の品評会よりも数の多い、1639点の出品がありました。そのうち97点がゴールドメダルに輝き、そのなかで特に優れている酒がトロフィー受賞酒として選出されます。さらにそのトロフィー受賞酒から1点のみに、最高の名誉として「チャンピオン・サケ」が、優れたコストパフォーマンスを誇る1点のみに「グレートバリューアワード」が贈られます。

2018年のIWCでトロフィーを受賞した日本酒

世界4都市で出品酒を試飲できる「全米日本酒歓評会」

アメリカに住む人々が良質な日本酒を理解する一助として、2001年から開催されているのが「全米日本酒歓評会」です。独立行政法人である酒類総合研究所による指導のもと、全米日本酒歓評会実行委員会事務局により開催されています。すべての出品酒は、ニューヨーク・ホノルル・ロンドン・東京の4都市で開催される、一般公開のきき酒イベント「ジョイ・オブ・サケ」で展示され、4000人を超える消費者が実際にテイスティングを行います。

2018年の出品数はおよそ400点。優秀な評価を得た出品酒に金賞・銀賞が授与され、そのなかでさらに高得点を獲得した出品酒には、グランプリ・準グランプリが与えられます。

欧州最古の日本酒品評会「ロンドン酒チャレンジ」

ヨーロッパ最古の日本酒専門品評会が「ロンドン酒チャレンジ」です。酒ソムリエ協会によって、2012年から毎年5〜6月に開催されています。

日本酒の品質や味わいのみならず、ラベル・ボトル・箱のデザインやフードペアリングなど、総合的に評価されるのが特徴です。

フランス発の日本酒コンクール「Kura Master」

フランス人による、フランス人のための、フランスの地で行う日本酒コンテストが「Kura Master」です。Kura Master Associationによって、2017年6月に第1回が開催されました。

フランス全土から集められたソムリエ、レストラン関係者、ホテル・料理学校関係者などが、ワインの専門家として日本酒を審査するのが特徴です。

2017年の出品数は550点。そのうち123点が金賞、58点がプラチナ賞を受賞しました。さらにその頂点として、10点にプレジデント賞、1点に審査員特別賞が贈られます。

フランス人ソムリエが選ぶ、フランス初の日本酒コンクール「Kura Master」ロゴ。

ヨーロッパ最大級のアルコール飲料見本市のコンペティション「5STAR SAKE」

Vinitaly(ヴィニタリー)という、毎年4月にイタリア ヴェローナで開催される世界最大級のワイン展示会の一環として行われるコンペティション「5STAR Wines」の日本酒部門が「5STAR SAKE」です。Vinitalyでは2017年より日本酒の展示が始まり、2018年から「5STAR SAKE」が初開催されました。コンペティションで5つ星の認定を受けると、国際的なガイドブックへの掲載も行われます。

世界有数のワインコンクール「ブリュッセル国際コンクール(CMB)」

国際的なワイン品評会「ブリュッセル国際コンクール(CMB)」でも、2018年から日本酒部門が新設されることが決まりました。主催・運営しているのは、ベルギーのメディア企業・ビノプレスで、1994年から毎年行われています。日本酒部門の品評会は10月に審査結果が発表されます。

中国初の日本酒コンテスト「アジア国際美酒コンテスト」

2018年に中国で初めて開催されるコンテストが「アジア国際美酒コンテスト in China〜SAKE-Chine 日本酒品評会〜」です。一般の中国人が日本酒の評価を行うそうで、日本政府と中国政府の食品関連団体が主催し、8〜9月に結果が発表されます。

近年、海外の日本酒品評会・コンテストが次々に新設され、日本酒が世界的に注目されている様子がわかります。これらの品評会・コンテストは、酒販店や飲食店にとって重要になるばかりではなく、酒蔵にとっては日々の酒造りや海外輸出へのモチベーションアップにも大きな影響を与えています。

日本酒に携わる人だけでなく、一般消費者の間でも話題になりつつある日本酒の品評会・コンテスト。お酒を選ぶ際の指針として、注目してみるのはいかがでしょうか。

(文/SAKETIMES編集部)

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