山形県鶴岡市の竹の露酒造場は、1858年創業という歴史ある蔵。代表銘柄の「白露垂珠(はくろすいしゅ)」は、これまでに数々のコンテストで受賞し、2017年2月までANA国際線のファーストクラスでも提供されていました。そんな輝かしい経歴を持つ竹の露酒造はどのような蔵なのでしょう。
国内で唯一!水晶地層が生んだ細菌ゼロの仕込み水
大正12年(1923年)、出羽三山神社の御神酒を醸す随神門前宮本坊の酒蔵を譲り受け、敷地内に設置した1号蔵。現在は使われていませんが、そのまま残してあります。
全て速醸、純粋培養酵母を使う造りとなった今も、蔵についている出羽三山酵母が多少作用しているのではないか、ということでした。
2002年に月山の深層水の採掘に成功しました。「水晶地層」と呼ばれる茶色の地層が良い水を作るそうですが、竹の露の仕込み水がまさにそれ。
数千年がかりで出羽三山の主峰・月山から蔵内地下300mに流れ込み、磨かれたこの深層水は、細菌がゼロという実に珍しい水で、国内の酒蔵で唯一、生水のまま充填販売が許可されています。
6本のタンクに常に水が溜まるようにしてあり、仕込み水の全てをまかなっています。
口当たりが柔らかい、まろやか、そんな表現がぴったりな優しい水でした。
同じ月山の水で育った米の方が、蔵の酒造りとの相性が良いだろうと考え、出品酒用に使っていた山田錦を廃止。地元の酒米のみを使う方針に変更しました。地元産の酒米を使い始めた2003年から、「大吟醸 出羽燦々」は全国新酒鑑評会で6年連続金賞受賞しています。やはり、水と米の相性が良かったのでしょう。
酒米は自社栽培もしています。2016年に「雪女神」と名付けられた新しい酒米も、減農薬・減肥料で作っています。雪女神は背丈が低くて、いもち病に強い、比較的栽培しやすい酒米だそうです。造りにおいても、思い描いた酒質に近づけることが出来る優秀な酒米なのだとか。
その雪女神で醸した「白露垂珠 純米大吟醸」は、全国新酒鑑評会で2年連続金賞受賞しています。
香りはとても華やかで、甘くフルーティー。しかし、味わいは軽快でドライ。キレも抜群なお酒です。山田錦ではなく、地元のお米で醸したお酒での金賞獲得は、蔵の自信にも繋がったことでしょう。
年季の入った機械は修理をしながら使うこと45年以上
これらの酒米は、庄内の5蔵共同の施設で精米されています。収穫後は4台の精米機がフル稼働。風を利用して籾を飛ばすという方法によって、綺麗に仕上がるのだとか。
原料処理で使う連続式蒸米機は、なんと45年以上使い続けているものです。
年季ものなので壊れた箇所は都度修理し、連続式蒸米機の欠点である蒸気漏れを少なくしようとビニールを巻いたりして、工夫を凝らしています。種麹もこの上で振ってしまうということでした。
大吟醸の仕込みについては、2階の製麹室で作業を行います。
製麹室は部屋が3つに分かれています。床部屋、棚部屋、出麹部屋、それぞれの部屋ごとに温度を変えています。
以前の仕込み蔵を冷蔵室に改装して貯蔵に使っています。蔵内に2つ、蔵外に3つ、計5つの冷蔵貯蔵庫があり、いずれもしっかりと低温を保ちながら瓶保存されていました。
地元・庄内産の酒米で醸されたお酒
竹の露酒造場では庄内生まれの酒米のみ使用しているため、「亀の尾」「京の華」「改良信交」など他の県ではあまり扱われていない米で醸したお酒が揃っています。
畑に囲まれ自然豊かな美しい地域で醸された「白露垂珠」。今年の造りもきっと素晴らしいお酒を仕込んでくれることでしょう。楽しみです。
(文/まゆみ)