月間利用者数約1億2,000万人を誇るレストラン検索・予約サイト「食べログ」。その登録店のなかで、年間を通してユーザーから極めて高い評価を獲得し続けたお店を表彰する「食べログアワード 2019」が、1月下旬に都内で開催されました。
食べログに登録された70万店舗のうち、一般ユーザーによるランク付けで4.0点以上を獲得した618店がノミネート。「Gold(ゴールド)」「Silver(シルバー)」「Bronze(ブロンズ)」をはじめとする各賞が選出されます。
日本酒を扱うメディアとして「SAKETIMES」も、日本の食を応援していこうと、"今、一番おいしいお店"を決めるこの祭典に協賛をしています。
料理の味わいを引き立てたり、お互いの相乗効果を生んだり......美味しい食事と日本酒は切っても切れない関係。日本酒をメニューに加えるお店が増えてきているなか、一流の料理人や有名店が日本酒をどのように提供しているのか、気になるところです。
日本を代表する料理人たちが集結
2007年から年間グルメランキング「食べログ ベストレストラン」が発表され、2017年からは「食べログアワード」へとリニューアル。年を追うごとに開催規模が拡大し、今年は約300店舗から約500名の関係者が集まりました。
アワードにノミネートされたレストランの料理人だけでなく、食に関わる著名人が一堂に会するとあって取材陣が多く、注目度の高さが伺えました。
関係者の方々は顔見知り同士も多いようで、会場のあちらこちらで挨拶や会話が交わされていましたが、プレゼンターを務める吉高由里子さんによる開会宣言で式典が始まると、会場は緊張感のある引き締まった空気に。
司会を務めるのは、グルメで有名な渡部建さん(アンジャッシュ)と松嶋初音さん。また、グルメイベントのプロデュースなど、多方面で活躍する寺門ジモンさん(ダチョウ倶楽部)らがサポーターとして登壇しました。
「食べログ」を運営する株式会社カカクコムの取締役・村上敦浩さんは、アワードの目的について、「ランク付けが目的ではなく、日本に素晴らしいお店があることを世界中の人々に知ってほしい。ここに集った飲食店の方々を称え合うことで、今後の活力にしてほしい」と語りました。
レストランを多角的に評価する特別賞の数々
「食べログアワード」では「Gold」「Silver」「Bronze」の3賞以外に、いくつかの特別賞が設けられています。
たとえば、料理人がもっとも尊敬する料理人を選ぶ「Chefs’ Choice(シェフズ チョイス)」。ノミネートされた料理人の投票によって、トップオブトップの料理人が決定します。
受賞されたのは、大阪の日本料理店「本湖月」の穴見秀生さん。今年で70歳という穴見さんは、いまも現役でお店に立っています。
「選んでもらって光栄です。元気なうちは、もうしばらく包丁を握りたいと思っています」と話していました。
また、今年から新設された賞が「Best Sommelier(ベスト ソムリエ)」。優れた知識とサービス技術をもったソムリエのいるお店がユーザーの投票によって選出されます。受賞したのは、東京・乃木坂のフレンチレストラン「Crony(クローニー)」でした。
他にも、地方の名レストランに贈られる「Best Regional Restaurants(ベスト リージョナル レストラン)」や、接客が優れているお店に贈られる「Best Hospitality(ベスト ホスピタリティ)」など、それぞれの受賞者が温かい拍手に包まれていました。
受賞発表はテーブルのライトで
そしていよいよ、「Gold」「Silver」「Bronze」の発表になると、会場の緊張感も最高潮に。
順番に紹介されるのかと思いきや、テーブル各席にある店名の表示されたライトの点灯で、受賞が発表されました。荘厳な音楽とともに会場が暗くなり、一斉にライトが点灯。美しい光の演出に目を奪われます。
今年の受賞はGoldが30店舗、Silverが121店舗、Bronzeが467店舗でした。
Goldの受賞店は、東京を中心とする大都市圏に集中していますが、北海道や秋田、石川などの地方にあるレストランも受賞していました。
日本酒を取り入れたフレンチ─「レフェルヴェソンス」
受賞店のなかには、日本酒の提供に力を入れているお店がいくつもありました。
