鳳凰に由来して命名された「秀鳳」
秀鳳酒造場は蔵王連峰のふもと、山形市の北東部にある山家町で、明治23年(1890年)に武田正五郎氏が創業した酒蔵です。住宅街の中にあり、老舗蔵が多い山形県では、比較的新しい蔵といえるでしょう。主要銘柄は「庄五郎」と「秀鳳(しゅうほう)」です。「秀鳳」という名前は中国の瑞鳥・鳳凰に由来しています。豊かな自然と蔵の技術によって、個性ある酒造りを目指すべく命名されました。
全国屈指の美味しい水道水を使用
山形県では吟醸酒を醸す蔵が多く、秀鳳酒造場も平均精米歩合がなんと約50%。生産石高およそ800石のうち、7〜8割が特定名称酒というこだわりの酒造りを行っています。また、さまざまな品種の酒米を積極的に使用している蔵でもあり、山田錦や雄町などの王道から、山田穂、愛山、亀の尾、美山錦、八反......そして、山形県の酒米である出羽の里、出羽きらり、出羽燦々、玉苗、つや姫など......毎年10数種類を使用しているそうです。
また、仕込み水には地元の水道水を使用しています。同市の水道水は蔵王連峰系の伏流水を引いているため、全国屈指の軟水で、酒造りに適しているのだそうです。蔵王ダムが標高600mという全国有数の高さにあるため、冷涼な空気の澄んだ気候で水が汚染されにくく、まろやかな美味しい水になるのだとか。
圧倒的なコストパフォーマンスを誇る純米大吟醸酒
今回紹介する純米大吟醸酒には、山形県の酒造好適米の代表ともいえる「出羽燦々(でわさんさん)」を、"燦々"にかけて、33%まで精米しています。また、山形酵母を使用しているのだそう。さらに、一升瓶で3,333円(税抜)という、圧倒的なコストパフォーマンスを誇ります。精米歩合33%でこの価格を提示できるのは、同じ山形県の酒蔵・亀の井酒造の銘酒「くどき上手」などと並んで唯一無二といえるでしょう。これは、蔵元の「『秀鳳』を全国の日本酒ファンに知ってもらおう」という思いによる、採算度外視で精魂を込めた企画なのだそう。
もちろん、スペックのインパクトだけではなく、味わいも極上です。出羽燦々らしい華やかなマスカット系の香りと、口に含んだときのシルキーでなめらかな口当たりで、凝縮された旨味・甘味が一気に広がります。やわらかさと締まりのバランスが絶妙で、決してふくらみ過ぎることはなく、口の中で艶やかさと爽やかさが両立しているのが特徴です。
後口も、余韻を残しながらスッと消えていきます。日本酒ファンはもちろん、初心者の入門酒としてもおすすめしやすい1本でしょう。単体でも充分に楽しむことができますが、しっかりと冷やして飲めば、白身魚の刺身やカルパッチョなどと合いそうなお酒です。