福岡の中心市街地・天神に隣接する「春吉(はるよし)」エリアは、さまざまなジャンルの飲食店が並ぶ“食と酒のまち”です。そんな美食の地で地域活性への取り組みを続ける「NPO法人 はるよし」が、オリジナルの日本酒造りをはじめました。

「福岡の酒蔵や酒米の魅力をもっと知ってもらえる、美食の街に似合う素敵な“メイドイン福岡”といえる日本酒を造りたい」という想いから始まったプロジェクトをご紹介します。

毎年違う酒蔵とコラボして生まれる「晴好 HARUYOSHI」

「あまり知られていないかもしれませんが、福岡は50以上の酒蔵が集う全国有数の酒処で、山田錦の生産も盛んです。だからこそ、さまざまな酒蔵さんと一緒に、福岡県産の酒米を活用して取り組んでいきたいと思いました。1年ごとに異なる酒蔵さんとコラボして、その年だけの味わいを発信していく。すごくワクワクしますし、繋がりも広がっていく気がして、プロジェクトの立ち上げに至りました」

NPO法人はるよし理事・吉野友紀さん

こう語るのは、NPO法人はるよしの理事で、オリジナル日本酒造りのプロジェクトリーダーを務める吉野友紀さんです。

酒造りに関して右も左も分からないまま走り出したプロジェクトでしたが、吉野さんをはじめとするプロジェクトメンバーの強い想いに共感し、メイドイン福岡の日本酒造りを快諾したのが、福岡県うきは市で酒造りを続ける株式会社いそのさわでした。

株式会社いそのさわ(福岡県うきは市)

株式会社いそのさわ(福岡県うきは市)

福岡県の南東部に位置するうきは市は、耳納連山(みのうさんち)を水源とする筑後川水系から湧き出る天然水が豊富で、「名水百選」にも選ばれている“水の郷”です。

福岡県うきは市の街並み

水道水すべてが天然水でまかなわれていて、いそのさわでも、蔵にある井戸から汲み上げた名水を仕込水として使用しています。

株式会社いそのさわ 5代目の髙木亮三郎さん

株式会社いそのさわ 5代目の髙木亮三郎さん

「日本酒を飲んでもらえる機会を増やしていきたいですし、このプロジェクトに参加して一緒に福岡を盛り上げていきたいので、ぜひやりましょう!」という、いそのさわの次期後継者である5代目・髙木亮三郎さんの言葉を受け、まずはプレ版となるオリジナル日本酒「晴好 HARUYOSHI」の開発がスタートしました。

「晴好 HARUYOSHI」酒プロジェクト 山田錦

「オリジナル日本酒に使う酒米は、福岡県西部に位置する糸島産の山田錦を使いたい」と決めていた吉野さん。

美しい海と山が広がり、観光地として全国的にも知られる糸島は、実は良質な山田錦の生産地でもあります。

「山田錦を育てていらっしゃる米農家の濱地一好さんとの出会いが大きかったです。私たちの話に耳を傾けてくださり、すぐに水田を案内してくださいました。お会いしたその日に、オリジナル日本酒用の山田錦を栽培してもらえることが決まり、逆に、私たちが驚いたくらいです(笑)」

福岡県糸島の米農家・濱地一好さん

福岡県糸島の米農家・濱地一好さん

濱地さんという強力な味方がプロジェクトに加わり、米作りを行う水田を「はるよし田園」と命名。2019年6月に田植え、10月には稲刈りをプロジェクトメンバーも一緒になって行い、愛情たっぷりの山田錦が収穫できました。

「晴好 HARUYOSHI」酒プロジェクト 稲刈りの様子

その後、どのような味わいにするのか、どのようなデザインにするのかなど、何度も話し合いを重ね、2020年初春にプレ版「晴好 HARUYOSHI 00」が完成。

いそのさわの代表銘柄「駿」をベースに、キレが良く飲み飽きしない、蔵元の個性が伝わる食中酒ができあがりました。

「晴好 HARUYOSHI 01」

「晴好 HARUYOSHI 01」

2021年2月には、「晴好 HARUYOSHI 01」が完成。原料米は「はるよし田園」で育った糸島産山田錦100%です。

プレ版から麹と酵母を変更し、さらに、醪を酒袋に入れて吊るし、自然に滴り落ちる雫を集める袋吊りという搾り方を採用して、「はるよし」の華やかさをより強く表現した一本が仕上がりました。

こだわりと愛情に満ちた「晴好 HARUYOSHI 01」は、ごくわずかな少量生産だったこともあり、すでに完売間近。現在は、シリーズ2作目に向けて次のアクションが始まっています。

日本酒が持つ、人と人を結びつける力

「多くの方々のご協力のおかげで、プロジェクトをここまで進めてこられました。ですが、2019年の立ち上げ当初に予定していた一般参加型の体験行事や飲食店でのイベントなどは、コロナ禍で全て中止になり、プロジェクト自体も一旦ストップした方がよいのではないかと考えたこともありました」

それでも、メイドイン福岡のオリジナル日本酒を飲んだ方々からうれしい感想をもらったり、髙木さんや濱地さんから「すごく楽しかった!」と声をかけていただいたりすることで、「少しずつでも続けていこう」と想いを新たにした吉野さん。

実際に、2020年に立ち上げた「晴好 HARUYOSHI 01」のプロジェクトでは、コロナ禍で先行きが見えないなか、状況が落ち着くまでプロジェクトを見送ろうという話も出たそうです。

しかし、日本酒の出荷量が激減し、日本酒業界全体が苦しい今だからこそ、「微力でも役に立てることがあるなら続けるべき」という結論に達し、メンバー一丸となって進められました。

株式会社篠崎(福岡県朝倉市)

株式会社篠崎(福岡県朝倉市)

シリーズ2作目となる「晴好 HARUYOSHI 02」は、福岡県朝倉市の株式会社篠崎が担当することが決定しています。

篠崎は、三連水車が回る穀倉地帯で銘酒を醸し続ける酒蔵で、100年以上前から愛される「国菊」、そして革新の新ブランド「比良松(ひらまつ)」が、代表銘柄として知られています。今後どのようなお酒ができあがるのか、今からとても楽しみです。

「晴好 HARUYOSHI」酒プロジェクトのメンバー

一本の日本酒を造る過程のなかで、「NPO法人 はるよし」のメンバーと街の繋がりは強くなり、そこから、また新たなイベントなど次の動きも生まれているといいます。

できることから、少しずつ、一歩ずつ。日本酒の持つ力で、人と人、人と食、人と地域を繋げるストーリーは、これからも紡がれていきます。

(取材・文:PON!/編集:SAKETIMES)

◎プロジェクト概要

◎商品概要

  • 商品名:「晴好 HARUYOSHI 01」
  • 原料米:福岡県糸島産山田錦100%
  • 内容量:720ml
  • 価格:2,200円(送料別)
  • 醸造元:いそのさわ(福岡県うきは市)
  • ※限定生産商品のため、在庫がなくなり次第、終売予定

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