SAKETIMES編集部が、いま気になるお酒をテイスティングする連載企画「SAKETIMES編集部 注目の一本」。

今回は、山形県・出羽桜酒造の日本酒缶「出羽桜 吟醸缶」と「出羽桜 特別純米缶」をご紹介します。

吟醸酒のパイオニア「出羽桜」の日本酒缶

1892年(明治25年)に創業し、山形県天童市に蔵を構える出羽桜酒造。1980年に発売した「出羽桜 桜花吟醸酒」は、当時はまだ知られていなかった「吟醸酒」という言葉を世に広め、吟醸酒ブームを巻き起こすきっかけとなった商品で、「吟醸酒と言えば『出羽桜』」と言われるほど、そのイメージを確固たるものにしました。

また、世界最大規模のワイン品評会「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」SAKE部門の最高賞である「チャンピオン・サケ」を2回受賞した経歴を持つなど、国内のみならず、海外からも高い評価を受けています。

「出羽桜 吟醸缶」と「出羽桜 特別純米缶」

(左から)「出羽桜 特別純米缶」と「出羽桜 吟醸缶」

そんな出羽桜酒造は、より手軽に日本酒を楽しめる商品として、2種類の日本酒缶(一合缶)をラインナップしています。それが、今回ご紹介する「出羽桜 吟醸缶(吟醸酒)」と「出羽桜 特別純米缶(特別純米酒)」です。

どちらもスーパーやコンビニなどで購入できるうえに、一合缶という手軽さも相まって、ちょっと日本酒を飲みたいときや旅行のお供としてなど、さまざまなシーンに寄り添ってくれる商品です。過去に「IWC」SAKE部門の最高賞を2回も受賞している酒蔵の日本酒缶とは、いったいどのような味わいなのでしょうか。

主張しすぎることのない、穏やかな酒質

それでは、実際にテイスティングをしてみましょう。

色合い

「吟醸缶」も「特別純米缶」もともに無色透明で、クリアな味を想像させます。

「出羽桜 吟醸缶」と「出羽桜 特別純米缶」

香り

「吟醸缶」は、フルーティーな果物をイメージさせる甘い香りが印象的ですが、全体的に穏やかで主張は強くありません。甘さの後にアルコール感が少しありますが、ネガティブな印象はなく、むしろ青々しく爽やかな印象をプラスしています。

「特別純米缶」は「吟醸缶」と対照的で、純米酒らしい米由来の香りが強く、旨味を感じます。また、「吟醸缶」ほどではありませんが、吟醸系の甘い香りも感じられます。アルコール感はほとんどありませんでした。

味わい

「出羽桜 吟醸缶」と「出羽桜 特別純米缶」

「吟醸缶」は口当たりがやわらかく、きれいで透明感のある味が第一印象です。口に含むとすぐに優しい甘みが広がります。果物ではなく白い花を思わせる、淡く穏やかな甘みです。しかし、それでいて米の旨味もはっきりと感じられるため、全体のバランスがとても優れている一本だと感じました。

「特別純米缶」も「吟醸缶」と同じように口当たりがやわらかく、「出羽桜」に共通する特徴なのかもしれません。米麹のような、ホクホクとした旨味と甘みが感じられますが、こちらも主張は控えめで、全体としては穏やかな印象でした。燗にすると、旨味や甘みがさらに強調されるかもしれません。

飲用シーンを選ばない食中酒として

「出羽桜」といえば、日本酒業界の中では「吟醸酒のパイオニア」と評されることも多く、編集部もそのイメージを持って試飲しましたが、特に「吟醸缶」については、想像よりも穏やかな吟醸香でした。

「出羽桜 吟醸缶」と「出羽桜 特別純米缶」

近年、吟醸香を強調したフルーティーな日本酒はトレンドのひとつですが、最初のひと口は感動するものの、食事の中で飲み続けるのは難しいという声もあります。その点、この「吟醸缶」は、ほかの吟醸酒と比べると香りは穏やかですが、吟醸香の高揚感を感じさせながらも食事に寄り添ってくれる、バランスの良い一本だと感じました。

同様に、「特別純米缶」も米の旨味を充分に感じますが、それでいて主張しすぎないため、日々の食中酒として洗練されています。刹那的なトレンドに流されることなく、実直に酒造りを続けてきたことが伝わってくる日本酒でした。

どちらもコンビニやスーパーなどで手に入る点を考えると、ふだんの食卓はもちろん、旅先のホテルなどでの一杯にも重宝するのではないでしょうか。見かけた際には、ぜひ「出羽桜」の実力を感じてみてください。

◎商品概要

  • 商品名:出羽桜 吟醸缶
  • 内容量:180mL
  • 精米歩合:50%
  • アルコール度数:16度
  • 希望小売価格:400円(税抜)
  • 商品名:出羽桜 特別純米缶
  • 内容量:180mL
  • 精米歩合:55%
  • アルコール度数:16度
  • 希望小売価格:370円(税抜)

(執筆・編集:SAKETIMES編集部)

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