全国的にも珍しい赤レンガの仕込み蔵
「北の錦」の銘柄で北海道ではおなじみの小林酒造。札幌市から東へ45㎞、空知地方の小さな町・栗山町に蔵を構えています。明治11年に新潟から札幌へ入植し、初代・小林米三郎氏が蔵を構え、同33年に湧水を求め現在の地に移転しました。
当蔵は、「小さな町の酒蔵」の枠におさまらず、仕込み蔵だけで6番蔵まであります。蔵は記念館や蕎麦屋、レストラン、ショップなどがあり、栗山町有数の観光スポットとなっています。
たしかに、国内でも珍しい赤レンガや札幌軟石による石造りの仕込み蔵や旧事務所、木造家屋を見るだけでも、この蔵を訪れる価値があり、実際9棟が国の登録有形文化財に登録されています。これだけ大きな蔵だったのは、明治~昭和30年代初期まで栄えた空知の石炭産業が背景にあるそうです。
全量特定名称酒、全量北海道産米の蔵
最盛期は1万石を越えた同蔵も現在は1,200石ほど。蔵に入ると巨大な仕込みや貯蔵タンクがズラリと並び、その様は壮観そのもの。しかし今は、その多くを使っておらず、仕込みタンク8本のみを中心に醸されています。「昔は生き残るために大量生産し、今は生き残るために作る量を減らしました」とは小林精志専務(47歳)。普通酒や添加物を使った三増酒中心から、平成20年(2008年)に全量を特定名称酒へ切り替え、2010年からは全量北海道産米で酒造りを行う蔵に転換しました。現在、北海道産の酒造好適米である「吟風」「彗星」「北しずく」、そして飯米の「きらら397」で全量を醸しています。
燗酒でも美味しい食中純米大吟醸酒
「冬花火」は北海道の特約店のみの限定流通の銘柄ですが、2009年に商品化され、同蔵を代表する商品のひとつです。真冬の花火は空気がキレイなので本当は一番美しいといいますが、実際、北海道の冬花火は本当に綺麗です。口の中で冬花火のように豊かに広がる酒を造りたい、との思いを込めて醸されました。北海道産の酒造好適米「吟風」を50%まで磨き、9号系の酵母を分離した20年以上使用している「ニシキ100年酵母」を使用し醸されています。
蔵元専務の小林さんや南修司杜氏によると、目指したのは「お燗にしても美味しい、食事と合わせて呑める大吟醸酒」ということで、純米大吟醸酒にしては香りは非常におだやかで、ほのかな果実香。口に含むと、北の錦独特のメロンというか熟れた果実のような含み香を感じます。非常になめらかな米の旨みと甘味、綺麗な酸のバランスが絶妙で、後口は穏やかに切れていき心地よい喉越しを感じます。
お燗にすると、上品さを保ちながら米の旨みがやわらかく広がり、酸がほどけて甘味が増し、余韻が長くなる印象です。熟成するとより丸みが出てくるはずです。香りが気にならないので、蔵の狙い通り、食中大吟醸として上々。北海道の新鮮な野菜や魚介系を使った料理ならどんなものでも合うでしょう。