新宿区歌舞伎町「シタディーン セントラル新宿東京」の地下に店を構える「樽一 新宿本店」
ここでは、宮城県の株式会社佐浦が醸す日本酒「浦霞」の限定品や、日本人が古くから貴重なタンパク源として食していた鯨を使った多彩な料理を味わうことができます。
新宿の喧騒から離れた店内は落ち着いた雰囲気で、カウンターやテーブル席のほか、足を伸ばしてくつろげる座敷の個室が用意されているため、接待や宴会の利用にもおすすめです。
創業50年の老舗ゆえに常連客が多く、2代目社長・佐藤慎太郎さんとの気さくなやりとりを目にすることも珍しくありません。
「先代が宮城県出身だったので、東京に店を構えると決めたときに、地元の浦霞と鯨料理は欠かませんでした」と、佐藤さん。店内を見渡すと、限定品を始めとするバリエーション豊かな浦霞と、多彩な鯨料理のメニューが目に入ります。
「宮城の店なので、刺身や鯨料理、生牡蠣、ホヤ、蟹味噌など、海の幸を楽しんでいただけます」という言葉のとおり、豊富な日本酒と料理を堪能することができる店です。
ここでしか飲めない限定の「浦霞」
大手メーカーの日本酒が主流だった約50年前、地酒ブームの草分けとも言われる浦霞を東京に持ち込んだのが、1974年創業の樽一でした。
新聞で浦霞の記事を見た先代が、塩竈(しおがま)市の港町にある醸造元・株式会社佐浦まで足を運び、当時の社長に直談判して東京の店で提供することになりました。酒蔵が海沿いにあるため、スッキリとした淡麗な味わいで、魚介類との相性がとても良いのが特徴です。
創業当初から、限定のお酒を卸してもらっているそうで、ここでしか飲めない金ラベルの原酒や季節限定品を味わうことができます。金ラベルの原酒はほどよい濃醇さで、旨味が舌に染み込んでいくような落ち着いた味わいでした。
宮城名産の鯨料理に舌鼓
「先代の夢は捕鯨船の船長になることだったんです。その夢は叶いませんでしたが、鯨への特別な思いがあって、料理を出すことにしたのでしょう」と、佐藤さん。宮城県石巻市鮎川地区には捕鯨基地があったため、宮城県民にとって鯨は身近なのだそう。
基本的に歯と骨以外のすべてを食べることができるため、それぞれの部位に合わせた調理法で「くじら刺身三種盛」「鯨カツ」「鯨ハリハリ鍋」など、さまざまな形で提供されます。佐藤さんにおすすめをうかがうと、「最初は、くじら刺身三種盛を食べてほしい」とのことでした。
「赤身」は脂肪分が少なく、柔らかくて旨味があります。鯨は哺乳類なので、まさに肉のような食感です。こちらはしょうが醤油に漬けて食べるのがおすすめ。舌の部分である「さえずり」は舌にまとわりつくような感じで、甘味がたまりません。「本皮」は皮下脂肪がある部位で歯ごたえがあって、噛んでいくと脂がジュワッと口の中に広がります。こちらは塩で味わうのがおすすめです。
少人数でも大人数でも楽しめる
大人数の宴会でおすすめなのが、予約必須の「おまかせコース」。当日入ったばかりの新鮮な魚や野菜を見てメニューを決めるので、鯨と鮮魚の刺身以外は何が出てくるのか、当日までのお楽しみです。
少人数で来店する場合は「鯨と鮮魚のミックス盛」がイチオシ。事前に予約することで、鯨肉と鮮魚が2切れずつ追加になるのがポイントです。〆の逸品には、鯨のあご回りの肉を使った「鯨寿司」を味わってみてください。大トロのような口溶けのある旨さです。
当日のおすすめ料理や合わせる日本酒など、スタッフに聞いてみると、とてもていねいに教えてくれます。浦霞の限定酒も日によって変わり、燗酒用に地元限定の本醸造酒も用意しているのだそう。
「とにかく、鯨と合わせて浦霞を美味しく飲んでいただくための店ですから、存分に楽しんでいただきたいですね」という佐藤さんの言葉どおり、鯨の刺身と金ラベルの原酒をいっしょにいただくのは、まさに至福のひとときでした。
新宿区歌舞伎町で味わう宮城県の郷土料理。遠く離れた地で受け継がれてきた伝統を味わいに、足を運んでみてはいかがでしょうか。
(取材・文/乃木章)
◎店舗情報
- 「樽一 新宿本店」
- 住所:東京都新宿区歌舞伎町1-2-9 シタディーン セントラル新宿東京 地下1階
- 営業時間:[月~土] 17:00~22:30 (L.O. 21:30)、[日・祝] 16:00~22:00 (L.O. 21:00)
- 定休日:年末年始 (12月30日~1月4日)
- 席数:140席 (個室あり)
- 電話番号:03-3208-9772