日本酒を知る

日本酒を楽しむ

日本酒を考える

特集

燗酒に甘酒を入れる!? 六本木「ひとしずく」で味わう生酛造りのお酒と自然派和食

> > > 燗酒に甘酒を入れる!? 六本木「ひとしずく」で味わう生酛造りのお酒と自然派和食
このエントリーをはてなブックマークに追加

六本木の路地裏にある日本酒専門店「ひとしずく」。生酛造りの日本酒と有機栽培の野菜でつくるオーガニックな和食料理にこだわるお店です。

にぎやかな繁華街から少し離れたビルの間、迷路のように入り組んだところにある当店は、まさに隠れ家と呼ぶにふさわしい佇まい。知らないと見つけられない秘密基地のようで、好奇心をくすぐられます。

冷蔵庫を使わない!?そろえたのは生酛造りの日本酒のみ

お店はカウンターのみで6席。店主の山本理さんが、ひとりで切り盛りしています。

まず驚くのが、日本酒専門店にもかかわらず、お酒を保管するための冷蔵庫がないこと。お店で扱う生酛造りの日本酒、約30種類はカウンター内の棚に常温のまま置かれています。

生酛造りは、江戸時代から続く伝統的な酛造りの手法。空気中にある自然の乳酸菌を取り込みながら、手間暇かけてじっくりと造ります。

時間やコスト、そして高い技術が必要になるため、現代の酛造りは市販の醸造用乳酸を添加する「速醸酛(そくじょうもと)」を使うのが主流。しかし、その酒質に魅力を感じ、生酛造りにこだわる酒蔵も少なくありません。

「うちでは生酛の特徴である旨み成分の多いもの、アミノ酸がしっかりしているものを扱っています。そういうお酒は、天然出汁を使った和風料理と合わせたときに相乗効果が生まれるんですよ」と、山本さん。

お店にある生酛造りの日本酒は、火入れされたものが中心。たとえ生酒でも、すべてお燗か常温で提供されます。温度を上げることで、お酒の旨みがより表れてくるのだそう。

"追い水"をすることで、自然派料理と寄り添う味わいに

「ひとしずく」で日本酒を飲むなら、おすすめはもちろんお燗。さっそく、「自然酒 燗誂(かんあつらえ)」(仁井田本家/福島)を注文してみました。

農薬や化学肥料をいっさい使わずに栽培した酒米と、汲み出し四段製法という、昔から蔵に伝わる独自の手法で仕込み、蔵で1年間熟成させた一品。

山本さんは燗をつけるとき、平盃1杯分の水をちろりに加えます。お店では"追い水"と呼んでおり、基本的にすべてのお酒を"追い水"して提供。"追い水"をすることでアルコール度数が下がり、刺激が抑えられ、生酛本来の旨みが引き出されるのだそうです。

好きなおちょこを選んで、40度前後につけたぬる燗をひとくち。口当たりがやわらかく、穏やかな甘みを感じる含み香が、ふわりと広がります。"追い水"で味が薄まるのかと思いきや、味がふくらみつつ香りも立ち、旨みもよく感じられました。胃のまわりがあたたまって、身体がリラックスしてきますね。

甘酒を加えて、自由に燗酒を楽しむ

さらに驚いたのは、燗をつけた日本酒に甘酒を添加する飲み方。甘酒は米麹から手づくりしたものだそう。米由来の自然な甘みが感じられ、そのままいただいても美味しいものでした。

日本酒造りに欠かせない米麹を、甘酒として日本酒に加えるというのは、ありそうでなかった発想かもしれません。

キリッとした味わいの「大七 純米生酛」(大七酒造/福島)にほんの少し甘酒を加えると、米の旨みや甘みによって、全体的にボリュームアップ。口当たりがよりまろやかになって飲みやすくなり、身体に染み込んでいくように感じました。自然でほどよい甘さの加減も絶妙。

甘めの味が好きな人はもちろん、疲れがたまって甘いものが欲しいと感じたときにも、ぴったりな飲み方でしょう。甘酒の量によっては、デザートのようにも楽しめますね。

こんな飲み方ができるのも、生酛造りの懐の深さなんだと教わりました。味のしっかりした料理に対して、お酒のボリュームが少し足りないと感じるときにもおすすめしているそう。

日本酒をただ飲むだけではなく、料理に合わせたり自分好みに調整したり、自由に楽しめるのがうれしいですね。

自然派素材でつくる、こだわりの料理

自然派素材にこだわったメニューは、出汁が効いた和食料理が中心。ひじき、おから、切り干し大根、きんぴらごぼうなどの小鉢(1点500円、3点盛り1300円など)は、ホッと一息つけるような家庭料理です。

一番人気は、出汁で炊いた手づくりのおから。さらりとした食感にやさしい甘みと旨みがあり、食べ飽きません。なかには、おかわりするお客さんもいるとか。

埼玉県所沢市の農家から直送された有機栽培野菜は、味が濃くて滋養たっぷり。化学調味料はなるべく使わず、出汁も天然のカツオや昆布を使ったもの。マヨネーズやポン酢も手作りするこだわりようです。

メイン料理として「和牛のスジ 八丁味噌煮込み」や「豚ロース肉のゴルゴンゾーラソーズ」など、和食をベースにしつつも、クセのあるチーズやフォンドボーを使った洋風の創作料理もいただけました。

「旭興(きょくこう) 生酛純米磨き八割八分」(渡邉酒造/栃木)や「日置桜 生酛玉栄」(山根酒造場/鳥取)もバランスが良く、チーズやトマトソースのかかった料理にもぴたりと寄り添いました。

食べること・飲むことで健康をつくる

お店に長年通う常連のお客さんは「ここで飲んでから、他のお店に行っても『生酛』ありますか?って聞くようになりましたよ」と、すっかり生酛造りのファン。お酒も料理も山本さんにすべておまかせで、長年の信頼関係が感じられました。

「食べること・飲むことが、健康とダイレクトにつながっていると思います。有機栽培の野菜や天然発酵の生酛、手間はかかってもなるべく化学調味料を使わないことを心がけてきました。美味しくて、かつ健康にも良いものを安心して食べてもらいたいですね」と山本さん。身体に良いものを食べたり飲んだりすることで、心も整うような気がしました。

追い水や甘酒を添加する飲み方は、自宅でリラックスしながら飲むのにもおすすめです。身体がポカポカとあたたまり、胃にもやさしいので寝る前の一杯にぴったり。さっそくハマってしまいました!

(文/橋村望)

◎店舗情報

  • 店舗名:「ひとしずく
  • 住所:東京都港区六本木3-3-25
  • アクセス:東京メトロ南北線 六本木一丁目駅から徒歩5分
  • 営業時間:[月〜土]18:00 ~ 23:00 (L.O.  22:00)
  • 定休日:日、祝日
  • 席数:カウンターのみ6席(全席禁煙)
  • 電話番号:03-6277-6868

この記事を読んだ人はこちらの記事も読んでいます

このエントリーをはてなブックマークに追加

ライター募集中!

橋村 望

秋田出身のフリーライター/ウェブデザイナー/日本酒愛飲家。秋田の酒と熟成古酒ファン。美味しい酒肴に出会えると幸せです。SSI認定 酒匠/自宅で日本酒を育てる会会員。