ワインを合わせるのが主流のフレンチで、日本酒を積極的に取り入れているのが、GoldとBest Hospitalityをダブル受賞した「レフェルヴェソンス」。西麻布の高級住宅街にあるフレンチレストランです。
「日本の食材をフランス料理の技法でお客様に届けるのが、私たちの料理スタイル」と、ディレクターの青島壮介さんは語ります。
「5年くらい前、うちのシェフに『なぜワインだけなのか。日本酒を使ってはいけないという壁を作っていないか』と言われ、日本酒は和食の世界という固定概念に囚われていたことに気付きました。実際にさまざまな日本酒を扱ってみると、日本酒が私たちの料理にとても合うことがわかったんです」
日本酒と料理のペアリングで意識しているポイントを聞いてみると、「まずは『レフェルヴェソンス』でなければ体験できない組み合わせであること」と、青島さん。
「もうひとつは、どこかホッとする味わい。おにぎりとお味噌汁を食べて懐かしいと思うような、そんな組み合わせですね」
最後に「日本酒にはまだまだ楽しい未来が待っていると思いますよ」と話す青島さんの表情から、世界に広がっていく日本酒への大きな期待が感じられました。
料理を引き立たせる日本酒を─「日本橋蛎殻町 すぎた」
予約困難なお店として有名な寿司店「日本橋蛎殻町 すぎた」も、日本酒に強いこだわりをもっています。
来客の9割以上が、日本酒を注文されるのだとか。全国各地から取り揃えた約30種類の日本酒は、濃厚なものから軽快なものまでさまざまな酒質をそろえています。
料理人である杉田孝明さんに、話をうかがいました。
「いわゆる昔の寿司屋には、どちらかと言うと食事の邪魔をしない淡麗な日本酒が置いてあると思うんです。ただ、うちではあん肝など、味の濃い肴も出しているので、そういう料理に合わせられる日本酒も選ぶようにしています」
酸味の強い料理には酸味の強いお酒を、甘味のある料理には甘味のあるお酒を......料理に合わせてさまざまな味わいのお酒を用意しているのだとか。
「基本的には、小さい酒蔵ががんばって造っているお酒を応援したい」と、熱い思いを語っていました。
日本酒の可能性はまだまだ広がる
授賞式会場では、全国の日本酒が提供されていました。会場に集まった蔵は「南部美人」「仙禽」「羽根屋」「磯自慢」「紀土」「播州一献」「龍勢」「三井の寿」の8蔵。各蔵元たちも集まり、お酒をふるまいながら、料理人やシェフたちとの交流をはかっていました。
「食べログアワード 2019」の受賞店は、特別な日に訪れたい魅力的なお店ばかり。その各店で料理人たちが至高のペアリングで日本酒を提供することで、日本酒の魅力はさらに印象づけられるのではないでしょうか。日本酒の可能性はまだまだ無限大です。
受賞された各店のみなさま、本当におめでとうございました。
(取材・文/橋村望)
◎「Gold」受賞レストラン
- 「アカ(aca 1°)」スペイン料理/京都
- 「飯田」日本料理/京都
- 「エクアトゥール」フレンチ/東京
- 「緒方」日本料理/京都
- 「カセント(Ca sento)」スペイン料理/兵庫
- 「カンテサンス(Quintessence)」フレンチ/東京
- 「銀座 しのはら」日本料理/東京
- 「茶禅華」中華料理/東京
- 「旬席 鈴江」日本料理/京都
- 「SUGALABO」イノベーティブ・フュージョン/東京
- 「鮨 一幸」寿司/北海道
- 「すし 喜邑(㐂邑)」寿司/東京
- 「鮨 さいとう」寿司/東京
- 「鮨 さかい」寿司/福岡
- 「すし処 めくみ」寿司/石川
- 「CHIUnE(チウネ)」イノベーティブ・フュージョン/東京
- 「天寿し 京町店」寿司/福岡
- 「鳥しき」焼鳥・鳥料理/東京
- 「にい留」天ぷら/愛知
- 「にくの匠 三芳」日本料理/京都
- 「日本橋蛎殻町 すぎた」寿司/東京
- 「日本料理 たかむら」日本料理/秋田
- 「東麻布 天本」寿司/東京
- 「ペレグリーノ(PELLEGRINO)」イタリアン/東京
- 「本湖月」日本料理/大阪
- 「ボニュ(Bon.nu)」フレンチ/東京
- 「松川」日本料理/東京
- 「三谷」寿司/東京
- 「柳家」日本料理/岐阜
- 「レフェルヴェソンス(L'Effervescence)」フレンチ/東京